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にじいろガーデン小川糸_性別を超えた愛と家族の物語

『にじいろガーデン』(小川糸/集英社文庫)の読書感想文です。とても感動的な作品です。後半は、ほとんど泣きっぱなしで、ページが前に進みませんでした。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。

『にじいろガーデン』のあらすじ

泉と千代子のドラマチックな出会い

夫との関係に悩む泉は、ある日、飛び込み自殺をしようとしていた女子高生・千代子と出会います。 二人はすぐさま性別の壁を超えて愛し合います

 千代子がかけがえのない存在だと気づくのに、たいして時間はかからなかった。 ・・・ 心の中には、すでに彼女だけの居場所ができ上がっていた。

そして二人は、泉の息子・草介と千代子のお腹にいる娘・宝とともに通称マチュピチュ村に駆け落ちします。 ぼろぼろの廃屋寸前の建物を修繕して、性的少数派を象徴するレインボーフラッグを掲げた「タカシマ」家には、幸せの予感しかありません。

 タカシマ家のレインボーフラッグは、風にあおられると、鳥が羽ばたくような力強い音を響かせる。
 旗が何を意味するのか、もし村の人たちが気づいたらどうしようかと最初はためらったけれど、今はこの音に、私自身が励まされる。
 このレインボーフラッグが、私たち家族の、声なき声だった。

ゲストハウス虹の誕生

 最初のうちは、泉が危惧したように、彼女らの境遇を疎んだ近隣住民から嫌がらせを受けることもありましたが、二人の堂々とした態度に、次第に理解者も増え始め、いつの日からか、タカシマ家は周りから受け入れられていきました。 そんな中、泉が過労で倒れたことを契機に、千代子がある提案をします。

 「うちで、ゲストハウスを始めようと思って。 民宿みたいなものだよ。 ほら、うちにはさ、使ってない部屋がまだあるでしょう? そこにちょっと手を加えて、ゲストが泊まれるようにするの。 泉ちゃん、覚えてない? マチュピチュ村に越してきてすぐ、家の修理をしたじゃない。 あの時、いつかそういうことがやれたらいいねー、ってふたりで話したんだよ」

そして新しく誕生した「ゲストハウス虹」は、彼女らのような性的少数派も受け入れる宿泊施設であることを理念に掲げ、遠方から多くの宿泊客がやってくるようになります。

千代子が語る衝撃的事実

しかし、そんな順風満帆な日々がいつまでも続くはずはありませんでした。 ある日、千代子の口から、衝撃的な事実がカミングアウトされることになります。 これには、一家全員が、大変なショックを受け、打ちひしがられることになります。 その事実とはーー?

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『にじいろガーデン』の感想と考察

静的少数派の恋愛を色濃く描く

この話はまさに感動長編ですね。 まず、泉と千代子が出会えたこと自体が運命のように思えます。 普通は、夫と不仲の主婦と自殺しようとしている女子高生が、出会って、言葉を交わして、恋におちる、ということはなかなか起こらないですよね。 ましてや、泉はノーマルだったんですから、なおさらすごいと思います。 性的少数派と言えば、最近「ミドリのミ」という作品を読んだばかりだったこともあり、関心が高まっていたので、いい感じに作品にのめり込むことができました。

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小学3年生の女の子・ミドリは、父親の広とその恋人・源三と共に暮らす。 「なんで”ふつう”じゃなきゃいけないの?」 それぞれの理想の”かたち”を追い求め、もがくミドリたち。 そんな彼女たちの心情を鋭く切り抜いた6編からなる意欲作。

登場人物の心理がまざまざと表現されている

 登場人物もとても魅力的だったと思います。 泉は、男性的で力強いまさに「カカ」という感じ。 千代子は、女性的で明るいまさに「ママ」という感じ。 草介は、どこまでも優しく、宝は、どこままでも奔放です。 この4人が、仲睦まじく暮らしている姿は、「幸せの象徴」といった具合で、見ていて心が温かくなりました。 血の繋がりがなくても、家族は家族になれるんだなと思いました。 そして、僕は「にじいろガーデン」という作品は、読む前から、そういう家族のほっこり系の話なんだろうなあと予想していました。

予想は、まあ、当たっていたのですが、この作品はそれだけでは終わりませんでした。 心のもっと深い部分も抉りにきたような感じです。 それは、あらすじにも書いた事件と大きく関わっています。 陽だけではなく、陰の部分もしっかり描かれていました。 しかも、罪なことに心理描写が巧みなのです。 これには、僕の涙腺は耐えることができませんでした。 泣ける作品だとは、思っていなかったので、不意打ちをくらったような感じです。 「ずるい!」と思いました。

再生への予兆を仄めかす

 このように、一度どん底まで落とされるのですが、「にじいろガーデン」の素晴らしいところは、きちんと最後に再生の予兆を仄めかしているところです。

 カカみたいに、強い人になる。 ママみたいに、明るい人になってみせる。 ニーニーみたいに、優しい人にもなりたい。 でも、私は私だけの色の花を咲かせる。 そして、素敵なオハナ畑を作るんだ。 それがきっと、私の使命だと思うから

 「オハナ」というのは、泉と千代子が結構式を挙げたハワイでは、「家族」という意味だそうです。 この文章を読んで、思ったことは、タイトルの「にじいろガーデン」というのは、非常に色々な意味を含んでいたんだなということです。 これは、きっと、このお話を読んだ人にはわかると思います。 本当に、素晴らしい作品でした。

『にじいろガーデン』はこんな人におすすめ

  • 性的少数派に興味・関心がある人
  • 家族でいることの意味を問い直したい人
  • とにかく泣ける作品を読みたい人

あとがき:にじいろガーデン

『にじいろガーデン』(小川糸/集英社文庫)の読書感想文でした。泣きすぎてとても疲れました(笑)評価はもちろん”★”です。ただ、人前でいるときに読んではダメかも⋯⋯。

♦︎小川 糸(おがわ いと)
1973年山形県山形市生まれ。
清泉女子大学文学部国文学科卒業。
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