純文学

銃/中村文則_所有されているのは自分だと気づいた時にはもう遅い

『銃』(中村文則/河出文庫)の読書感想文です。中村文則のデビュー作にて「新潮新人賞」受賞作品。「銃」に魅せられた青年のお話。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。

『銃』のあらすじ

あらすじ

大学に通う主人公・西川は、雨が降りしきる河原にて男が倒れているのを見つける。男の傍には黒い「銃」。西川は「銃」がはなつ魅力に取り憑かれたように持ち去る。その日から西川の生活は「銃」を中心にまわり始める。「銃」が西川にもたらすのは高揚か恐怖か。無意識の錯綜を緻密に描いた、奇才・中村文則の衝撃のデビュー作。
【スポンサーリンク】

『銃』の感想と考察(ややネタバレ)

『銃』の感想と考察を書きます。ネタバレが嫌だよって人はコチラまで、進んでください。

予想や想像に重点を置けば、深く何かを考え、自分に照らし合わせて検証すれば、何もできなくなる。私はそれを思い、少し笑った。

西川の「銃」への執着はフェティシズムを超えて

西川は、両親に見捨てられ施設と里親のもとで育ちました。中村文則の作品によくみられる設定です。日々の生活や人との関わりにおいて、西川にとくに問題はありません。少なくとも表面上は。しかし、彼の心がすごく冷めていることは、作品を読んだなら誰もが気づくでしょう。

私には、これから起こるであろう近くの未来を意外なものにしたいと思う、そういった癖のようなものがあった。

しかし、彼の「銃」に対する執着は、本物です。世の中には、小さな物体の崇拝を意味するフェティシズムという宗教学の言葉があります。しかし筆者は、西川の「銃」に対する想いは、崇拝というよりも「」であるように思います。作品中にも、自分の中に対する思いが一方向的であることに、西川が悲しむ描写があります。このような視点は、中村文則の才能だと思います。

銃により侵食されていく西川の意識

西川は、「銃」を所有していると思ってましたが、所有されているのは自分のほうでした。銃を磨くだけで満足していた頃から、銃を持ち歩くようになり、やがて可哀想な黒猫に発砲し、あのような結末に至りました。西川を疑う刑事が予想していたように、一連の流れは「銃」に出逢ってしまった時から決まっていた運命のようです。

「死」を間近に見てわかる生のぬくもり

私が感じたものは、自分の存在を揺るがすような、密度の濃い、恐怖だった。その先には、私の体よりも圧倒的な大きさをもつ、限りの見えない、黒く、深い空間が広がっていくように感じた。私はその中に、潰れるような孤独を感じた。

僕も自殺未遂を経験しているので、「死」が本当に近くまで来た時の絶望的な孤独がわかります。それ以来、僕は自殺することが叶わないと悟りました。西川は、死を眼前にして初めて、自分をとりまく小さな生活の断片のぬくもりを知ったのでしょう。だからこそ彼は、銃を捨てる決意をしたのです。しかしあの結末は⋯⋯やりきれませんね。

『銃』はこんな人におすすめ!

モロケン
中村文則の「原点」を知りたい!

「銃」を手に入れた男の末路に興味がある⋯。
文学青年

サブカル
今までの小説とは違う独特の世界観に触れたい。


⇒おすすめ作品ランキングはこちら

あとがき:銃

『銃』(中村文則/河出文庫)の読書感想文でした。

「銃」をテーマにここまで濃密な描写ができる中村文則の才能に驚愕しました。デビュー作とは思えないクオリティーです。

映画化もされましたので、そちらも興味のある方はぜひ。

映画『銃(2018)』を見るなら

『U-NEXT』(1ヶ月無料キャンペーン中)

モロケン
中村文則のランキング記事もよろしくお願いします〜!

こちらもCHECK

中村文則のおすすめ小説ランキング

中村文則の小説作品は20冊を超えているので、「どの書籍から読めばいいかわからない⋯」という人も多いでしょう。本記事では各作品の特徴と評価を紹介します。

続きを見る

【スポンサーリンク】
\この記事はいかがでしたか?/

© 2020 積ん読と感想わ