純文学

■ [書評]『ひとり日和』(青山七恵)一人前になろうともがく思春期の葛藤と成長

『ひとり日和』(青山七恵)の読書感想文です。第136回芥川賞受賞作になります。随分前に読んだ記憶がありますが、再読してみてより作品の魅力がわかりました。綺麗事じゃない人間の感情を正確に描写しています。

※ほぼネタバレ無し

『ひとり日和』(青山七恵)のあらすじ

世界に外も中もないのよ。この世は一つしかないでしょ。二十歳の知寿が居候することになったのは、二匹の猫が住む、七十一歳・吟子さんの家。駅のホームが見える小さな平屋で共同生活を始めた知寿は、キオスクで働き、恋をし、時には吟子さんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。
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『ひとり日和』(青山七恵)の書評/感想

 「別れ」と「出会い」。

 それが、この作品のテーマです。

 知寿がお世話になる吟子さんは、これらの達人です。

 七十一歳までに多くの「別れ」と「出会い」を経験し、ある種の悟りの境地にいるかの様に見えます。

 彼女からしてみたら、知寿の恋愛などは、若気のいたりのようなもの。

 しかし、それを冷めた目線でみるのではなく、優しく見守ってくれる、言葉を授けてくれる、そういった面は吟子さんの度量の深さを感じさせます。

 
 知寿は思います、「いつまで別れを繰り返したら一人前になれるのか」。

 進学も就職もせず宙ぶらりんな状態であっても、ひとりでちゃんとやりたいという気持ちは人一倍です。

 この作品では、決して、知寿は優等生なキャラクターには描かれていません

 手癖が悪く、周りの人のどうでもいい小物をくすねて靴箱に保管する、という習慣も、知寿がまだまだ不完全な人間であるということを強調しています。

 
 筆者も、知寿と同じように漠然と「一人前になりたい」と思うのですが、残念ながら、そうできていません。

 まわりの人に支えてもらいながらなんとか生きている、ぎりぎり生きているといったところです。

 この物語の最後では、知寿が成長していく場面が描かれています。

 その描写があるおかげで、この作品はポジティブな文脈を持つことができています。

 筆者にとって、それは少しまだ眩しすぎます。

 知寿はすごいなあと思います。

 筆者自身は、マイペースに頑張るだけです。

 今はまだ「別れ」も「出会い」もしんどいです。

評価:『ひとり日和』はこんな人におすすめ!

評価

モロケン
早く一人前の大人になりたい!

仲良いカップルとかみると嫉妬してしまう⋯。
文学青年

サブカル
のほほんとした小説を読みたい気分。

あとがき:『ひとり日和』(青山七恵)

 今回は、青山七恵さんの作品である『ひとり日和』について記事を書きました。

 この本を初めて読んだ時は、主人公の性格が悪すぎて、おばあちゃん可愛そう的なことを思った気がするのですが、今、読んでみると、知寿の気持ちや意地悪な態度をとってしまう理由も、なんとなく、理解できるような気がしました。

 この小説自体はわりとほっこりできる作品だと思うので、読む人を選ばずおすすめできる作品です。

 お時間があれば是非読んでみたらいかがでしょう?

♦︎青山 七恵(あおやま ななえ)
1983年埼玉県大里郡妻沼町生まれ。
筑波大学図書館情報専門学群卒業。
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