純文学

●【書評】芥川賞受賞作『乳と卵』(川上未映子)_天才はやはり天才だった

2017年3月29日


乳と卵 (文春文庫)

『乳と卵』(川上未映子)の読書感想文です。第138回芥川賞受賞作になります。自分の期待値を上回る作品でした。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。

ーsponsoredー

『乳と卵』(川上未映子)のあらすじ

娘の緑子を連れて大阪から上京してきた姉でホステスの巻子。巻子は豊胸手術を受けることに取り憑かれている。緑子は言葉を発することを拒否し、ノートに言葉を書き連ねる。夏の三日間に展開される哀切なドラマは、身体と言葉の狂おしい交錯としての表現を極める。日本文学の風景を一夜にして変えてしまった。

『乳と卵』(川上未映子)の感想と考察

『乳と卵』の感想と考察を書きます。ネタバレが嫌だよって人はコチラまで、進んでください。

 上京してきた巻子と緑子と主人公である私が東京で3日間過ごした様子を描いています。

 登場人物は主にこの3人が中心で、ちょうどいい人数だと思います。

 これ以上多すぎてもダメだし少なくてもダメ、その絶妙なバランスが程よいです。

 そして、その登場人物もキャラクターがしっかり定着していて、それぞれ魅力的です。

 ただ、この物語の語り手である主人公(わたし)は、首尾一貫して客観的な視点と語り口であり、川上未映子さんの面白い文体と相まって独特の雰囲気を演出しています。

 内容は、やはりタイトルにもある通り「乳と卵」が関係するテーマであり、具体的に言うと、前者は豊胸手術のことであり、後者は生理や生命の誕生、それから最後のシーンにおけるシンボル的な役割として使われています。

 
 僕はこの作品では喋ることのなかった緑子の視点が一番、自分に近い感覚なのかなあと思います。

 巻子に対して、なぜそこまで豊胸手術にこだわらなければならないのか、自分を生んだことが原因である口調に、傷ついている様子などはとても共感できます。

 そして、最後のシーンで繰り広げられるシーンは緑子の閉ざされていた感情が一気に噴出したように、溢れ出し、ちょっと泣きそうになります笑

 僕も最近ボディーピアスや人体改造には多少興味があり、スプリットタンなどにも憧れてしまうので、巻子が豊胸手術に没頭する気持ちもわからなくもないのですが。

 もっと周りを見て、周りというか緑子のことを見て、物事を進めていったほうがいいんじゃないかなあと感じました。

 
 最後に、僕はこの川上未映子さんの独特の文体について述べたいと思います。

 この、句読点、括弧、てにをはの使い方が極めて特殊な関西弁の口語体は、読む人によって、かなり感想が別れると思います。

 ただ、考えてみていただきたいのは、この文体が本質ではないこと、本質を演出するための手段であることを認識するのが良いと思います。

 幸いなことに、僕はこの文体が嫌いではない、どころかとても好きなので、楽しく作品を読むことができました。

ーsponsoredー

評価:『乳と卵』はこんな人におすすめ!

川上未映子の代表作を読みたい!

人間の生命について考えたい⋯。

独特の文体を味わいたい。

あとがき:『乳と卵』(川上未映子)

 今回は、川上未映子さんの作品で芥川賞受賞作である『乳と卵』という作品の感想を書きました。

 このブログでは、ちょっと議論を避けたのですが、この作品が取り扱っているテーマはとても壮大であり、読む人によってはものすごい衝撃作になる可能性を持っていると思います。

 特に、女性の方がどう思うかはとても興味深いです。

 話は難しいことを抜きにしても、とても面白いので、是非是非手に取って、読んでみてください。

川上 未映子(かわかみ みえこ)
1976年大阪府大阪市生まれ。
日本大学通信教育部文理学部哲学科在学中。

—sponsored—

【Pick Up】

1

大学の図書館で働く天然系女子「麦本三歩」。職場の3人の先輩を「優しい先輩」「怖い先輩」「おかしい先輩」と脳内で呼んでいて、和気藹々と働いている。ぼけーっとしている三歩は、何も考えずに生きているようにみえる。しかし実際には、人並み以上に気持ちに対して繊細だったりする。そんな愛らしく憎めない三歩の、のほほんとした日常を大切に紡いだ作品。

Copyright© 積ん読と感想わ , 2020 All Rights Reserved.