


『恋人たちはせーので光る』の解釈
『恋人たちはせーので光る』というタイトルだけを見ると、「恋愛に関する詩集かな?」と思うかもしれません。
しかし内容を読むとわかるように、書かれていることは恋愛だけに限らず、さまざまなテーマでうたわれています。
ここでは、モロタが気になった詩を中心に考えて、最果タヒが伝えたかったことを次の3つに解釈します。
モロタの解釈
- ひとりひとりの生も愛も死も違う物語があると肯定
- 幼い頃の心のナイフは大人になっても大切な一部
- 人生なんて恋愛なんて、気づいてください悟りゲー

ひとりひとりの生も愛も死も違う物語があると肯定
引用恋人たち p9より
引用森 p16より
引用した詩を見るとわかるように、生や愛や死というものは、人の手の届かない概念として確立してしまっています。
すると、生や愛や死はどんどん遠くなってしまいます。
遠くなってしまうので、だんだん見えなくなるし、判別がつかなくなります。
だから、生や愛や死からひとりひとりの物語が失われ、汎化します。
最果タヒは、生や愛や死は、実はとても個人的なものだと思い出させようとしてくれています。
明日から中東で死んだ兵士に弔いの気持ちが生まれたら、最果タヒのメッセージは僕に届いたのでしょう。
幼い頃の心のナイフは大人になっても大切な一部
最果タヒは、幼い頃の攻撃性のようなものをとても大切にする詩人です。
『恋人たちはせーので光る』では、次の5つの詩に幼い頃の攻撃性を弔う気持ちがあらわれています。
PickUp
- 果物ナイフの詩
- あさやけの詩
- 8月
- 日傘の詩
- 最終系
引用8月 p27より
引用日傘の詩 p31より
引用最終系 p58より
僕も、心の暗い部分に、幼い頃に置いてきた攻撃性があることを自覚しています。
だから僕は、穏やかな静寂を愛する反面、歪んだ音を奏でるロックの轟音が大好きです。
この感覚に共感できるかは、やや個人差があるように思います。
ただ、僕のような人にとって最果タヒが内にある攻撃性を弔う気持ちを代弁してくれると、すごく嬉しい気持ちになるのです。
彼女の詩集の中で幼い頃の攻撃性が顕著に描かれたものは、十代の頃に書いた詩が載っている、デビュー作の『グッドモーニング』です。
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★【詩集】『グッドモーニング』(最果タヒ)_10代に紡いだ攻撃性は永久に抉り続け【解釈】
『グッドモーニング』(最果タヒ/新潮文庫nex)の感想文です。グッドモーニングは、第13回 「中原中也賞」を女性最年少(当時21歳)で受賞した作品。非常に解釈が難しい詩集ですが、物語性に注目してまとめました。
もしよかったら、こちらも読んでみてください。
人生なんて恋愛なんて、気づいてください悟りゲー
引用関節の詩 p41より
お金をたくさん使って命をすり減らして傷ついて、
何にも得られなくっていいよって、揺れているススキのような友達が、
すてきにみえて多分ぼくはもうだめ。人としての理性を見失っている。
そこから、青春がスタートです。
発射した銃弾、こめかみにたどり着くまで70年。
恋愛しましょ。
引用踏切の詩 p73より
ここでうたわれている「悟り」がすごくよくわかります。
要するに、人生や恋愛に意味を求めてもしょうがないんです。
音楽がなったら、むすっとしているより、ダンスした方がずっと楽しいんです。
そう考えると、気が楽になりませんか?
『恋人たちはせーので光る』はこんな人におすすめ!



あとがき:恋人たちはせーので光る



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