はじめに
自意識過剰な男性をコミカルに描いた作品。
西さんの感性は日本人離れしていて、とても興味深いです。
さすが、海外で暮らしていただけのことはあるな、と思います。
『舞台』(2014)
あらすじ
太宰治『人間失格』を愛する29歳の葉太。
初めての海外、ガイドブックを丸暗記してニューヨーク旅行に臨むが、初日の盗難で無一文になる。
間抜けと哀れまれることに耐えられずあくまで平然と振る舞おうとしたことで、旅は1日4ドルの極限生活に。
命がけで「自分」を獲得してゆく青年の格闘が胸を打つ傑作長編(巻末より)
感想
とにかくこの本は「自意識」と「演技」について、青年が苦悩しながら向き合っていく話だと思うんですよ。
誰だって、無意識でも他人の目を気にして行動してしまう、つまり演技をしていると思います。
ただ、この本の主人公である葉太はその程度が極端です。自意識過剰です。演技厨です。
だからこそ「自意識」とは何か、「演技」とは何か、について、しっかり輪郭を持って議論することができます。
僕の場合はどうだろう。
僕もけっこう「自意識」はあります。
他人のリアクションが怖くて、「演技」をいつもしています。
ここでは、恥ずかしくて言えないくらい、些細なことで思い悩む性格です。
葉太の父のように死がおとずれるまで演技を続ける、ダンスを踊る、ことは、とても強い人しかできないと思います。
だから、僕はわかってくれそうな人に言います、そのことを。
それが僕の弱さです。
きっと多くの人がそうだと思います。
なので、とても平凡です。
この本では、葉太が狂うのと比例するように自分を獲得していきます。
ここでいう「自分を獲得する」とは何か。
僕の意見は、今までに自分が成していたことを客観視して、それを肯定してあげることです。
葉太は極端な例ですが、この本では、荷物を盗まれることが、自分を客観視することのきっかけになっているのではないかと思います。
何か、きっかけ、トリガー、がないと、人間は自分のことを客観視しないと思うので^^;;
いろいろ書きましたが、西加奈子さんの文章にはいつもユニークなユーモアがあります。
それがあるので、テーマが重くても、どんどん読み進めることができます。
そういう力を持った作家さんだと思います。他の作品もこれから取り上げていきたいと思います。
あとがき
今回は西加奈子さんの『舞台』について感想を書きました。
「演じること」がテーマであった本書では、まさにぴったりのタイトルでしたね。
1時間くらいで読める分量なので、ぜひぜひ読んでみてくださいー^^
まくら(^ω^)