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■【書評】『天使は奇跡を希う』(七月隆文)_あらすじと感想・考察

2017年6月29日

『天使は奇跡を希う』(七月隆文/文春文庫)の読書感想文です。爽やかさ100%の青春ストーリー。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。

『天使は奇跡を希う』のあらすじ

瀬戸内海にほど近い町、今治の高校に転校してきた優花は天使です。 いや、そういう比喩ではなく、本当に天使なのです。 背中からは大きな翼が生えています。 ただ、その翼を見ることができたのは、幼馴染グループの良史、成美、健吾の3人だけです。なぜ、この3人には翼を見ることができたのか? という疑問は残りますが、彼らは優花の「天国に帰りたい」という願いを叶えるために、様々な場所を訪れます。 しかし、優花が天国に帰る方法は依然としてわかりません。 時間はいたずらに過ぎていきます。そして、読者はやがて、優花の「嘘」を知ることになるのです。 ここから、物語は急展開を迎えます。

『天使は奇跡を希う』の感想と考察

会話のテンポが軽快で読みやすい

 まず、この作品を読んでいいなと思ったことは、会話のテンポが軽快なことです。 例えば、

 「天使の輪」
 星月さんが、リングの蛍光灯を頭上に掲げていた。
 ・・・。
 「舞い降りたと思った? 天使、舞い降りちゃったと思った?」
 ねえねえ? とうざい感じで言いながら、翼をバッサバッサはためかせる。
 その風に前髪を煽られながらーぼくの中で何かがぶちり、と切れる音がした。
 「でもざーんねん。 星月はただの可愛すぎる女の子だよ? 天使なんて現実には存在しなー」
 「天使だろ」
 ぼくは、とうとう。
「お前天使だろ! 羽あるじゃん! 背中に!!」
 言ってしまった。

みたいなところです。 この会話の感じなんか既視感あるなあと思ったのですが、多分それは「君の膵臓を食べたい」のそれと似ていると感じたからです。

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高校生の僕は病院で偶然一冊の文庫本を見つけます。タイトルは「共病文庫」。そこには、クラスメイトの山内桜良の余命が膵臓の病気によって、いくばくもないということが書かれていました。それをきっかけとして、仲を深めていく二人。ラストには衝撃の展開がーー。感動的大ベストセラー小説。

こういうちょっとライトな小説では、ストーリーが複雑でハラハラしたり、テーマがしっかりしていて感心したり、することは個人的にさほど重要ではないように思います。 その代わりと言ってはアレですが「会話の面白さ」は、非常に重要な要素だと思います。 本を読む抵抗力が少ないと言えばいいのでしょうか。 ぐんぐん読み進められるところに僕は魅力を感じることが多いのです。 その点、この小説は、とても優れていたので、好感が持てました。

揺れ動く良史の気持ち

人間関係についてはどうでしょうか。 最初、良史と成美が付き合っていて、次第に良史の気持ちが優花に傾いていく様子は、一見「そういう流れでいいの?」と思ったのですが、ストーリーを読み進めていくうちに、あーなるほど、それなら納得だなと腑に落ちました。 これは、作品を読んだ人はみんな同じように感じると思います。

信じて努力を続ければ奇跡は起こる

この話から得られる教訓は「信じ続けて努力を重ねれば奇跡は起こりうる」といったところでしょうか。 ぱっと見フザけてるようにしか見えない優花の秘められた思いと強い覚悟は、読んでいて非常に心打たれましたし、良史が優花が不登校になった時に、彼女を救ったエピソードも同様です。 「希う(こいねがう)」という読み方は初めて知りましたが、この物語を象徴するのに非常に的確なワードであったと思います。 僕も、良史や優花のように、奇跡を起こしてみたいと思います。 そのための努力は、今後も続けていきたいです。

『天使は奇跡を希う』はこんな人におすすめ

  • 読みやすく爽やかな物語を読みたい人
  • 「奇跡」を待ち望んでいる人
  • 意外な展開に「ハッ」とされたい人

あとがき:天使は奇跡を希う

『天使は奇跡を希う』(七月隆文/文春文庫)の読書感想文でした。良史はモテモテでしたね。 きっと彼の等身大の正義感に惹かれた結果でしょう。 最後のエピローグは、彼らの将来が明るいことを示していて、いい読後感を味わえました。未読の方は、ぜひご一読を。

♦︎七月 隆文(ななつき たかふみ)
大阪府出身
京都精華大学美術学部卒業。

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