


『青くて痛くて脆い』のあらすじ
あらすじ
『青くて痛くて脆い』の感想文
読みどころ
- 楓と秋好の突然のお別れにびっくり
- 姿を変えたモアイに怒りをぶつける
- 絶対的な正しさは存在しない

楓と秋好の突然のお別れにびっくり
と、講義でいきなり宣言しちゃう系女子、その名も秋好寿乃。
主人公の楓は、秋好のテンションにドン引きでした。
秋好が話しかけてきた時も、楓がいつも他人にそうしてきたように心の壁を作りながら、接していました。
秋好のような女子はきっとすぐに他の友達を作って、自分のことなんて忘れてしまう。
楓は、それが怖かったのかもしれません。
しかし秋好は、いつも楓のところにきて、一向に離れていく様子がありません。
そんな秋好と話しているうちに、楓は次第に心を許していきました。
住野よる作品の特徴は、登場人物の会話における絶妙なテンポ。
『青くて痛くて脆い』でも、楓と秋好の会話はくすっと笑えて、どこか甘酸っぱく、平和な日常を彩っていました。
読者がこんな日々がずっと続くんだろうな、と微笑ましく思う矢先、突然の楓と秋好のお別れ。
しかしこれは作品の深みを出すために、非常によく考えられているシナリオでした。
姿を変えたモアイに怒りをぶつける
モアイは設立当初、理想主義者の秋好により、高尚(?)な理念を掲げていたわけですが、次第に形骸化していき、就活生ご用達の団体になります。
僕(筆者)も学生時代に自己啓発系の学生団体に所属していたので、掲げる理想と現実の姿が乖離する様子は痛いほど伝わりました。
例えば、みんな学生時代に平和を唱えてアフリカとかにボランティアとかに行くのに、結局就職するのは、大手総合商社や外資系企業なんですよ。
「あ、やっぱり就活のためだったのかな?」みたいな。
秋好が掲げた理想とかけ離れて行くモアイへの楓の怒りに近い感情は、よく理解できます。
ただ友人を誘ってモアイをやっつけようとする方法が、少し間違ってましたね。
これは読み進めながらもたびたび疑問を持ちましたが、作品の本当のテーマを提示するための伏線になっていました。
絶対的な正しさは存在しない
この作品が伝えたかったことは、絶対的な「正しさ」は存在しないということではないでしょうか。
つまり、ある角度から見るとこれは丸なんだけど、角度を変えると三角に見えるよね、みたいなことです。
このテーマが中心にあって、それに気づかず過ちを犯してしまう若者の未熟と、成長の姿が前後で描かれています。
ただ、単純にそれを伝えるだけだと少し説教くさい話になりそうなんですが、そこは流石、作中にいろいろな工夫が施してあり、物語として読ませます。
すごく「切実」かつ「リアル」です。
泣ける話かどうかは微妙なところだと思うんですけど、僕は、ちょっとウルウルきました。
あらゆる年代にとって「感動」がある作品なんじゃないかな。
『青くて痛くて脆い』はこんな人におすすめ!



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あとがき:青くて痛くて脆い
『青くて痛くて脆い』(住野よる/KADOKAWA)の読書感想文でした。
読んでいてツラい気持ちになる時もありましたが、読後感は清々しかたです。
これからも『青くて痛くて脆い』のような作品を書いていってほしいです。

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