純文学

■ 【書評】『ドリーマーズ』(柴崎友香)_現実と夢想の境界が曖昧になる短編集

『ドリーマーズ』(柴崎友香/講談社文庫)の読書感想文です。柴崎友香の魅力がいっぱい詰まった短編集だと思いました。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。

『ドリーマーズ』のあらすじ

あらすじ

「現実」と「夢」がない交ぜになる世界を描いた連作短編集。「ハイポジション」、「クラップ・ユア・ハンズ!」、「夢見がち」、「束の間」、「寝ても覚めても」、「ドリーマーズ」の6編から成っています。
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『ドリーマーズ』の感想と考察(ややネタバレ)

現実と夢想の境界を曖昧にする

 日常こそが”変”だと主張する著者は、現実の不可思議さをこの作品群で描きました。それは、現実と夢(虚構)の境目を曖昧にする行為とも言えます。『ドリーマーズ』では、さらにもう一歩踏み込んで、「そもそも、両者を区別することはできるのか?」というところまで、 疑問符を投げかけているように思いました。

例えば、「クラップ・ユア・ハンズ!」では、部屋に昔住んでいたと思われる女性が、主人公と同居する様子が描かれています。注目すべきは、主人公がそのことを当たり前に受け入れているということです。ここで、読者は、そのスタンスに驚くかもしれませんが、その後の短編でも、繰り返し、そのような出来事が起こることを目の当たりにしていく中で、感覚は麻痺していき、現実と夢(虚構)の区別がわからなくなってきます。そして、次第に「両者を区別する必要はあるのか?」という思いにかられます。

これが筆者の狙いであり、メッセージでもあることは間違いないでしょう。

作品全体にただよう浮遊感

柴崎友香の文章のよくある特徴は、「描ききらない」ことだと思います。「夢見がち」では、幸太郎の幼少期に起こった不思議な現象を語るだけ語っておいて、結局、あれはなんだったのかということに関しては全く触れられていません。このように、解釈の余地を残すことは、最後まで結論を描ききるよりも、もっとミステリアスな印象を与えることができます。これが、作品に漂っている”浮遊感“の正体でしょう。

狐につままれたような読後感

 
ただでさえ、現実と夢(虚構)の区別がわからなくなっているところに、このような「浮遊感」が伝わることで、より一層、作品に対する不可思議な印象は増します。これらの集大成とも言える作品が表題の「ドリーマーズ」だと思います。

希恵は、「自分が死んだことに気づいていない父」を夢に見ますが、これが徐々に現実に浸透していく様子を読者は見ることができます。また、作品全体から「なぜ?」という文脈が徹底的に排除されていて、淡々と目の前の現象だけが通り過ぎていく感覚を味わうでしょう。

それぞれの短編は独立していますが、最後の結末を導くために不可欠な話だったように思えます。
非常に完成度が高い短編集だと思いました。

読後感は、狐につままれたような印象です(笑)
でも、これが柴崎友香の文章の魅力のひとつだと僕は思います。

『ドリーマーズ』はこんな人におすすめ

  • 微睡むような世界観を味わいたい人
  • ちょっとだけホラー要素がある作品を読みたい人
  • 柴崎友香の文体の特徴を感じたい人


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あとがき:ドリーマーズ

『ドリーマーズ』(柴崎友香/講談社文庫)の読書感想文でした。最初から最後までふわふわした気持ちで読んでいました(笑)未読の方は、ご一読ください。柴崎友香の描く世界観がよく表現されている短編集です。

まとめ
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柴崎友香のおすすめ作品をランキング形式で紹介しています。本選びに悩んでいる方はぜひ参考になさってください。

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