ファンタジー

■ 【書評】『時をめぐる少女』(天沢夏月)_あなたは未来・過去の自分に会いたいですか?

2017年6月15日

『時をめぐる少女』(天沢夏月/メディアワークス文庫)の読書感想文です。「時かけ」ならぬ「時めぐ」ですね。読みやすい文体で、サクサクと読み進むことができました。 あらすじと感想・考察(ネタバレなし)を書きます。

ーsponsoredー

『時をめぐる少女』のあらすじ

イチョウ並木をまっすぐ進むと時計の文字盤のような広場がある。通称「とけいじかけのプロムナード」と呼ばれるその場所には、ある噂がある。 それは、文字盤を時計周りに歩くと未来の自分に会え、反時計周りに歩くと過去の自分に会える、と言うものだ。9歳の葉子のもとにあらわれたのは、結婚をまじかに控えているという女性。 彼女の笑顔には、葉子と同じ、えくぼがあった。

『時をめぐる少女』の感想と考察(ネタバレなし)

「時をめぐる少女」は、葉子がそれぞれ、9歳、13歳、21歳、28歳の時を4つの章に分け、綴られています。 各章ごとに、葉子は様々な悩みを抱えています。 ただ、共通して言えることは、それぞれの悩みが、その時の葉子にとって、非常に切実であることです。

 人間、生きていると、誰しもが、昔の自分はなんでこんな些細なことで思い悩んでいたんだろうと考えることがあると思います。 それは、時間が流れるにつれて、視野が広がったり、経験が増えていくことで、そう思うようになるんだと思います。 しかし、普通は、じゃあ、過去の自分に対して、問題の解決策を教えてあげよう、ということはできないです。 当然ですね。 ですが、「時めぐ」の世界では、それが起こり得るのです。 また逆に、未来の自分に対して、どうしてそんなことで悩んでいるの? というパターンもあるわけです。

 とは言うものの、「時かけ」みたいに自由自在に、時間軸を行き来するということは、この作品では許されていません。 それは、一定の条件が満たされた時かつタイミングが良くないと、実現しないのです。 そこが、また、この作品の面白いところであると思います。

作中に「ぼうしさん」という年配の男性が登場するのですが、彼が葉子に語ったセリフで印象深いものがあります。

「・・・私が言いたいのは、時間なんてつかみどころのないものを、人の尺度で測ろうとすること自体無理なのではないか、ということだ。 時間は早く過ぎるときは早く過ぎているのかもしれないし、遅く過ぎているときは遅く過ぎているのかもしれない。 人によって、場所によって、時間の流れは違うのかもしれない—この場所みたいに」

この言葉を聞いていて、なんとなく「相対性理論」という言葉が頭に浮かびました笑 含蓄のあるセリフですよね。 ただ、これは、おそらく誰もが、経験上、頷くことができると思います。 楽しい時は早い、つまらん時は遅い、みたいな。 時間という概念は、絶対ではなくひどく曖昧なものなのかもしれませんね。 そう考えると、ちょっとした時間に関する奇跡が起きるのも、あり得るのかな?

みなさんは、過去の自分に会いたいですか?」「 未来の自分に会いたいですか?」 僕は、大学生の時の自分に会いたいです。 そして、自分が本当に何をやりたいかに関して、もっと真剣に考えるべきだよって言いたいです。 ほとんど、学生生活も就職活動も惰性でやって、全部どうでもいいやって気分でいたので。 うーん、でも、上から目線で説教臭いのは嫌ですね。 もうちょっと、大人の余裕を持って、優しく諭してあげたいですね(笑)

「時めぐ」は、いかにもタイムループものっぽいけれども、その本質的なところは葉子の成長に主眼が置かれてあり、「時間移動」というのは、あくまで作品を脚色するためっていうイメージです。 ですので、SF作品のような複雑性はないし、文体も平易で読みやすいので、気軽に読めて、ああ、いい話だったなと思える作品だったと思います。

ーsponsoredー

『時をめぐる少女』はこんな人におすすめ

  • タイムループ系のお話大好きという人
  • サクサクと読める面白い話を読みたい人
  • つかみどころのない不思議な話を読みたい人

あとがき:時をめぐる少女

『時をめぐる少女』(天沢夏月/メディアワークス文庫)の読書感想文でした。非常に読みやすい話でした。 ストーリーも面白く、楽しく読めたのですが、作品のメッセージ性のようなものは、少し弱いかなって気がします。 それでも、いい本だと思うので、未読の人はぜひ読んでみてください。

♦︎天沢 夏月(あまさわ なつき)
1990年生まれ、神奈川県在住。

—sponsored—

【Pick Up】

1

大学の図書館で働く天然系女子「麦本三歩」。職場の3人の先輩を「優しい先輩」「怖い先輩」「おかしい先輩」と脳内で呼んでいて、和気藹々と働いている。ぼけーっとしている三歩は、何も考えずに生きているようにみえる。しかし実際には、人並み以上に気持ちに対して繊細だったりする。そんな愛らしく憎めない三歩の、のほほんとした日常を大切に紡いだ作品。

Copyright© 積ん読と感想わ , 2020 All Rights Reserved.