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▲【書評】『変身』(東野圭吾)が問いかける心の所在と自我の喪失による死

『変身』(東野圭吾)の読書感想文です。

「心を動かすのは、脳か愛か?」

ちょうど僕が生まれた1991年に出版された古い本です。

ただ内容は今も新鮮で、ぐいぐい引き込まれました。

※ほぼネタバレ無し

『変身』(東野圭吾)のあらすじ

 世界初の脳移植を施され一命を取り留めた青年、成瀬純一。

 恋人・葉村恵と平穏な暮らしを取り戻したように思えた彼に異変が訪れます。

 凶暴化する性格、変わりゆく才能。

 過去の自分が失われ、別人に変化する。

 心を動かすのは脳かそれとも愛か。

 人間の根本的価値にせまる意欲作です。

『変身』(東野圭吾)の書評/感想

 はじめから終わりまで息をつく暇もなく読みきりました!

純一が変身していく描写が見事

 ストーリーが非常に良く出来ていると思います。

 扱うテーマも「脳移植による人格の変化」と、とても興味深いもので、好奇心をそそります。

 「変身」というタイトルは、こういう意味だったんですね。

 別に朝起きたら毒虫になっているわけではなかったと(笑)

 都合上、純一がどのように変化していくかを描写することが、とても重要になりますよね。

 その点、彼の凶暴性が徐々に増していく描写は、非常に鬼気迫るものがあり、読んでてハラハラしました。

 また、才能の変化、絵が描けなくなり、音感が良くなっていく。

 それも、彼の人格の変化をはかる指標として有効だったと思います。

 

自我を失えば「死」といえるのか?

 
 自分の心が他人の脳に支配されてしまった時、それは生きていると言えるのでしょうか?

 きっと生物学上は、生きていても、意識として、自我がないのであれば、死んでいるとも言えます。

 この辺りは恐らく相当デリケートな部分で、多くの議論がされているでしょう。

 僕の意見は、自我がなくなったら、それはもう死んでいると考えていいのでは?と思います。

 自我は心とほぼイコールで、自分を形成する必須項目であると思うからです。

 このあたり、皆さんはどう思いますか?

あとがき:『変身』(東野圭吾)

 今回、感想を書いた作品は東野圭吾さんの『変身』でした。

 読書好きなわりには東野圭吾さんの作品をあまり読んだことないので、これから読んでいきたいと思います。

 ですが数が多いので⋯⋯随時オススメ募集中です。

◆東野 圭吾(ひがしの けいご)
1958年大阪府大阪市生野区生まれ。
大阪府立大学工学部電気工学科卒業。
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