梨木香歩

■ 『西の魔女が死んだ』

投稿日:2017年6月8日 更新日:

はじめに

西の魔女が死んだ 梨木香歩 あらすじと感想(ネタバレ). 言わずと知れた名作です。 どうやら読書感想文の課題にもなっているようですね。 文体は読みやすく、メッセージ性の強いお話は、小説のお手本のような印象を受けます。

西の魔女が死んだ

読書時間の目安

2時間30分(226ページ)

あらすじ

 中学生の少女・まいは、いじめが原因で学校に通えなくなる。 そのため、しばらく学校を休んで、おばあちゃん(英国人)の家に1ヶ月ほど住むことに。 そこでは、自然豊かなミニマム・ライフが待っていた。 おばあちゃんは、自身が魔女の家系であると仄めかし、まいは「魔女修行」をはじめる。 魔女になるためには、強靭な精神力が必要。 まいは、自分で物事を決める、最後までやり遂げる、と一念発起する。 そんな、魔女見習い・まいにある日、衝撃的な事件が起こる。

ここからネタバレありです。。。

感想

 この作品は物語として面白いだけではなく、様々な教訓を読者に提供してくれる、まさに教科書のような本です。 読書感想文の課題になっていることにもうなずけます。 昔、自分が宿題の読書感想文を書くときは、本から教訓を得ようという意識がなかったですけど、大人になって振り返ると、そういう示唆に富んだ作品が、しっかり課題図書として、挙げられているんだなあと、納得しました。 あまりにも説教臭い文章は、読者を白けさせますが、本書は、そのバランスが非常に良いと思います。 日本人は無宗教で、人生における哲学を持ちにくいですが、こういった本を読むことで、少しずつ、それらが血となり肉となり、人生観を形成していくんだろうなと考えました。

 ここからは、5つのトピックに分けて作品の感想を述べたいと思います。

おばあちゃんの人間力

 この話を読んだ人なら、すぐにわかると思いますが、このおばあちゃん、人間としての魅力が半端じゃないです。 自分の世界をしっかり持っているだけではなく、世の中の理、善悪についてなど、をきちんと心得ているうえで、他者を、押し付けがましくないように、正しい道へと導いていく。 そういったことが自然とできる人です。 そんなおばあちゃんをまいは尊敬しています。まいのママがおばあちゃんに自分の考えを押し付けないでと言ったあとのやり取り(ママはおばあちゃんに反発している)。

 「確かにもうオールド・ファッションなのかもしれませんね」
 ・・・
 「どうしたの。今のはおばあちゃんらしくないわ」
 「どういうのが私らしいのですか?」
 「いつも自信に満ちているのよ」

p180より

 そして、まいはおばあちゃんのことが大好きです。

 「おばあちゃん、大好き」
 「アイ・ノウ」

 このやり取りは幾度となく二人の間でかわされるものです。 見ているだけで微笑ましくなりますね。

 僕がおばあちゃんのことをいいなと思う点は、自給自足のオーガニックな生活を送っているのに、煙草を吸うところです。 そこが、少しニヒルなところもある、おばあちゃんの人間像をよく表していると思います。 僕が、イギリスにホームステイに行った時も、ホストマザーは、煙草を40本(1日)吸うヘビースモーカーでした。 ですので、僕は頭の中で、彼女とおばあちゃんを結びつけながら、作品を読んでいました。 こうやって、小説の登場人物と実在の人物を結びつけることは、ちょくちょくやりますよね?^^ そうすると、ぐっと小説に対する心象が深まる気がします。

規則正しい生活をすること

 

 「この世には、悪魔がうようよしています。 瞑想などで意識が朦朧となった、しかも精神力の弱い人間を乗っ取ろうと、いつでも目を光らせているのですよ」

p68より

 まいは、このおばあちゃんの言葉に、ゾッとします。 そんなまいを見たおばあちゃんは言います。

 「でも、精神させ鍛えれば大丈夫」
 「どうやって鍛えるの?」
 まいは畳みかけるように熱心に訊いた。
 「そうね。まず、早寝早起き。食事をしっかりとり、よく運動し、規則正しい生活をする」

p69より

 勿論、悪魔がいるというのは比喩表現です。具体的には、七つの大罪ふうに言うと、「暴食」、「色欲」、「強欲」、「憤怒」、「怠惰」、「傲慢」、「嫉妬」、といったところでしょう。 これらの悪魔に乗っ取られないようにするために、規則正しい生活をすること、というのは、非常に理にかなっていると思います。 僕も、さきほどのおばあちゃんのセリフとは、真逆の生活をおくっている(まいと同じ)のでわかるのですが、規則正しくないと精神的に不安定になるんですよね。 僕の場合は「怠惰」という悪魔に乗っ取られそうになります。 だから、この魔女になるための精神力の鍛錬は、自分にも必要だなあと激しく実感しました。 別に、魔女になりたいとか、そういうアレではないですけど。

まい vs ゲンジさん

 「西の魔女が死んだ」のような教訓系の小説は、いい人の良さを際出させるために、わざと悪い登場人物を作ることが、往々にして、あると思います。 そんな例にもれず、この作品にもそのような人物がいます。それが、ゲンジさんです。まいとゲンジさんの出会い。

 「こんにちは」
 「おまえはどこのもんじゃ」
 「ここは、わたしの祖母のうちです」
 「遊びに来たんか」
 「しばらくここにいるんです」
 「ええ身分じゃな」

p26-27より一部省略

 なかなかひどいですよね笑 しかも、これ言われているのは、おばあちゃんの敷地の中です。 これは、まいが怒るのもしょうがない。 僕もこういうタイプの人は苦手です。

 まいとゲンジさんの対立が大きな意味を持つのは、2つの事件がきっかけでした。

ニワトリ、殺される事件

 おばあちゃんが飼っていたニワトリが金網を壊され、何者かによって無残にも殺されました。 まいは、ショックを受けますが、この時は、どんな生物がやったんだろうと思うだけでした。 その事件後、まいはおばあちゃんにゲンジさんの元へ、金網の修理代を渡すように言われます。 当然、嫌な仕事ですが、おばあちゃんに言われたならしょうがない、まいは、決心して、ゲンジさんのところへ向かいます。 すると、ゲンジさんがおばあちゃんのことを「外人」と呼んでいることを知り衝撃を受け、さらに、ゲンジさんの飼い犬の毛がニワトリの金網についていた毛と非常に似ていたことから、それが犯人だと推測して、おばあちゃんに訴えかけますが、彼女は、まいをなだめるだけでした。 まいのイライラはつのります。

まい、おばあちゃんにぶたれる事件

 まいは、早朝、ゲンジさんがおばあちゃんの敷地の境目のところをくわで切り崩しているのを見かけます。 彼女は、彼がおばあちゃんの敷地を侵略して、自分の土地を広げていると思い、憎悪を感じます。 そして、おばあちゃんに、こう言います。

 「・・・あんな汚らしいやつ、もう、もう、死んでしまったらいいのに」
 「まいっ」
 おばあちゃんは短く叫んでまいの頬を打った。

p170より

 あの温厚なおばあちゃんにまいはぶたれました。 この事件を境に、まいは、おばあちゃんの家を出て自宅に戻るまで、「おばあちゃん、大好き」というセリフが言えませんでした。 そして、おばあちゃんが亡くなるまで二度と、その言葉がまいの口から出ることはありませんでした。

 最後、おばあちゃんが亡くなってから、ゲンジさんはちょっといい奴ふうになっていて(苦笑)、まいはもう彼のことをなんとも思っていない様子が描かれています。 これは、おばあちゃんの家にいた頃のまいではできなかった、感情の抑制が、年を経て、できるようになったことを示しています。 まいは、おばあちゃんの言うとおり、魔女修行を続けていたのです。 まいの成長した姿をおばあちゃんに見せてあげたかったですね。

死んだらどうなるの?

 まいは、自分が死んだらどうなるのか、漠然とした恐怖を抱えていました。 ある夜、その質問をおばあちゃんに訊いてみると、彼女はこう言いました。

 「おばあちゃんは、人には魂ってものがあると思っています。 人は身体と魂が合わさってできています。・・・身体は生まれてから死ぬまでのお付き合いですけれど、魂のほうはもっと長い旅を続けなければなりません。・・・死ぬ、ということはずっと身体に縛られていた魂が、身体から離れて自由になることだと、おばあちゃんは思っています。・・・」

p116-117より一部省略

 半信半疑のまいに対して、おばあちゃんは、じゃあ、私が死んだら、まいに魂が離れたことを知らせてあげますよ、と言いました。 作品を読んだ人ならわかりますね。 最後のおばあちゃんのメッセージ。

ニシノマジョ カラ ヒガシノマジョ ヘ オバアチャン ノ タマシイ、タッシュツ、ダイセイコウ

p190より

 そしてまいは言うのです。「おばあちゃん、大好き」。その時、確かにまいは聞きました「アイ・ノウ」という言葉を。

 うーん、僕もそこらへんの子供に「死んだらどうなるの?」って訊かれたら、どう答えるだろう? 多分、「死んだら、虚無といって、すべて終わりなんだよ」と答えると思います。 夢も希望もありませんね笑 みなさんならどう答えるでしょうか?

自分で決める

 魔女になるために、規則正しい生活をすること、というのは前述しました。 もうひとつ、そのために、重要なことがあります。 それは「自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力」です。 まいは、おばあちゃんの家から自宅に帰って、新しい学校に通いはじめてからも、そのことを意識して実践しました。 それが、おばあちゃんとの間の糸を切らせないようにすることだと。 その甲斐あってか、まいは、新しい生活にすぐに順応し、新しい友達を作ることもできました。 やっぱり、おばあちゃんの言うことは偉大であった…。

 「自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力」のうち、僕は前者のほうは得意です。 重要なことでも、すぐに決断して行動に移せます。 これは、先天的なものなのか、後天的なものなのかはわかりませんが、役に立つときもあれば、逆効果な時もあります。 なぜ逆効果になるかというと、後者のほう「自分で決めたことをやり遂げる力」が僕には、致命的に欠けているのです。 だから、決断して行動に移したものの、すぐに飽きてやめる、みたいな、けっこう気まぐれなのです。 そうなってしまうのは、やはり、規則正しい生活ができていないからのような気がします。 ですので、この本を読んで、強く思いました。 規則正しい生活をしようと、ただ、一気にやろうとすると失敗するので、少しずつやっていきたいと思います。 まずは「午前中に起きる」ところからかな…笑

こんな方におすすめ

  • 読書感想文の課題になっている人
  • 精神が不安定な人
  • ほんわかした話を読みたい人

あとがき

 ふう、けっこう長くなってしまいました。 ここまで読んでいただきありがとうございます。 この本は、薄っぺらいですが、本当に学ぶところが多い本です。 読んだことがない人はぜひぜひ読んでみてくださいね! 映画化もされているみたいなので、そっちを観ても面白いかもしれません。僕も、今度、観てみようと思います。

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