純文学

▲【書評】『透明人間は204号室の夢を見る』(奥田亜希子)の不器用な女の異質な純心

『透明人間は204号室の夢を見る』(奥田亜希子)の読書感想文です。表紙が美しかったので、ジャケ買いしました。 奥田亜希子の小説を読むのは2回目になります。 『透明人間は204号室の夢を見る』も、主人公の設定がとても凝っていて、細部の描写も精密に行われていたと思います。 あらすじと考察・感想を書きます。

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『透明人間は204号室の夢を見る』のあらすじ

主人公の実緒(23歳)は、高校時代に文学新人賞を受賞しました。将来を期待されましたが、それ以降、納得のいく作品を生み出すことができず、小説を書けなくなります。

唯一の著書となった茄子紺色の本を大型書店で見かけ、誰がそれを買うのかチェックすることが、日常となりました。 自意識過剰ですね笑 そんなある日、1人の青年がその本を手に取る様子を見た実緒は、彼の帰路を尾行します。

青年の名前は千田春臣。 実緒は妄想の中で「透明人間」となり彼の住む204号室まで飛んでいきます。 その頃から少しずつ短編小説を書けるようになり、春臣のポストにそれを夜な夜な投函します。

さらに、Facebook(恐らく)を使って、彼のプロフィールと、彼女・いづみのプロフィールを特定した実緒は、彼らの投稿をチェックするようになります(怖い怖い)。 そして、いづみの投稿の中で自費出版に関する話題が出たことをきっかけに、実緒はいづみにコンタクトを取り、面識を持ちました。

いづみと打ち解けた実緒は、春臣とも面識を持つことになり、3人で遊んだりするようになります。 この話の結末はいかに。

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『透明人間は204号室の夢を見る』の感想・考察(ネタバレあり)

 いやあ、不気味な主人公ですね(笑)まず自身の著書を誰が買うのか監視するところですでにアウトですし、夜な夜なポストに作品を投函する意味もわかりません。 はたまた、内向的でコミュ障なのに、Facebookを使って、いづみとちゃっかり連絡をとっちゃうあたりも謎の行動力で、つかみどころのなさが変な感じです。

 そんな実緒ですが、やっぱりこういう内気で純粋なキャラは「頑張れっ」と応援したくなります。 春臣やいづみたちのようにリア充な人間になるところまでは、頑張らなくていいから、せめて、また小説が書けるようになってほしい。 そう祈りながら、作品を読んでいました。 最終的には、春臣にポストに小説を投函しているのが実緒であるということがバレて、絶縁されてしまいますが、そのことをきっかけに、編集者と連絡をとることとなった実緒の未来は意外と明るいかもしれません。

 あと、一つかわいそうだったのが、春臣といづみと実緒の3人で実緒が心から言ったセリフ

「夏がこんなに楽しかったの、生まれて初めて。 二人のおかげだと思う。 本当にありがとう」

実緒もやっと明るい世界のことを知ったんだと、思いきや、それがやはりいづみの打算により設定された関係だとわかるところ、それがなんとも言えず悲しいです。 そういえば、昔から利用される以外で声をかけられたことはなかったなと振り返るシーンは、実緒の孤独を深く感じさせます。

作品全体としては地味な印象ですが、妄想の中で透明人間となる描写は鮮やかに描かれていて、文章力の高さがうかがえます。 ただ、もうちょっと、イベント的な要素があっても、よかったかなあと、個人的には思いました。

『透明人間は204号室の夢を見る』はこんな人におすすめ!

  • 内向的な人間にシンパシーを感じる人
  • 透明人間になるという特殊な設定を味わいたい人
  • 人間関係に思い悩んでいる人

あとがき:透明人間は204号室の夢を見る

『透明人間は204号室の夢を見る』(奥田亜希子)の読書感想文でした。奥田亜希子の世界観はわりと好きなので、また、他の作品も読んで感想あげたいと思います。

♦︎奥田 亜希子(おくだ あきこ)
1983年愛知県生まれ、千葉県在住。
愛知大学文学部哲学科卒業。
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