川上未映子

★ 『すべて真夜中の恋人たち』

投稿日:2017年4月4日 更新日:

はじめに

 今回は、川上未映子さんの作品である『すべて真夜中の恋人たち』(2011 講談社)について感想を書きたいと思います。

 川上未映子さんの作品を取り上げるのはこれで3回目ですー。
・1回目
『乳と卵』 – 積ん読と感想わ
・2回目
『わたくし率 イン 歯ー、または世界』 – 積ん読と感想わ
 これら作品がとても面白かったので、他の本を是非とも読みたいと思い、この本をとりあげました。

 以前取り上げた2作品は両方とも独特な文体で書かれていたのですが、本作は平易な文体で書かれています。

 そして、内容はかなりグッとくる恋愛小説です^^

『すべて真夜中の恋人たち』

あらすじ

 入江冬子(主人公)はフリーで校正の仕事をしています。

 その仕事ぶりはとても誠実で出版社の担当である石川聖からの信頼も厚いです。

 特に変化のない孤独な毎日を送っていた冬子ですが、ある日、ひょんなことから、三束さんに出会います。

 三束さんは高校で物理を教えている58歳です。

 冬子と三束さんは、定期的に喫茶店で待ち合わせをするようになります。

 男性との経験が豊かではない冬子は、自分が三束さんに抱いている感情をうまく定義することができず、もどかしく思いつつも、充実した日々を送ります。そんな冬子に訪れる未来とは—。

感想

光について

 真夜中は、なぜこんなにきれいなんですか。

 真夜中はどうしてこんなに輝いているんですか。

 どうして真夜中には、光しかないのですか。

 この作品は「光」が冬子と三束さんを結ぶ絆のように扱われています。

 それらは、物理の本、ショパンの子守唄、二人を包んだ真夜中の光景

 光に、さわることってできるんですか

 わたしは、三束さんに、さわることはできますか

 三束さんに対する思いを、光に重ねて口にする冬子、その透き通る感性は、読者をハッとさせますね。

冬子の無垢

 多くの男性と関係を持つ友人、聖とは正反対に、冬子には恋愛と呼べる経験は、ほとんどありません。

 それゆえに、三束さんに対して抱く感情をはかりかねています。

 しかし、それが恋愛感情と呼べるものだと徐々に気づき、会うたびに、その思いは強くなっていきます。

 冬子は淡々と独りで校正の作業をこなす一方、その感受性は人一倍豊かだと僕は思います。

 だけれども、コミュニケーション能力は皆無です。

 聖と話してる時などは、ほぼ相槌しかうちません。

 ですので、三束さんに対する感情を伝えることはおろか、お酒を飲まないと、喫茶店でまともに話しをすることもできません。

 そのたどたどしさは、冬子の無垢さを読者に強調し、恋の成就を願わずにはいられなくさせます。

過去との決別

 

 わたしはいつもごまかしてきたのだった。

 目のまえのことをただ言われるままにこなしているだけのことで何かをしているつもりになって、そんなふうに、いまみたいに自分に言い訳をして、自分がこれまでの人生で何もやってこなかったことを、いつだってみないようにして、ごまかしてきたのだった。

 傷つくのがこわくて、何もしてこなかったことを。

 失敗するのがこわくて、傷つくのがこわくて、わたしは何も選んでこなかったし、何もしてこなかったのだ。

 冬子は今までの「選択してこなかった自分」と決別したいと思い、主体性をもってアクションを起こします。

 結果がどうであれ、それは、今までの自分からの脱却であり、成長であると僕は感じました。

 僕も、学生時代などは主体性を持って色々なことに飛び込んできたのですが、大人いわゆる社会人というやつやらになってから、ずっと受け身でした。

 仕事を頑張るでもなく、プライベートを充実させるでもなく、なんとなーく、生きるってこんなに虚しいもんかと思いながらただ退屈な日々を過ごしていました。

 でも、僕自身も冬子のように変わりたいのです。

 僕にはきっと変化が必要だと思います。

 過去の自分からの脱却は、勇気がいることかもしれないけれど、一歩を踏み出していきたい

 そんな勇気をこの作品からもらった気がします。

まとめ

  • この本の魅力は光。無数の光。それを表現する文章の華麗さ。
  • 冬子がこれからそうしていくように、過去の自分から脱却したい

あとがき

 今回は、川上未映子さんの作品である『すべて真夜中の恋人たち』という本に関する記事を書きました。

 この本を読んで僕は改めて川上さんの作品が凄く好きであることを認識しました。

 巧みな表現力、緻密な構成、クライマックスにおける感情の吐露

 すべてが鳥肌が立つくらい見事に描かれていると思います。

 他の作品に比べて、本作はちょっと長いので、読みやすさは、低めに評価しましたが、読後感はすごく良いことを保証します。

 読んだことがない方は、是非是非読んで見てくださいね!

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