江國香織

● 『がらくた』著:江國香織

投稿日:2017年7月13日 更新日:

あらすじ

私は彼の存在を望み、不在による空虚さをも望んだ。

p171

45歳の翻訳家・柊子と15歳の帰国子女・美海(ミミ)、そして、つかみどころのない夫・原武男。

彼は、天性の魅力で、女性を惹きつける。

柊子はそれを受け入れ、美海は彼の虜になる。

歪ながらも甘い恋愛模様を描いた傑作長編。

感想・考察

人は人を所有できるが、独占はできない。私が情事から学んだことの一つだ。そして、それでも独占したいと望むなら、望まないものも含めたすべてをーたとえばガールフレンドたちごと夫をー所有する以外にない。

p.29-30

これは、なかなか斬新な考え方ですね(苦笑)

そして、武男も、柊子が他の男性と関係を持つことを受け入れている…というよりも推奨しています。

「今度はもっと遠くに行っておいで。遠くにいけば行くほど、ほんとうのことがわかるはずなんだから」

p194

この原夫妻のスタンスに生理的な嫌悪感を感じる読者さんは多いようです。

amazonのレビューでも「原さん気持ち悪い」と言うコメントがいくつもありました。

そのため、「がらくた」という作品は、好き嫌いが分かれるようです。

僕は、どちらかと言えば、肯定的に捉えました。

なぜなら、「がらくた」は、江國香織作品に特徴的な2つの性質を含んでいたと思うからです。

 
1点目は、「近視眼的な恋愛」です。

つまり、愛する人に夢中すぎて、周りとか世間の常識が一切通用しない状況に(主に女性が)陥ることです。

この特徴は、非難を受けやすいですが、僕は良いと思います。

だって、恋愛は主観的で、他人のものさしではかれるものではないからです。

どんなに浮世離れした恋愛をおくっていようが、本人たちが幸せなら、つべこべ言われる道理はないと思います。

だからこそ、柊子と武男の関係も、愛の一つのカタチと考えてもいいのではないでしょうか。

少なくとも色眼鏡を持って見ることはやめて、その裏にある心理を見つめる必要はあると思います。

 
2点目は、「刹那的な恋愛」です。

私は夫の首に腕をまわした。頬に頬をつけ、皮膚の匂いをかぐ。あと数分で、夫はでて行ってしまう。私の知らない場所に行き、私の知らない人々と会うのだ。そのときの夫は、私の知らない人格をまとっているはずだ。だから私は強く夫を抱く。いま目の前にいる男とは、もう二度と会えないと知っているから。次に会ったとき、彼がちゃんと新しく、私を発見してくれるように祈りながら。

p239

他人を所有して独占することはできるかもしれないですが、一瞬を切り取って、ジャムのように保存することは、できません。

きっとそれも、彼女が情事から学んだことの一つなんでしょう。

刹那に宿る儚さとその美しさ…。

江國さんは、それを描くことが、とても上手です。

 
柊子と武男、その二人だけで、世界は完結されているのですが、「がらくた」では、そこに乱入者があらわれます。

それが、ミミです。

彼女は、大人たちの世界に仲間入りしたいと考える一方、その完結された世界に、閉塞感を覚えます

そのやり場のない感情の矛先は、主に、柊子に向けられています。

ミミは、柊子の母親・桐子のことも武男のことも好ましく思っていますが、柊子に対しては、一貫して、心に壁を作っているようです。

その態度があまりにも頑ななので、僕は読みながら、「もっと柊子さんに優しくしてあげて!」と思っていました(笑)

 
江國さんの描く、大人たちの世界の話だけでも僕は十分満足でしたが、ミミというスパイスが加わることによって、物語性は増したと思います。

そういった意味で、彼女はキーパーソンでした。

個人的には、傲慢な性格が、あまり好きにはなれませんでしたが(^^;

あとがき

以上、感想をつらつらと述べましたが、「がらくた」という作品は、みんなが言うほど、癖のあるものではなかったように思います。

僕は、楽しく読むことができたので、評価は●(4 point)です。

これから江國香織作品を制覇していきたいと思っています^^

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