奥田亜希子

▲ 『左目に映る星』

投稿日:2017年5月16日 更新日:

はじめに

『左目に映る星』(奥田亜希子).第37回すばる文学賞受賞作.

 厭世的で夢見がちな世界観が印象に残った作品です。

 この本を読んだ当時、とても面白く感じて、奥田さんの他の著書も購入した記憶があります。

 今回、再読して感想を書きました。

『左目に映る星』

あらすじ

第37回すばる文学賞受賞作 左目に映る星 奥田亜希子|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロ より

 早季子は、幼少期から左目にのみ近視と乱視があり、そのせいで右目を閉じる癖がある。

 左目から見えるぼやけた世界を彼女は気に入っていたが、誰ともその感覚を共有できないことに寂しさを感じていた。

 小学5年生の時、自分と同じ目を持つ少年・吉住と出会う。

 彼は早季子にとって奇跡のような存在だったが、二人で過ごす幸せな時間は長くは続かなかった。

 
 当時の彼を忘れられないまま26歳になった早季子は、知り合ったばかりの男と簡単にホテルへ行くことはあっても、他者に恋愛感情を抱けなくなっていた。

 ある時、「宮内」の存在を人づてに知る。恋

 愛未経験で童貞、超がつくほどのオタクで、人生をアイドル・リリコに捧げる冴えない男。

 彼もまた、早季子と同じ目の症状を抱えていた。

 「私や吉住と同じ世界を見ているかもしれない」。宮内に会いたいと強く願うが、彼はリリコの追っかけで毎週忙しい。

 早季子は、意を決し福岡で行われるリリコのライブに同行するのだが――。

感想

 「嫌だなって思うことがあったとき、乱視のほうの目だけになるといいよ。

 いろんなものがぼやけて見えて、なんだかちょっとほっとするから」

 左右の目の見え方に大きな違いがあることを「不同視」と呼ぶらしい。

 へえ。

 ちょっと左右で視力が違うという人は、いっぱいいると思いますが、この作品に出てくる早季子、吉住そして宮内は、不同視にあたるようです。

 なるほど。

 通常は、近視や乱視は単純に「問題」「欠陥」とみなして、矯正することが多いと思いますが、早季子は、それに大して、そうではない特別な感情を持っています。

 それ故、右目を閉じて、左目だけで世界をみることは、ある種のアイデンティティでした。

 そのため、その気持ちを共有していたいわば同志である吉住が、目を矯正したことは、早紀子にとって大きなショックだったんですね。

みんなひとりぼっちだなんて、当たり前のことだよ。でもこの当たり前さに気づくほど、寂しさっていうのは大きくなるんだよね。

 早季子は、もう二度と出会うことがない吉住の「虚像」を愛し続ける世界で、孤独に生きていました。

 そこに、たまたま、やってきた人物が宮内だったわけです。

 早季子は、第2の吉住を発見した気持ちになり、宮内に強い関心を示すのですが、彼は生粋のアイドルオタクでした。

 出会い頭でホテルに行くこともある早季子と女性と付き合ったことがない宮内をつなぐ、唯一の共通点が、「不同視」でした。

 うん、少なくとも出会うきっかけはそうでした。

 その後の早季子が宮内を思う気持ちがどのように変化していくのかは、ぜひ本書を手にとって見届けてあげてほしいです。

「でも、それがどんなに実像とかけ離れていても、虚像を見てしまうほど人を好きになったことは、絶対に間違いじゃあないです。絶対に。そこを取り違えたら、私たちは本当にだめになってしまう」

 宮内がドハマりしてるアイドル・リリコも「虚像」に違いありません。

 ファンは与えられたキャラクターの性質から内面やこうあるべきといったことを好き勝手に思い描き、それを崇拝する。

 その行為は、文字通り、虚しいのでしょうか?

 いいえ、少なくとも早季子はそのように考えていませんでした。

 「虚像を見てしまうほと人を好きになる」。

 それはきっとひたむきで情熱的な愛のカタチなのでしょう。

 ところで、僕は「カタチ」というカタカナを使うのが好きです。

 「かたち」「形」とは、違って、そのほうがイメージしやすいんです。

 なんででしょう。

 まあ、いいや。余談でした。

 
 
 虚像を見るほど人を好きになったことが僕にあるだろうか。

 もしYESだとしたら、きっと恵まれているんでしょうね。

 皆さんは、心当たりありますか?

こんな人にオススメ!

  • 実はワタシ「不同視」だよ!って人
  • 厭世的な価値観をお持ちの人
  • ちょっと変わった恋の話を読みたい人
  • 独特な世界観に浸ってみたい人

オススメ本を紹介

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あとがき

 今回は、奥田亜希子さんの『左目に映る星』の感想を書きました。

 奥田さんは、すごく独特な感性をお持ちだということが、文章から伝わってきます。

 読みやすいので、是非是非、読んでみてください〜^^

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