柴崎友香

■ 『ドリーマーズ』

投稿日:2017年7月2日 更新日:

はじめに

『ドリーマーズ』 柴崎友香 2012年8月 講談社文庫より. 柴崎さんの魅力がいっぱい詰まった短編集だなと思いました。 あらすじと感想を書きます。

ドリーマーズ

読書時間の目安

2時間34分

あらすじ

「現実」と「夢」がない交ぜになる世界を描いた連作短編集。

「ハイポジション」、「クラップ・ユア・ハンズ!」、「夢見がち」、「束の間」、「寝ても覚めても」、「ドリーマーズ」の6編から成っています。

感想

多少のネタバレあるかもです。未読の方はご注意を。

 日常こそが”“だと主張する著者は、現実の不可思議さをこの作品群で描きました。

 それは、現実と夢(虚構)の境目を曖昧にする行為とも言えます。

 それだけではなく、もう一歩踏み込んで、「そもそも、両者を区別することはできるのか?」というところまで、 疑問符を投げかけているように思いました。

 例えば、「クラップ・ユア・ハンズ!」では、部屋に昔住んでいたと思われる女性が、主人公と同居する様子が描かれています。

 注目すべきは、主人公がそのことを当たり前に受け入れているということです。

 ここで、読者は、そのスタンスに驚くかもしれませんが、その後の短編でも、繰り返し、そのような出来事が起こることを目の当たりにしていく中で、感覚は麻痺していき、現実と夢の区別がわからなくなってきます。

 そして、次第に「そもそも区別する必要はあるのか?」という思いにかられます。

 これが筆者の狙いであり、メッセージでもあることは間違いないでしょう。

 
 また、柴崎さんの作品の特徴でもあることは、「描ききらない」姿勢だと思います。

 「夢見がち」では、幸太郎の幼少期に起こった不思議な現象を語るだけ語っておいて、結局、あれはなんだったのかということに関しては全く触れられていません。

 このように、解釈の余地を残すことは、最後まで結論を描ききるよりも、もっとミステリアスな印象を与えることができます。

 これが、作品に漂っている”浮遊感“の正体でしょう。

 
 ただでさえ、現実と夢の区別がわからなくなっているところに、このような”浮遊感”が伝わることで、より一層、作品に対する不可思議な印象は増します。

 これらの集大成とも言える作品が表題の「ドリーマーズ」だと思います。

 希恵は、「自分が死んだことに気づいていない父」を夢に見ますが、これが徐々に現実に浸透していく様子を読者は見ることができます。

 また、作品全体から「なぜ?」という文脈が徹底的に排除されていて、淡々と目の前の現象だけが通り過ぎていく感覚を味わうでしょう。

 これが、まさに、現実と夢の境界が曖昧になることであり、同時に、作品の”浮遊感”も見てとることができます

 それぞれの短編は独立していますが、どの話も、最後の結論を導くために不可欠だったように思えます。
 
 そのような意味で、非常に完成度が高い短編集だと思いました。

 
 ちなみに、読後感は、狐につままれたような印象です笑

 でも、この感覚がきっと、僕が柴崎さんの作品を好きになる理由なんだと思います^^

こんな方におすすめ

  • 微睡むような世界観を味わいたい人
  • ちょっとだけホラー要素がある作品を読みたい人
  • 柴崎さんの文体の特徴を感じたい人

あとがき

 最初から最後まで、ほんわかふわふわした気持ちで読んでいました。

 やっぱり、柴崎さんの作品は、ユニークです。

 評価は、ちょっと短編のわりに登場人物が多すぎて、わかりにくかったので、■(3 point)とさせていただきました。

 作品の面白さ自体は、評価高いです。

 朝から、面白い作品を読めて、良かったです。

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