


『グッドモーニング』の構成と解釈
グッドモーニング構成
good morning
『グッドモーニング』は、”yoake mae”と題された5編があって、最後に”good morning”という編があります。
1つ1つの編にはいくつかの詩があって、ページが進むにつれて、物語のようにストーリー性があるように思います。

yoake mae 1
yoake mae 1
- 0
- 夏のくだもの
- 足の裏
- 会話切断ノート
もう
ずっと同じ
音を
きいている
もう
ずっと同じ
音を
引用足の裏 p19より
“yokak mae 1″からは、自分の内面から溢れ出てくるモノを抑えきれず、人の目に触れることを恐れながら自閉的になる症候がみてとれます。
最果タヒは自分が他人と違う感性(才能)を持っていることに、早い段階から気付いており、それが社会的にみてよくないことであると意識して、自分の内側に閉じ込めながら生きてきたのではないかと思いました。
yoake mae 2
yoake mae 2
- 故郷にて死にかける女子
- 苦行
- 友達
- 術後
- 空走距離
“yoake mae 2″は、前編の自閉性から一歩外に踏み出して、作品がよちよち歩きをしている印象を受けました。
の い い たいことなどちっとも わかっ
ていない。きみたち わ 、 +++ しん
でいくから、 わかんなく ても い い か
もしれない。きみたち わ、 とてもきれ
い。
引用苦行 p29より
“yoake mae 2″は、言葉が拙いです。思考もまだ上手くできない様子です。
まさに、最果タヒが表現者として、初期の段階にいると示してます。
“yoake mae 1″に出てきた「くま」は、”yoake mae 2″では「こぐま」と、表現されています。
これは、自分が成長しているということではないでしょうか。
yoake mae 3
yoake mae 3
- 小牛と朝を
- 見エないという事
- 死ぬ間際にいう言葉がそれであればいいのに。
- 非妊
- 尋常
引用見エないという事 p54より
“yoake mae 3″では、最果タヒの才能への評価の高さ(一部の人だったとしても)に戸惑いを感じている印象です。
今までは自分の世界で完結していた思考が外に出て、それが評価されていくというのは、彼女にとっては嬉しいとともに、混乱の原因になったのではないでしょうか。
しかし、詩人としての成長が感じ取れる1編です。
yoake mae 4
yoake mae 4
- 暴走車を追いすぎて、
- 博愛主義者
- 死なない
妊娠して、
祝ってください
祝ってください窓からでもいいから開けて、こちらを、
みてください、妊娠したんですよ、わたしは妊娠したんですあなたたちの、あなたたちの
かぞくを
う、
うむんですよ。
引用死なない p76
“yoake mae 4″では、他人から自分の作品が評価されるということを飲み込んだ大人になり、彼らを喜ばすために良い作品を作ろうと考える様子がみてとれます。
そして、最果タヒの中でも何らかのブレイクスルーがあり、それに対して愛着を持つ気持ちが描かれています。
かぞく、と表現しています。
yoake mae 5
yoake mae 5
- 最弱
が
曇ることもない
うつくしい晴天 そこで
鳥が飛んだよ
とびこめ
穴を掘って
君の為に私は言うだろう
とんでもない
美しい
空だよ
引用最弱 p82より
“yoake mae 5″は、1つの詩だけで構成されています。
詩の中で使われている言葉は、支離滅裂ではなくきちんとしています。
最果タヒが何か大きなものを葛藤の上、悟っているように思いました。
ここから最後の1編である”good morning”につながっていきます。
good morning
good morning
- 再会しましょう
- きみを呪う
- 世界
叫んでいる。(ああ)
(うつくしい世界)
引用世界 p99より
“good mornig”では、最果タヒの自分の作品に対する愛と世の中に対して作品で影響を与えようという表現者の覚悟を感じました。
作品を作り上げるのは孤独でつらいけれども、みんながそうやって生きていく世界を最果タヒは「うつくしい世界」と形容したのでした。
評価:『グッドモーニング』はこんな人におすすめ!
評価



あとがき:グッドモーニング



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