柴崎友香

● 『その街の今は』

投稿日:2017年7月2日 更新日:

はじめに

『その街の今は』 柴崎友香 2009年4月 新潮文庫より ’06年度芸術選奨文部科学大臣新人賞・織田作之助賞大賞受賞.

 大阪に住んでいる人が読んだら、多分もっと作品の良さがわかるんだろうなと思いました。

 あらすじと感想を書きます。

その街の今は

読書時間の目安

1時間44分

あらすじ

 28歳の歌ちゃんは、勤めていた会社が倒産して、カフェでバイトをしています。

 ある日、合コンの帰り道に、年下の良太郎に出会います。

 二人はぎこちないながらも、次第に距離を近づけ、大阪の古い写真を一緒に見たりするようになります。

 変化していく大阪の街と現代の若者を描く、温かな物語です。

感想

以下、多少のネタバレあるかもです。 未読の方はご注意を。

 歌ちゃんは、自分が住んでいる街・大阪の過去の姿をみることに、執着しています。

 その一方で、

 わたしは、シュガーキューブスで聞いたおっちゃんの話を、おっちゃんのしゃべりかたで反芻した。

 あの話をしているとき、あのおっちゃんには、泳いだ川もバレエ学校も自分や友だちの家も鮮やかに見えていた。

 だけど、すぐそばで聞いていてもそこは見えなかったし、実際にこの場所に来ても見えない。

 わたしは、どうしてもそこが見たかった。

 だけど、どうすればその場所を見ることができるのかわからなかった。

と述べているように、過去の姿を実際に“見る”ことの難しさを実感しています。

 なぜ、そのことに歌ちゃんが心惹かれるのか、本人も理由がわからないようです。

 ただ、古い写真などを見ていると、無性にドキドキして、その姿を見たいと思ってしまうようです。

 
 上述したような、過去の大阪を”見る”ことが、非常に大きなテーマとなっているので、大阪の街並みに関する描写がとても多いです。

 僕は、一度も大阪に行ったことがないので、作品に出てくる地名や場所をイメージすることが難しく、これがもし東京だったら、もう少し作品を楽しめたんじゃないかと思いました。

 ですので、大阪出身の人がこの作品を読めばきっとかなり楽しいんだろうなと思います。

 
 最後、二択のような形で、「どちらの男性を選ぶのか?」という状況に対して、明確な答えが示されないまま、作品が終わるのは、非常に良かったと思います。

 なぜなら、どちらを選ぶかは、だいたい予想することができるからです。

 それを提示するのではなく、読者に判断を委ねるあたり、遊び心があって、いいと思います。

 このように、断定をしないスタンスは、柴崎さんの作品の特徴の一つであると思います。

 
 みなさんは、自分の住んでいる街の過去の姿を知りたいと思いますか?

 僕は、まったく、興味がないです。

 だって、「知ってどうするの?」と思ってしまうからです。

 それよりは、未来に、どういう街になってほしいか、を考えるほうが、性には合っていると思います。

 ですので、歌ちゃんには、あまり共感できなかったのですが、自分とは違う感性の持ち主だなあとは思ったので、彼女の思考がどうなっているのかはとても興味が湧きました。

 
 この作品は、ストーリーというストーリーはありませんでしたが、とてもノスタルジックで味わい深い作品だったと思います。

こんな方におすすめ

  • 街の過去とかに興味がある人
  • 空き時間でさらっと読める本を求めてる人
  • 味わい深い作品を読みたい人

あとがき

 柴崎さん作品は、3冊目です。

 もっと作品を読みたいです。

 やはり、彼女からは独特なセンスを感じます。

 薄い本なのに内容が濃かった点を評価して、●(4 point)となっています。

 ぜひ、みなさんも読んでみてくださいね^^

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