村田沙耶香

● 『コンビニ人間』

投稿日:2017年4月27日 更新日:

はじめに

「私は正しく人間ですか?」

 今回、感想を書くのは、第155回芥川賞受賞作で50万部突破(2017/4/27現在)の話題作、村田沙耶香『コンビニ人間』(文藝春秋、2016年)です!

 タイトルからして面白そうですよね。

 そして、村田沙耶香さんの作品であることからも、これは間違いないと思い、単行本で購入しました。

 今回は、ざっくり内容を紹介できればと思います。

『コンビニ人間』(2016)

あらすじ

 コンビニアルバイト古倉恵子。36歳、未婚、彼氏歴なし。

 感情を持たない彼女は、マニュアル通りに指示されたことをこなし、まわりと齟齬がないように振る舞う。

 しかし、就職も結婚もしない彼女を、家族や友人たちは異常だと考えていた。

 そんな彼女の元に現れるのが、婚活目的でバイトに入った新人・白羽であった。

 彼は、現代社会や古倉恵子の生き方を稚拙な論理で詰るが—。

感想

 まず簡単にまとめると、

  • 普通の人間 -> 就職 or 結婚
  • 異常な人間 -> アルバイト(無職) and 未婚
  • ¥コンビニ人間/ -> 超人間

という感じです。

 この作品の主題は「社会における正常と異常、その排除の話」であると思います。

 この物語の主人公・古倉恵子(以下、恵子)は、幼いころから異常でした。

 感情が希薄だったのです。

 コンビニ店員として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思い出せない。

 郊外の住宅地で育った私は、普通の家に生まれ、普通に愛されて育った。

 けれど、私は少し奇妙がられる子供だった。

 恵子が、合理的な手段を持って、問題を解決しようとすると、周りに気味悪がられた。

 そのため、恵子は自分で主体的に動くことを放棄しました。

自ら動くのは一切やめた。

 コンビニにアルバイトとして働き始めた時、恵子はこの仕事が自分の居場所なのだと感じました。

そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。

 私は、今、自分が生まれたと思った。

 世界の正常な部品としての私が、この日、確かに誕生したのだった。

 18年間コンビニでアルバイトを続けて結婚もしない恵子を家族や友人は「問題」扱いしました。

 性経験はないものの、自分のセクシャリティを特に意識したこともない私は、性に無頓着なだけで、特に悩んだことはなかったが、皆、私が苦しんでいるということを前提に話をどんどん進めている。

 たとえ本当にそうだとしても、皆が言うようなわかりやすい形の苦悩とは限らないのに、誰もそこまで考えようとはしない。

 そのほうが自分たちにとってわかりやすいからそういうことにしたい、と言われている気がした。

 恵子は自分が異物にならないように振る舞います。

正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。

 まっとうでない人間は処理されていく。

 自分が異物にならないために、マニュアル通りに振る舞うこと、これが最も大事なことだと感じています。

 「コンビニに居続けるには『店員』になるしかないですよね。

 それは簡単なことです。

 制服を着てマニュアル通りに振る舞うこと。

 世界が縄文だというなら、縄文の中でもそうです。

 普通の人間という皮をかぶって、そのマニュアル通りに振る舞えばムラ追い出されることも、邪魔者扱いされることもない」

 恵子は気がつきました。

 人間ではない「コンビニ人間」な自分は、「異物の排除」の論理から外れると。

 いわば、それは超人間的進化を遂げているでしょう。

 「気が付いたんです。

 私は人間である以上にコンビニ店員なんです。

 人間としていびつでも、たとえ食べて行けなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。

 私の細胞全部がコンビニのために存在しているんです」

 僕がこの物語から感じたのは、異物と決めつけられるルールにちっとも「多様性」という考え方がないなということでした。

 だって、現代は「多様性」の時代です。

 「多様性」の相互作用が新たな革新を生み出し、社会の原動力になる、そんな時代なんじゃないんですか?

 
 ですので、この物語の論じている「結婚」しているだとか「働いている」だとかというモノサシで人間をはかるのは、あまりにも前時代的な考え方だなあと思いました。

 勿論、そうなってくるとこの話の「正常」と「異常」の論理が崩れてしまうので、作者にもっと深い意図があるか、僕が子供なのか、どちらかなのだと思いますが。

 後者だと、僕が困りますね…あんまり、正常な生き方をしていないので。。

 僕はもっとそのことを自覚してもいいのかもしれません。

 考えすぎるのもよくないですが、考えないのも、それと同じくらい軽薄な気がします。

 
 とにかく、最後の恵子の開き直りというか、悟りに、唯一、恵子の意志が感じられ、嬉しくなりました。

 僕も自分の意志を尊重した生き方ができれば、と前向きな気持ちになれました。

あとがき

 今回は、村上沙耶香さんの『コンビニ人間』(2016)について感想を書きました。

 芥川賞を受賞した作品はどれも本当に面白いので、これからもどんどん読んでいきたいと思います!

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