はじめに
夜空はいつでも最高密度の青色だ 最果タヒ 詩集4作目(43篇収録). 2017年に石井裕也監督により映画化。 今回は、心に残った20の言葉と全体の感想について記事にしたいと思います。
最果タヒさんについては、以下の記事をどうぞ!
【特集】カリスマ詩人「最果タヒ」とは何者か? その素顔に迫る – 積ん読と感想わ
夜空はいつでも最高密度の青色だ
映画予告
心に残った20の言葉
ここでは、僕がこの詩集を読んで「いいな」と思った20の言葉と一言メモをまとめたいと思います。
①都会を好きになった瞬間、自殺したようなものだよ。
「青色の詩」p7より
都会を好きになるということは、自分の中の何かが死んでしまうことと同義だという風に捉えました。
②私の好きなものは夜のうちに滅んでおいて
「朝」p8より
僕もそう思います。
③ゆめかわいいは、死後みたいな、色。
「ゆめかわいいは死後の色」p10より
ゆめかわいいとは「パステルカラー、セーラー服、魔法少女、いちごみるく等のモチーフが使われた夢のようにかわいいもののこと。」だそうです。
④恋をした女の子が嫌いだ。
どんな悪意もきれいな言葉にできるから、「惑星の詩」p13より
確かに、恋愛は正義みたいな強引な思想ありますよね。
⑤私のこと嫌いでもいいよって言えなくちゃ、やさしい人にはなれません。
「月面の詩」p15より
そのくらいの器の大きさが必要だってことでしょうか。
⑥潔癖なひとたちが作った街は、えぐいカラフルとファンタジーがまざりあって、朝でも昼でも夜みたいだ。
「水野しずの詩」p16より
「潔癖なひとたち」っていう言葉がいかにも自分たちとは違うというニュアンスが含まれていて、いいですね。
⑦とりとめもなく突然に、恋をすることはロマンチックで、だから突然、誰かを憎むこと、それもポエジーだって言いたい。
「やぶれかぶれ」p23より
どちらも誰かに対する強い感情というのは共通ですからね。
⑧ときどき私やきみという存在が無駄で あいだの気持ちだけが本当に世界に必要だったものなんじゃないかと思うよ
「星」p24より
気持ちは存在(実体)よりも死後に残るというニュアンスでしょうか。
⑨きみが孤独なふりをするあいだ、ぼくはきみと友達でいる。
「かわいい平凡」p30より
僕の平凡な友達。
⑩きみの最低な部分を愛してくれる人がいるなら、そのひとが、きみの飼い主になってくれるよ。
「首都高の詩」p33より
そうなんでしょうか。 そうだと嬉しいです。
⑪きみは死ぬとき、まぶたのわずかな隙間から見た世界に白い光がひらひらと落ちていくその光景をきれいと思った
「美しいから好きだよ」p37より
死ぬ時に最後に見える世界は美しいものなのでしょうか。だとしたら、いいですね。
⑫きみに優しくない人を、きみが無視する。
それだけで春がきたらいいのにね。「プリズムの詩」p39より
その行為が正しく認められればいいですね。
⑬愛してって言葉ぐらいしか似合わない感情を、具体的にしなきゃ殺されるから、とりあえずで欲しがっている。
「竹」p44より
殺されるなら欲しがるしかないですね。
⑭ここは渋谷 きみのこと嫌いになってあげようかって言えるぐらいかわいくなきゃ殺される場所 夢の街
「渋谷の詩」p49より
物騒な街があるもんです。
⑮今日は私たち、雪の話ばかりしてまるで街みたいね。
「雪」p52より
これは語感がいいなと思って選びました。
⑯左手でたたいた人がある日とつぜん破裂をしたりとか、そんなことを想像すると毎日つらい気持ちになるね。
「うさこ、戦う」p54より
想像力が豊かだときっとつらい人生ですね。
⑰いじめをしたことのある人しかいない店で食べたパンケーキが、私の最後の青春だったかもしれない。
「春の匂い」p60より
そのお店ってなんだかすごく想像できてしまう。 絶妙な表現。
⑱きみが好き、花見にいって、ばかな顔で、見上げてお酒を飲んでいたいな。
「4月の詩」p70より
この一文を見るだけですごく幸せな気持ちになります。
⑲きみの守りたいものが消え失せていくのが、青春で、人生のスパイスならば、それ、死ねってことじゃないのか。
「次元の孤独」p74より
ああ、青春を求めても、死ねって思ったらいけないですね。
⑳春、生まれた日にあびた祝福を、忘れない人はいない。だから毎年桜は咲いて、私たちを2秒だけ、透明にする。
「もうおしまい」p86より
難しい言葉ですけど、素敵な言葉だと思いました。
感想
前の項では僕が心に残った20の言葉と一言メモを紹介しました。 そこで挙げた言葉に少しでもいいなと思ってくれる人がいたら嬉しいです。 ただ、けっこうつかみどころがないというか、全体のまとまりがわからないという方も多かったのではないかと思います。 僕自身もそんなにわかっていないです。 そこで、考えを強化するために、「あとがき」にあった最果タヒさんの言葉を紹介します。
レンズのような詩が書きたい。 その人自身の中にある感情や、物語を少しだけ違う色に、見せるような、そういうものが書きたい。
「あとがき」p92より
私の詩を少しでも好きだと思ってもらえたなら、それは決して私の言葉の力ではなくて、最初からあなたの中にあった何かの力。私の作品じゃなくても、ふとみた景色や鳥のさえずりや、好きな歌、それらにふっと顔がほころぶ日があったなら、それはきっとあなたの中の何かが響いて、すべてを眩しく見せているんだろう。
世界が美しく見えるのは、あなたが美しいからだ。
そう、断言できる人間でいたい。「あとがき」p93より
この文章を読んで、少し最果タヒさんの詩に対するスタンスがわかったような気がします。 外発的じゃなくてあくまでも内発的な共鳴によって、感情を揺り動かす。 その種となるのは、僕たちひとりひとりが既に持っているもの、培ってきたものであり、作品はそれに水を与えるようなものなんだよってことを伝えたいのかなと思いました。 鋭い言葉を放つ作風とは裏腹に、そのスタイルは、あくまでも個人に寄り添ったものであり、優しさ、なんじゃないかなと思いました。
「夜空はいつでも最高密度の青色だ」が主なテーマとしているのは、「死」、「愛」、「世界」、「優しさ」だったのではないかと思います。 それを独自の感性をもって、鮮やかに描き出しているのは、本当に能力が高いんだなあと感じます。 この作品は映画化されるようですが、おそらくその辺りがメインとなってくるのではないかと思いました。
あとがき
以上、僕が心に残った言葉と一言メモ、全体の感想を記事にしました。 映画は絶対に見に行きたいと思います!!