『窓の魚』(西加奈子)_幻想に翻弄され「死神」の声は聞こえない

「カップル2組が温泉旅行に行きある事件が起きる」というよくある設定だが、登場人物4人が曲者。作品は4人それぞれを主観にして順番に進行する。彼らが抱える心の暗部がパズルのピースを合わせるように徐々に組み合わさっていく展開は秀逸。

蹴りたい背中/綿矢りさ_感覚の鋭さが刺さる異色の青春ストーリー

『蹴りたい背中』(綿矢りさ)の読書感想文です。学生のときに読んだ印象と大人になって読んだ印象の違い。ハツとにな川のこれから。ハツに芽生えた衝動の正体は何だったのか?解説しています。

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最後の命/中村文則_やや過激な描写から人間の本質に迫る

「お前に会っておきたい」7年振りに会った幼馴染みの冴木(さえき)とは、「ある事件」をきっかけに疎遠になっていた。冴木との再会後、私の部屋で1人の知り合いの女性が殺害されているのが見つかる。取り調べを受けていた私に、警察は「冴木が連続婦女暴行事件の指名手配犯である」という衝撃的な事実を伝える。捜査への協力を断り、自力で冴木を探す私。冴木は本当に犯人なのだろうかーー?人間の「命」をめぐる作品。

銃/中村文則_所有されているのは自分だと気づいた時にはもう遅い

大学に通う主人公・西川は、雨が降りしきる河原にて男が倒れているのを見つける。男の傍には黒い「銃」。西川は「銃」がはなつ魅力に取り憑かれたように持ち去る。その日から西川の生活は「銃」を中心にまわり始める。「銃」が西川にもたらすのは高揚か恐怖か。無意識の錯綜を緻密に描いた、奇才・中村文則の衝撃のデビュー作。

土の中の子供/中村文則_過去のトラウマと闘う覚悟はありますか?

主人公の男は、幼い頃に親に捨てられた。里子に出された先に待っていたのは圧倒的暴力。大人になると、タクシードライバーとなり、恋人・白湯子(さゆこ)とともに刹那的に生活をともにする。男の幼少期の記憶には、深い森の中で土に埋められた経験が色濃くトラウマとして残ります。不安定な精神のもと、彼は希望を見つけることができるのかーー。

こうふく みどりの(西加奈子)_普通の女の子の普通の日常をみずみずしく描く

大阪のとある町。14歳の緑はまだ初恋を知らない女の子。しかし転校してきたコジマケンが気になる。緑の実家・辰巳家は、女性家庭。夫が失踪中のおばあちゃん。家庭のある男性を愛して緑を産んだお母さん。バツイチ(離婚予定)子持ちの藍ちゃん。藍ちゃんの娘の桃ちゃん。ペットの猫も犬もメスである。不思議な魅力のある辰巳家には、さまざまな事情を抱えた人たちが集まる。

うつくしい人/西加奈子_眩しすぎて目を背けたくなる光がある

主人公・蒔田百合は、純真さ故に苛められ引きこもりになった姉のようになるまいと、他人にどう思われるかを常に考えそつなく振る舞う生き方を選んだ。しかしある日、会社でのちょっとしたミスで人の前で泣かないと誓ったはずの涙が溢れ、会社を退職する。自分のアイデンティティを見失った百合は、茫然自失なまま、とある離島に一人旅に出ることに。旅先でも精神不安定な自分に嫌気がさしていた百合だが、ドイツ人の美しい青年・マティアスとホテルの冴えないバーテンダー・坂崎と出会い、徐々に自分の輪郭を取り戻していく。暗いトンネルから見えた一筋の光明を巧みな描写で表現した傑作。

寝ても覚めても/柴崎友香_ピントが合わない恋愛模様の行く末とは?

不思議な雰囲気をまとう青年・鳥居麦に出会いたちまち恋に落ちた朝子。しかし麦はある日、朝子の前から姿を消してしまう。それから幾年が経ち東京に引っ越した朝子の前には、麦にそっくりの亮平と出会う。二人の性格は似て非なるものだが、朝子は亮平と付き合うことに。目の前の亮平を好きだと思う一方、麦への気持ちも捨てきることができずに、日々を過ごしていた朝子に急展開が押し寄せる。甘くもあり苦くもある十年の恋を描く良作。

異世界購買部!学生食堂はじめました。/須藤裕美_あなたのまわりの人を巻き込むヒントがあるかも?

『異世界購買部!学生食堂はじめました。』(須藤裕美)の読書感想文です。ユニークなストーリー展開と微笑ましい登場人物の姿が印象的な作品です。

麦本三歩の好きなもの/住野よる_あなたの歩く先を照らす光になる

大学の図書館で働く天然系女子「麦本三歩」。職場の3人の先輩を「優しい先輩」「怖い先輩」「おかしい先輩」と脳内で呼んでいて、和気藹々と働いている。ぼけーっとしている三歩は、何も考えずに生きているようにみえる。しかし実際には、人並み以上に気持ちに対して繊細だったりする。そんな愛らしく憎めない三歩の、のほほんとした日常を大切に紡いだ作品。

【感想・書評】『いなくなれ、群青』(河野裕)_僕の目に映った、もっとも綺麗なものだった

『いなくなれ、群青』(河野 裕)をゆるっと書評します。

王国/中村文則_運命を照らす月の光をナイフで切り裂く

美しき娼婦・鹿島ユリカの仕事は、社会的要人にハニー・トラップをしかけ、弱みを人工的に作り上げること。彼女は、親友の子供である翔太の難病の治療費を稼ぐために闇の世界に立ち入った。美貌を持つ彼女は、正体不明の組織に属する矢田から請負った仕事を完璧にこなしていた。しかしある日、彼女の運命を大きく左右する男と出会う。彼の名は、木崎。闇の世界を牛耳る木崎と矢田の利害の衝突により、命を狙われるユリカのスリリングな逃亡劇を描いた作品。

掏摸/中村文則_人間は運命に抗うことができるか?

主人公の男・西村は、東京でスリを生業とする。彼のスリの技術は超一級で、孤独だが不思議な平穏の元、日々を暮らしていた。ところがある日、「木崎」という闇世界の住人と出会ってしまう。木崎に存在を知られたものは皆、掌で踊らされ悲痛な結末が待っている。西村は、自身の「運命」に光を見出すことができるのかーー?

●私に似た人/貫井徳郎_社会的弱者に残された選択肢とは何か?

「小口テロ」という小規模テロが頻発する日本。テロを起こした犯人は、自らをレジスタントと称する。各章により、キャラクターが入れ替わって、多面的に「小口テロ」という現象を、捉えることができる。

去年の冬、きみと別れ/中村文則_芸術に狂う者が一線を越える瞬間

「去年の冬、きみと別れ」は、ライターの”僕”が、死刑囚である木原坂雄大(カメラマン)の起こした猟奇殺人事件(女性2名を焼き殺す)を、本にするために、関係者に取材をおこなうという設定で進行します。雄大の姉・朱里、”K2″のメンバー、人形師の男…。本人が気づいていない真の欲望と、人がその「一線」を越えてしまう「瞬間」と、その「領域」にまつわる物語です。

● 【書評】『ボタニカル』(有間カオル)の幻想的なファンタジー

『ボタニカル』(有間カオル/一迅社)の読書感想文です。表紙のイラストが今日マチ子だったので、すぐさま購入しました。タイトルのとおり、幻想的な作品です。あらすじと感想・考察(ややネタバレあり)を書きます。

●【書評】『タイムカプセル浪漫紀行』(松山剛)を読んで「絆」と「夢」を再考しよう

考古学者を目指し都内の大学に通っていた英一でしたが、尊敬する考古学者でもある父の「遺跡捏造事件」を受けて、考古学者になる夢を諦めてしまいます。 大学に退学届けを提出して、失意の日々を過ごしていた英一。そんなある日、10年前の10歳の時に他界した幼馴染の少女・明日香が現れます。

■ 【書評】『時をめぐる少女』(天沢夏月)_あなたは未来・過去の自分に会いたいですか?

イチョウ並木をまっすぐ進むと時計の文字盤のような広場がある。通称「とけいじかけのプロムナード」と呼ばれるその場所には、ある噂がある。 それは、文字盤を時計周りに歩くと未来の自分に会え、反時計周りに歩くと過去の自分に会える、と言うものだ。9歳の葉子のもとにあらわれたのは、結婚をまじかに控えているという女性。 彼女の笑顔には、葉子と同じ、えくぼがあった。

■ 【感想文】不朽の名作『西の魔女が死んだ』(梨木香歩)から学べること

中学生の少女・まいは、いじめが原因で学校に通えなくなる。 そのため、しばらく学校を休んで、おばあちゃん(英国人)の家に1ヶ月ほど住むことに。 そこでは、自然豊かなミニマム・ライフが待っていた。 おばあちゃんは、自身が魔女の家系であると仄めかし、まいは「魔女修行」をはじめる。 魔女になるためには、強靭な精神力が必要。 まいは、自分で物事を決める、最後までやり遂げる、と一念発起する。 そんな、魔女見習い・まいにある日、衝撃的な事件が起こる。

よるのばけもの/住野よる_現実と空想が紙一重で交錯する

『よるのばけもの』(住野よる)の読書感想文です。前半は、「あらすじ」「テーマ」「評価(ネタバレなし)」です。後半は、「感想・考察(ネタバレあり)」です。まだ読んだことがない方は、本選びの参考に。すでに読んだことがある方は、頭の整理に。住野よるさんの描く世界は、現実と空想が紙一重ですね。

● 【書評】青春オカルトミステリー『ホーンテッド・キャンパス』(櫛木理宇)のあらすじと感想文

 ※本記事はネタバレなしです ホーンテッド・キャンパス 櫛木理宇 第19回日本ホラー小説大賞・読者賞受賞. 青春オカルトミステリという言葉がぴったりな作品。 決して怖くはないので、お化けとか苦手な方でも平気です。 内容は、コミカルで楽しいです。

●死にぞこないの青/乙一_残忍な社会と恐怖に立ち向かう勇気

小学生のマサオは些細な誤解により、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。 その日から、羽田先生はマサオに対してある種のいじめを始め、クラスもそれに同調する。 そんな境遇も、身から出た錆だと受け入れていたマサオだったが、次第にそれが不条理だと感じはじめる。 その頃と、時を同じくして、真っ青な肌に拘束服を来た少年「アオ」が見えるようになる。 アオの正体とは一体?

●【書評】『夏と花火と私の死体』で乙一の世界観を楽しもう

九歳の夏休み、少女は殺された。あまりに無邪気な殺人者によって、あっけなくー。こうして、ひとつの死体をめぐる、幼い兄妹の悪夢のような四日間の冒険が始まった。次々に訪れる危機。彼らは大人たちの追求から逃れることができるのか?死体をどこへ隠せばいいのか?恐るべき子供たちを描き、斬新な語り口でホラー界を驚愕させた、早熟な才能・乙一のデビュー作。

■夜行/森見登美彦_摩訶不思議なパラレルワールド

私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間でした。十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消しました。夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出します。私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていました。

▲【書評】『殺人出産』(村田沙耶香)にあなたは賛成ですか?反対ですか?

 今回は村田沙耶香さんの『殺人出産』(講談社、2014年)について感想を書きたいと思います。先日読んだ『しろいろの街の、その骨の体温の』(2012)がとても面白くて、さすが芥川賞とる作家さんの作品は違うなあ、という感じで、それと、タイトルの「殺人出産」という名前からどういうストーリーなんだろうと気になったので、購入しました。

★【書評】『恋する寄生虫』(三秋縋)から自由意志とは何かを読み解く

 潔癖症の青年・高坂賢吾と視線恐怖症の少女・佐薙ひじりは、社会不適合同士ゆえに、惹かれあい、やがて恋に落ちる。 しかし、二人の恋はによってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎなかった。 二人に待っている衝撃の結末とはーー?

▲【書評】『変身』(東野圭吾)が問いかける心の所在と自我の喪失による死

世界初の脳移植を施され一命を取り留めた青年、成瀬純一。恋人・葉村恵と平穏な暮らしを取り戻したように思えた彼に異変が訪れます。凶暴化する性格、変わりゆく才能。過去の自分が失われ、別人に変化する。心を動かすのは脳かそれとも愛か。人間の根本的価値にせまる意欲作です

【詩集】天国と、とてつもない暇/最果タヒ_ひとは、誰かの救いになる必要なんてない【解釈】

詩人・最果タヒの第六詩集『天国と、とてつもない暇』の感想と解釈です。印象的な詩のフレーズの解説や今までの作風との違いについて、独自の意見をまとめました。『天国と、とてつもない暇』の立ち位置がよくわかる記事です。

【詩集】愛の縫い目はここ/最果タヒ_本当に優しい人は心にナイフを持っている【解釈】

詩集『愛の縫い目はここ』(最果タヒ)の感想と解釈です。最果タヒの「詩集三部作」の最終部となる『愛の縫い目はここ』は、彼女の優しさに触れられる詩集だと思います。最果タヒを理解する上で必読の作品となっています。

●【詩集】『死んでしまう系のぼくらに』(最果タヒ)_言葉は想像以上に自由で、不自由な人のためにある【解釈】

【詩集】『死んでしまう系のぼくらに』(最果タヒ)_言葉は想像以上に自由で、不自由な人のためにある【解釈】ー 詩人・最果タヒの第三詩集である『死んでしまう系の僕らに』の感想と解釈をお届けします。最果タヒに興味がある人は必見です。

★【詩集】『恋人たちはせーので光る』(最果タヒ)は生を死を愛をうたう【解釈】

詩人・最果タヒの第七詩集『恋人たちはせーので光る』を独自に解釈して、まとめました。ひとつひとつの詩は、とても洗練された言葉で紡がれており、最果タヒの詩集の中でも、読みやすいです。最果タヒの詩に興味がある人は、ぜひご覧ください。

★【詩集】『グッドモーニング』(最果タヒ)_10代に紡いだ攻撃性は永久に抉り続け【解釈】

『グッドモーニング』(最果タヒ/新潮文庫nex)の感想文です。グッドモーニングは、第13回 「中原中也賞」を女性最年少(当時21歳)で受賞した作品。非常に解釈が難しい詩集ですが、物語性に注目してまとめました。

『After GAFA 分散化する世界の未来地図』を読めば、ブロックチェーンがなぜ重要かわかる!

『After GAFA 分散化する世界の未来地図』(著:小林 弘人)は、GAFA以後の世界を予言する多角的な洞察に富んでいます。ブロックチェーンの重要性を説く本として、非常にわかりやすく、読んでいてワクワクする気持ちを味わえます。

『動画で稼ぐ仕事術 作ると使うの2つで変わる』(木村博史)_動画作成は始めたもの勝ち

『動画で稼ぐ仕事術 作ると使うの2つで変わる』(木村博史)の要点を5つにまとめました!・Youtubeの作り手市場は黎明期・きちんとメッセージを言語化しよう・定期的にコツコツと動画をあげる・動画を作ることは難しくない

『マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法』をゆるっと書評します

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【動画アリ】人生を変える『繋がりの法則』(藤本真衣)をゆるっと書評

「繋がりの法則」を動画で解説 「繋がりの法則」の要約 繋がりを作る6つの法則とは? 1.強い思いを持つ 強い思いを持つ人ほど将来のビジョンが明確で、誰と繋がるべきか理解しています。 また、強い思いを持つ人には、似たような思いを持つ人が集まってきます。 結果、いい繋がりを作ることができます。 2.自分のしたいことを勝手にやる 人間は誰しも自分のしたいことをしているときが一番、活きいきとしているものです。 しかし、あなたがやりたいことをやろうとすると必ず誰かが止めてきます。 しかもあなたを大切に思ってくれてい …

【ゆるっと書評/動画アリ】『緊張して話せるのは才能である』(永井千佳)

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