角田光代

● 『対岸の彼女』

投稿日:2017年6月9日 更新日:

はじめに

 第132回直木賞受賞作。 角田光代さんの本を読むのは、初めてかもしれないです。 にわかですいません。 「多様化した現代を生きる女性の、友情と亀裂を描く傑作長編」という言葉がピッタリです。 あらすじと感想(ネタバレ)をまとめます。

対岸の彼女

読書時間の目安

3時間42分(334ページ)

あらすじ

  専業主婦・小夜子の娘・あかりは、引っ込み思案であった。 公園をいくつまわっても友達のできないあかりを不憫に思い、これなら自分が働きに出て、彼女を保育園にいれればよいのでは? と思い、面接を受けることに。 そして、ベンチャー企業の社長・葵と出会い、内定をもらう。 本作は、小夜子の視点(現在)と高校生・葵(過去)の視点が交互に入れ替わり展開される。 小夜子は、葵の影響を受けて変化する。 葵(過去)は、同級生・ナナコの影響を受けて、変化する。 彼女らの友情の結末とは?

感想

 この作品の根っことなるテーマはやはり「女の友情」です。 女性同士の付き合いが、とてもデリケートだということは、実際に経験したわけではないですが、人から聞いたり、本を読んだりして、知識としては持っています。 まあ、ぶっちゃけ、めんどくさそうだな、と思っています。 結婚するか、しないか。 子供がいるか、いないか。 大人だとこの辺りで、価値観の違いや派閥が生まれるんでしょうね。 学生の時はさらに細かいのかな?

 葵(現在)の性格は、葵(過去)の性格と大きく異なっています。前者は、明朗で快活な性格、後者は、暗く大人しい性格。 そういった意味で、葵(過去)は小夜子の性格と非常に似ています。 では、葵(過去)はどうして、現在のような性格になったのでしょうか? それはナナコの影響です。 中学時代にいじめにあい、高校でびくびくしている葵は、自由気ままな性格のナナコが絶対将来ハブられると予測して、学校では話さず、放課後だけ、一緒に遊んでいました。 これ、なかなか、性格悪いですよね(苦笑) 葵もそんな自分の性格に嫌悪感を感じています。 一方、ナナコは「自分に大切なものはここにはないから」と言い、飄々と立ち回ります。 まあ、結局ハブられるんですが…orz

 仲良しな葵とナナコは夏休みに泊まり込みのバイトにいきます。 そこで、さらに親交を深めた二人ですが、最後帰る時にナナコからまさかの「家帰りたくない」発言。 ナナコの天真爛漫な態度は、環境が恵まれていたからそうなったのだろうと葵は推測していたのですが、実際、ナナコの家にいくとひどいありさまでした。 狭いし、汚いしで。 家族関係もきっと悪かったのでしょう。 だからこそ、この「帰りたくない」発言を葵は真剣に受け止めて、「じゃあ、帰るのやめよ?」と言い、ラブホに泊まったりディスコで奢ったりしてもらいながら逃避行していたのですが、最終的に、飛び降り自殺します。 でも、二人とも軽傷でした。 病院で気がついた葵はすぐに、「ナナコどこ」状態になりますが、その二人の行動が意外とセンセーショナルな反響を受けていたようで、大人は二人を会わせてくれません。 でも後日、父親がこっそりナナコを連れてきました。 友情を確かめ合い、二人は別れます。 しかし、再会することはありませんでした。

 ナナコがいなくなってからは、彼女の意思を引き継いだように葵も「こわいものなし」になりました。 学校にも普通に通いました。 でも、大学に入ってから、自分は人と深く関わることを避けていると気づきます。 そして彼女はある日、海外に旅に出ます。 そこで起こった出来事がちょっと重要なんです。 話としては、ラオスで騙されて金をとられましたってだけなんですけど。 その時、初めて気づくのです。 自分は親切を所与のものとして捉えていたと。 しかし、葛藤の末、葵は決断します。 人を信じよう、人の優しさを信じようと。 これが、現在の葵の人格に大きく影響を与えました。

 話を小夜子に戻します。 小夜子も葵(現在)による影響を大きく受けました。 今までは、孤独な専業主婦、姑の嫌味に悩み、旦那の家事に対する非協力的な態度にイライラを感じている、まあ、普通の主婦でした。 それが、葵と出会って大きく変わったのです。 同年代の同じ大学出身ということで、社長と部下という関係を超えて二人は仲良くなっていました。 仕事のほうでも、葵が始めようと言った掃除代行サービスに一生懸命に取り組み、少しずつ結果も出てきて、やりがいを感じていました。 しかし次第に、葵に対して、その自由っぷりに付いていけなくなり、他の社員同様、会社を辞めます。

仕事を辞めた後、小夜子は自問します。これが正しかったのか? 胸のモヤモヤはとれません。 そんな中、いつか葵が言っていた「ファミリーサポート制度」に申し込みます。 以前は、人と関わるのが煩わしいと思っていたサービスも実際にやってみると、簡単で当たり前なことでした。 かつての自分が避けていた人との関わり。 それは、自分が他人を信用していなかったから? 小夜子は決意します。 他人を信じてみようと。 そして、葵の事務所(自宅?)に押しかけた小夜子は「もう一度働かせてください」と訴えました。 葵のことを信じてみようと思ったのです。

 対岸の彼女というタイトルは、正反対な性格であった小夜子と葵(現在)、葵(過去)とナナコのことを指していると当然思いますよね。 でも、僕はこの話を読んでいて、これは友情の話でもあったけど、成長の話でもあったなと思ったのです。 つまり、対岸の彼女というタイトルは、自分(成長前)と自分(成長後)という風にとることもできるんじゃないかと思いました。 小夜子も葵も、人として、成長していく姿がきちんと描写されています。 そういった視点からも、この作品を読んでみるとよいのではないでしょうか。

こんな方におすすめ

  • 女性で人間関係に煩わしさを感じている人
  • 結婚、子育てに関心がある人
  • 友情あふれる物語を読みたい人

あとがき

 「対岸の彼女」は、やはり、女性向けだなと思いました。 僕が読んでても面白いは面白いんですけど、ディティールのところでいまいち共感できなかったというか、そんな感じがありました。 逆に、女性だとけっこうハマるかもしれないです。 女性の方はぜひに^^

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