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● 【書評】『初恋は坂道の先へ』(藤石波矢)の疾走感あふれる未来への希望

モロケン

未経験からフリーライターとして独立、起業。日給500円から始めて今では1記事5万円も珍しくない。いつまでも純粋さを大切にしたい。

第1回ダヴィンチ「本の物語」大賞受賞作『初恋は坂道の先へ』(藤石波矢)の読書感想文です。「青春小説×ミステリー」という言葉がぴったり。 ありがちなお話かなと、読み進んでいくと、その展開に「あっ」と驚きます。 あらすじと感想をまとめます。

『初恋は坂道の先へ』のあらすじ

小学校教師・研介(25歳)の恋人・品子(24歳)が、ある日一冊の本が届いたことを境に失踪する。 その本の送り主は、彼女が以前話していた「忘れられない恋人相手」なのか。 中学生のしなこは、近所の小説家の家の蔵で不登校の少年・海人と出会う。 はじめは、その横柄な態度に狼狽していたが、次第に打ち解けていく。 この物語は、 研介と中学生のしなこ、2人の視点から語られる。「初恋」をテーマに巡る煌びやかなストーリーに待っている驚きの結末とは。

『初恋は坂道の先へ』の書評と感想(ネタバレあり)

「初恋は坂道の先へ」の最大の魅力は、まさに「青春小説×ミステリー」要素です。 青春小説の甘酸っぱい「初恋」の話から、立て続けに判明していく小さな驚きの数々、そのバランスが絶妙で、本を捲っていくと同時に、「なるほど」と思わずニヤニヤしてしまう、そんなお話でした。 小説を読み慣れているいる人は、「品子」と「しなこ」の呼び方の違いから、作品の最大のトリックにいち早く気づいてしまうと思います。 恥ずかしながら、僕は全く気づきませんでした(笑) だから、それがわかった時、素直に感心して、良くできた話だなあと呑気に思いました。

 作品の終盤で判明する通り、品子の「運命の相手」とは研介のことだったこともいい味を出しています。 普通、そんな運命の出会いがあったら、真っ先に相手に告げてしまうと思うんですが、品子は素晴らしいことにそれを自分の心に秘めたまま、研介と付き合いを続けていたんですね。 その品子の行動の背後にはどのような感情が潜んでいたのでしょう。 きっと、品子は研介がそれに気付いてくれるのをずっと期待していたんでしょう。 自分から喋ってしまったら、その素敵な出来事が「運命」ではなくなってしまう、陳腐化してしまう、そういう気持ちだったのではないでしょうか。 その考え方は、さすが過去に小説を書いていただけのことはあります。 感性がロマンチックなんでしょうね。

 読後感の良さも高評価につながっています。 タイトルの「初恋は坂道の先へ」という言葉が表現している通り、この作品は未来への予感を感じさせる終わり方をしているんですね。 研介の同僚・蓮見と江嶋との関係、しなこと海人、碧との関係、日向先生と小説、そして勿論、研介と品子、すべてが「坂道の先へ」(未来)と向かっていく、その疾走感が僕はとても気に入りました。 ポジティブな作品を読むと、自然に人と共有したくなりますし、もっと作者さんの作品を読んでみたいという気持ちになります。 僕がブログを書くのも、そういう作品に出会って、それを広めていきたい、そういう感情に基づいているんだなと、再認識しました。 そのような意味でも、この作品を読んでよかったと思いました。

あとがき

『初恋は坂道の先へ』(藤石波矢)の読書感想文でした。未来への希望を感じさせる文章から、とても前向きな気持ちになれました。自分の将来についても考えてみたくなるような、良い作品でした。 

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