『ひとり日和』(青山七恵)の読書感想文です。第136回芥川賞受賞作になります。随分前に読んだ記憶がありますが、再読してみてより作品の魅力がわかりました。綺麗事じゃない人間の感情を正確に描写しています。
※ほぼネタバレ無し
『ひとり日和』(青山七恵)のあらすじ
『ひとり日和』(青山七恵)の書評/感想
「別れ」と「出会い」。
それが、この作品のテーマです。
知寿がお世話になる吟子さんは、これらの達人です。
七十一歳までに多くの「別れ」と「出会い」を経験し、ある種の悟りの境地にいるかの様に見えます。
彼女からしてみたら、知寿の恋愛などは、若気のいたりのようなもの。
しかし、それを冷めた目線でみるのではなく、優しく見守ってくれる、言葉を授けてくれる、そういった面は吟子さんの度量の深さを感じさせます。
知寿は思います、「いつまで別れを繰り返したら一人前になれるのか」。
進学も就職もせず宙ぶらりんな状態であっても、ひとりでちゃんとやりたいという気持ちは人一倍です。
この作品では、決して、知寿は優等生なキャラクターには描かれていません。
手癖が悪く、周りの人のどうでもいい小物をくすねて靴箱に保管する、という習慣も、知寿がまだまだ不完全な人間であるということを強調しています。
筆者も、知寿と同じように漠然と「一人前になりたい」と思うのですが、残念ながら、そうできていません。
まわりの人に支えてもらいながらなんとか生きている、ぎりぎり生きているといったところです。
この物語の最後では、知寿が成長していく場面が描かれています。
その描写があるおかげで、この作品はポジティブな文脈を持つことができています。
筆者にとって、それは少しまだ眩しすぎます。
知寿はすごいなあと思います。
筆者自身は、マイペースに頑張るだけです。
今はまだ「別れ」も「出会い」もしんどいです。
評価:『ひとり日和』はこんな人におすすめ!
評価



あとがき:『ひとり日和』(青山七恵)
今回は、青山七恵さんの作品である『ひとり日和』について記事を書きました。
この本を初めて読んだ時は、主人公の性格が悪すぎて、おばあちゃん可愛そう的なことを思った気がするのですが、今、読んでみると、知寿の気持ちや意地悪な態度をとってしまう理由も、なんとなく、理解できるような気がしました。
この小説自体はわりとほっこりできる作品だと思うので、読む人を選ばずおすすめできる作品です。
お時間があれば是非読んでみたらいかがでしょう?