『わたくし率 イン 歯ー、または世界』(川上未映子)の読書感想文です。
ちょっと前に読んだ「乳と卵」という作品が非常に面白かったことと、川上未映子の文体にすっかり魅了されてしまったので、次の作品をすぐ読みたいと思い、芥川賞候補にもなった本書を読もうと考えました。
※ほぼネタバレなし
『わたくし率 イン 歯ー、または世界』(川上未映子)のあらすじ
『わたくし率 イン 歯ー、または世界』(川上未映子)の書評/感想
本著の奥歯に対する執着心はものすごい力強さを持っていると思います。
内容は、「脳ではなく、奥歯で考える」と不可思議であるにもかかわらず、著者の文体と流れるような文の連なりで、それらは切迫感をもって読者のもとに伝わります。
「私とは何か?」という哲学的問いかけに対して、筆者はことごとくユニークな論説を持って、それを解き明かして行きます。
それらは見ていて、とても気持ちがいいです。
最後の展開は怒涛のようなやりとりで高密度でした。
思えば、筆者は「私とは何か?」という問いに対して、本著のように、真摯に向き合ったことはないなあと思いました。
「私ってなんだろう?」
「僕ってなんだろう?」
そう考えた時に筆者は、なんだろう?と考えているその僕が私ではないのかという言葉遊び的なことも言えるけど、もっと本質的に考えたほうがいいのではないだろうかと思いました。
本著を手に取る前はそんなことを考えるという視点すらなかったです。
そういう気持ちになったというだけで、本著を読んだ価値はありました。誰がなんて言おうと、僕はこの本から影響をうけました。
それは、例えば、作品がどんなに批判されようと、貶されようと、決して変わらないのです。
評価:『わたくし率 イン 歯ー、または世界』はこんな人におすすめ!
評価



あとがき:『わたくし率 イン 歯ー、または世界』
ここまで川上未映子の『わたくし率 イン 歯ー、または世界』について、感想を書きました。
その独自の文体だけではなくストーリーやテーマも非常に面白いので、僕はこの本を万人が受け入れてくれるといいと思います。
amazonのレビューとかを見ていると、けっこう辛口なコメントも多いけれども、そんな風に思われるほど、変な本かなあ?と思います。
著者が考察するにあたりとったアプローチのほとんどは成功していると思うのだけども。
というわけなので、皆さんにはこのちょっと変わったタイトルの本を読んでみることをおすすめします。
きっと新しい視点を持つことができると思います。
この本には、ページ数は少ないけれども、それだけのパワーがあると思うので。ぜひ。