モロケン

未経験からフリーライターとして独立、起業。日給500円から始めて今では1記事5万円も珍しくない。いつまでも純粋さを大切にしたい。

▲ 『飛びたがりのバタフライ』(櫻いいよ)_爽やかすぎる青春小説

父の暴力による支配、母の過干渉・・・家族という呪縛、それはまるで檻のよう。そんな窮屈な世界で息をひそめながら生きる高2の蓮。ある日、蓮のもとに現れた、転入生・観月もまた、壮絶な過去によって人生を狂わされていた。直感的に引き寄せられるふたり。だが、観月の過去をえぐる悪い噂が流れ始めると、周りの人間関係が加速度的に崩れ、ついにふたりは逃避行へ動き出す。その果てに自由への道はあるのか・・・。想定外のラストに、感極まって涙する!

●【書評】『神様のボート』(江國香織)_浮くことはないけど、馴染まない

昔、ママは、骨ごと溶けるような恋をし、その結果あたしが生まれた。”私の宝物は三つ。ピアノ。あのひと。そしてあなたよ草子”。必ず戻るといって消えて行ったパパを待ってママとあたしは引っ越しを繰り返す。”私はあのひとのいない場所にはなじむわけにいかないの””神様のボートにのってしまったから”。恋愛の静かな狂気に囚われた母葉子と、その傍らで成長していく娘草子の遥かな旅の物語。

雨の降る日は学校に行かない/相沢沙呼_物語を象徴するシンボルたち

保健室登校をしているナツとサエ。二人の平和な楽園は、サエが”自分のクラスに戻る”と言い出したことで、不意に終焉を迎える-(「ねぇ、卵の殻が付いている」)。学校生活に息苦しさを感じている女子中学生の憂鬱と、かすかな希望を描き出す6つの物語。現役の中高生たちへ、必ずしも輝かしい青春を送って来なかった大人たちへ。あなたは一人きりじゃない、そう心に寄り添う連作短編集

× 『何様ですか?』(枝松蛍)_最後に待っていたどんでん返し

中学時代に義父から性的暴行を受けた女子高生・平林美和は、義父に殴り殺された弟”ユウちゃん”を内面化し、その囁きに従って”ファイナルプラン”と名づけられた大量殺人計画を遂行しようとする。一方、倉持穂乃香は意識が高く社交的で、自らの日常や読んだ本の感想をブログに書き続けていた。そんな倉持を嘲笑しながら着々と計画を進める平林であったが、その先には思いがけない事態が。

限りなく透明に近いブルー/村上龍_白い起伏と黒い鳥

舞台は東京、基地の町、福生。ここにあるアパートの一室、通称ハウスで主人公リュウや複数の男女がクスリ、LSD、セックス、暴力、兵士との交流などに明け暮れ生活している。明日、何か変わったことがおこるわけでも、何かを探していたり、期待しているわけでもない。リュウは仲間達の行為を客観的に見続け、彼らはハウスを中心にただただ荒廃していく。そしていつの間にかハウスからは仲間達は去っていき、リュウの目にはいつか見た幻覚が鳥として見えた。

■ 【書評】『舞台』(西加奈子)_誰もが皆、人生という舞台で演技をしている

太宰治『人間失格』を愛する29歳の葉太。初めての海外、ガイドブックを丸暗記してニューヨーク旅行に臨むが、初日の盗難で無一文になる。間抜けと哀れまれることに耐えられずあくまで平然と振る舞おうとしたことで、旅は1日4ドルの極限生活に。命がけで「自分」を獲得してゆく青年の格闘が胸を打つ傑作長編

■【書評】『カラフル』(森絵都)_色鮮やかな人間中心の物語

生前の罪により輪廻のサイクルから外されたぼくの魂が天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。自殺を図った少年、真の体にホームステイし、自分の罪を思い出さなければならないのだ。真として過ごすうち、ぼくは人の欠点や美点が見えてくるようになる…。老若男女に読み継がれる不朽の名作。

勝手にふるえてろ/綿矢りさ_理想と現実の間で揺れる心

江藤良香、26歳。中学時代の同級生への片思い以外恋愛経験ナシ。おたく期が長かったせいで現実世界にうまく適応できないヨシカだったが、熱烈に愛してくる彼が出現!理想と現実のはざまで揺れ動くヨシカは時に悩み、時に暴走しながら現実の扉を開けてゆく。

落下する夕方/江國香織_圧倒的カリスマ性を持つ華子が抱えてた心の闇

梨果と8年同性していた健吾が突然、家を出た。それと入れ替わるように押しかけてきた健吾の新しい恋人・華子と暮らすはめになった梨果は、彼女の不思議な魅力に取りつかれていく。すると華子を追って健吾も梨果のもとへ来るようになり…。逃げることも、攻めることもできない奇妙な三角関係。そして愛しきることも、憎みきることもできない人たち…。永遠に続く日常を温かで切ない感性描いた、恋愛小説の新しい波