詩歌

★【詩集】『恋人たちはせーので光る』(最果タヒ)は生を死を愛をうたう【解釈】

モロケン

未経験からフリーライターとして独立、起業。日給500円から始めて今では1記事5万円も珍しくない。いつまでも純粋さを大切にしたい。

モロケン
詩人・最果タヒの第七詩集『恋人たちはせーので光る』について語るよ!

ブックデザインがすごくお洒落で、詩集を超えたクリエイティブを感じた。
サブカル

モロケン
詩は、デザインも作品の一部だからね〜。じゃあ、記事の内容をみていこう!

『恋人たちはせーので光る』の解釈

恋人たちはせーので光る』というタイトルだけを見ると、「恋愛に関する詩集かな?」と思うかもしれません。

しかし内容を読むとわかるように、書かれていることは恋愛だけに限らず、さまざまなテーマでうたわれています。

ここでは、モロタが気になった詩を中心に考えて、最果タヒが伝えたかったことを次の3つに解釈します。

モロタの解釈

  • ひとりひとりの生も愛も死も違う物語があると肯定
  • 幼い頃の心のナイフは大人になっても大切な一部
  • 人生なんて恋愛なんて、気づいてください悟りゲー
モロケン
具体的に、3つの解釈を『恋人たちはせーので光る』の中の詩を引用しながら、解説します

ひとりひとりの生も愛も死も違う物語があると肯定

愛ということばが生まれてから、それらのまぶしさは信仰の対象となり、彼らは余計に孤独となった。本当はただ、顔が消えただけだ、愛し合うことで、誰でもない人間となる瞬間が生じたというだけ。

引用恋人たち p9より

いつだってどこかで、だれかがしんじゃっているのが日常だ、それがないとたぶん、時間すら進まないんだろう。しぬたびに、時計が動いている。ぼくの期待している明日が来る。そしてまたどこかでだれかがしんじゃうんだろう。

引用森 p16より

引用した詩を見るとわかるように、生や愛や死というものは、人の手の届かない概念として確立してしまっています。

すると、生や愛や死はどんどん遠くなってしまいます。

遠くなってしまうので、だんだん見えなくなるし、判別がつかなくなります。

だから、生や愛や死からひとりひとりの物語が失われ、汎化します。

最果タヒは、生や愛や死は、実はとても個人的なものだと思い出させようとしてくれています。

明日から中東で死んだ兵士に弔いの気持ちが生まれたら、最果タヒのメッセージは僕に届いたのでしょう。

幼い頃の心のナイフは大人になっても大切な一部

最果タヒは、幼い頃の攻撃性のようなものをとても大切にする詩人です。

『恋人たちはせーので光る』では、次の5つの詩に幼い頃の攻撃性を弔う気持ちがあらわれています。

PickUp

  • 果物ナイフの詩
  • あさやけの詩
  • 8月
  • 日傘の詩
  • 最終系
10代のころ、深夜の車道に寝転がって星を見つけて叫んだせいで、まだ私の1%が車道に転がったままでいる。大人って、記憶喪失にならんとなれんのな。

引用8月 p27より

大人になってから、殺したいと思うことがなくなったけど、たぶん、すこしずつ殺す方法を、覚えたからだと思います。

引用日傘の詩 p31より

全員、殺すつもりで生まれてきたし、だから誰にもやさしくしなかった。そのころの、生まれたばかりの私がいちばんきっとかわいかった。

引用最終系 p58より

僕も、心の暗い部分に、幼い頃に置いてきた攻撃性があることを自覚しています。

だから僕は、穏やかな静寂を愛する反面、歪んだ音を奏でるロックの轟音が大好きです。

この感覚に共感できるかは、やや個人差があるように思います。

ただ、僕のような人にとって最果タヒが内にある攻撃性を弔う気持ちを代弁してくれると、すごく嬉しい気持ちになるのです。

彼女の詩集の中で幼い頃の攻撃性が顕著に描かれたものは、十代の頃に書いた詩が載っている、デビュー作の『グッドモーニング』です。

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もしよかったら、こちらも読んでみてください。

人生なんて恋愛なんて、気づいてください悟りゲー

カジュアルな絶望が流行っている昨今ですが、ぼくはときどきなんにもまだ塗られていない塗り絵のように信号待ちをして、ふと、落とし穴に気づいたら落ちていたみたいに、たのしくなるんです。

引用関節の詩 p41より

何にも得られなくていいよ、
お金をたくさん使って命をすり減らして傷ついて、
何にも得られなくっていいよって、揺れているススキのような友達が、
すてきにみえて多分ぼくはもうだめ。人としての理性を見失っている。
そこから、青春がスタートです。
発射した銃弾、こめかみにたどり着くまで70年。
恋愛しましょ。

引用踏切の詩 p73より

ここでうたわれている「悟り」がすごくよくわかります。

要するに、人生や恋愛に意味を求めてもしょうがないんです。

音楽がなったら、むすっとしているより、ダンスした方がずっと楽しいんです。

そう考えると、気が楽になりませんか?

『恋人たちはせーので光る』はこんな人におすすめ!

パリピ
最果タヒの詩集の中でも読みやすいヤツないかな〜?

ポップでカジュアルに楽しめる詩集を読んでみたい!
サブカル

文学青年
記事に書かれていたこと、すごく共感する部分が多い。


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あとがき:恋人たちはせーので光る

モロケン
『恋人たちはせーので光る』の解釈をお届けしました!どうだったかな?

うん、なんとなくわかった気がする。ここに載ってない詩も読んでみたいな〜
パリピ

モロケン
それは良かった!ぜひ一度、読んでみてね。詩に対する印象が180度変わるから!

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