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●【書評】『私に似た人』(貫井徳郎)_社会的弱者に残された選択肢とは何か?

2017年11月19日

『私に似た人』(貫井徳郎/朝日文庫)の読書感想文です。「小口テロ」と呼ばれる小規模デモを引き起こすレジスタンス。現状を憂い、社会を憎む者による反抗。これが、社会を変えるための唯一の手段なのだろうか?そして謎の人物「トベ」の正体とはーー。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。

『私に似た人』のあらすじ

「小口テロ」という小規模テロが頻発する日本。テロを起こした犯人は、自らをレジスタントと称する。各章により、キャラクターが入れ替わって、多面的に「小口テロ」という現象を、捉えることができる。

『私に似た人』の感想と考察(ややネタバレ)

『私に似た人』の感想と考察を書きます。ネタバレが嫌だよって人はコチラまで、進んでください。

日本社会は他者に冷たい

「小口テロ」が発生する背景に、日本社会の弱者に対する冷遇さがあります。日本人は自分の周りの人には親切ですが、他人に対しては、冷たい攻撃をしていい対象を見つけたら、みんなで一斉攻撃をしかける。社会問題に関しても、個々人が問題意識を持つことは少ないです。この話はフィクションですが、日本の現況に関する記述は、驚くほど的を射ています。

テロを教唆した人物「トベ」とは?

このような、日本社会を変えるために、社会の下層にいる人たちがレジスタントとなり犯行に及ぶ。しかし、レジスタントは自ら能動的に、テロを起こしたのではありません。それを教唆した人物がいます。それが「トベ」と呼ばれる人物でした。「トベ」は、ネズミ講のように、テロを教唆する存在を増殖させ、「小口テロ」を主導しましたた。果たして「トベ」の正体とはーー?本書を読んで確かめてもらいたいです。ただ、意外な人物です。

日常の些細な幸せを大切にする

僕にも、若い世代が冷遇されている危機意識はあります。そして、現状を変えるためには、過激な方法をとることが、必要かもしれません。ただ、本書のように「トベ」になる存在は、現れないだろうし、自ら人柱になる気もありません。だから、現状を受け入れることが必要です。僕なりの解決策は、日常の些細な幸せを大切にすればいいと思います。これが僕の、テロやデモを代替する現実的手段です。

評価:『私に似た人』はこんな人におすすめ

評価

日本社会って生きづらいよね⋯⋯。

社会に蔓延する闇についてじっくり考えてみたい。

デモやテロは本当に駄目なことなのだろうか?

♦︎貫井 徳郎(ぬくい とくろう)
1968年東京都渋谷区生まれ。
早稲田大学商学部卒業。

あとがき:私に似た人

『私に似た人』(貫井徳郎/朝日文庫)の読書感想文でした。

余談ですが、『私に似た人』を読んで、攻殻機動隊の「Stand Alone Complex」を連想した人は多いはずです。テロやデモはこれから新しい時代に突入していくのでしょう。僕たちも無関係ではありません。

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