




こうふく みどりの-あらすじ
大阪のとある町。
14歳の緑はまだ初恋を知らない女の子。
しかし転校してきたコジマケンが気になる。
緑の実家・辰巳家は、女性家庭。
夫が失踪中のおばあちゃん。
家庭のある男性を愛して緑を産んだお母さん。
バツイチ(離婚予定)子持ちの藍ちゃん。
藍ちゃんの娘の桃ちゃん。
ペットの猫も犬もメスである。
不思議な魅力のある辰巳家には、さまざまな事情を抱えた人たちが集まる。
女の「こうふく」をリアルに紡いだ傑作。

こうふく みどりの-ここがおすすめ
- 緑の感性がみずみずしい。肩肘張らない自然体が読んでてほっこりする。
- それぞれのキャラクターに個性があって、いろんな価値観に触れられる。
- ストーリーの展開が予測できそうで予測できない絶妙なドキドキ感。

こうふく みどりの-感想・考察

せまい町の空気に少し憧れる
『こうふく みどりの』の舞台は、大阪の小さな町。
噂になることがあれば、町中の人たちにすぐ伝わる。
それが嫌だなぁと思う反面、町の人たちと気軽に交流できる緑にちょっと憧れます。
僕が生まれた町は、近所同士のつながりがあまりないので、帰属意識が希薄です。
そうなると、やっぱりお年寄りがどう考えてるかとか、今、小学校で流行ってることとか、わからないんですね。
かといって、緑の町に住んだら絶対面倒くさいんでしょうけど。
ネットで距離を超えてつながれる反面、距離が近い人とはなかなかつながらない。
それってちょっと不思議だなぁって思いました。
コジマケンはどこにでもいる男の子
作中では、転校生のコジマケンが他の男子といかに違うか、強調されています。
でもそれ全部、緑フィルターを通して見たコジマケンなんですね。
つまり、もうコジマケンが転校してきた瞬間に、緑は恋におちてるんです。
それが「恋」という感情だと気づいていないだけで。
だんだんと、それがはっきりとしてくるんですが、結果的にあのような結末になりました。
それを読んで「そりゃそうなるよな」と思ったのが、正直な気持ちです。
普通の男の子だったらそうなります。
どこにでもあるような恋の話をまじまじと描いた
僕が一番グッときたシーンは、藍ちゃんがおばあちゃんにどつかれてるシーンです。
すごくありきたりな話なんだけど、読んでてすごく切迫感があります。
西加奈子は、普通の人の普通の感情をまじまじと描くことが、すごく上手いと思うことがあります。
『うつくしい人』という作品でも、主人公のお姉ちゃんに対する思いの記述は見事でした。
こちらもCHECK
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うつくしい人/西加奈子_眩しすぎて目を背けたくなる光がある
主人公・蒔田百合は、純真さ故に苛められ引きこもりになった姉のようになるまいと、他人にどう思われるかを常に考えそつなく振る舞う生き方を選んだ。しかしある日、会社でのちょっとしたミスで人の前で泣かないと誓ったはずの涙が溢れ、会社を退職する。自分のアイデンティティを見失った百合は、茫然自失なまま、とある離島に一人旅に出ることに。旅先でも精神不安定な自分に嫌気がさしていた百合だが、ドイツ人の美しい青年・マティアスとホテルの冴えないバーテンダー・坂崎と出会い、徐々に自分の輪郭を取り戻していく。暗いトンネルから見えた一筋の光明を巧みな描写で表現した傑作。
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多分、いろんな人と接してきたからこそ描けるんだなと思います。
作者が魅力的だと、作品も魅力的になるんでしょうね。
『こうふく みどりの』はこんな人におすすめ!
- 「こうふく」ってなんだろうと日々、自問している
- 普通の女の子の普通の日常を描いた作品を読みたい
- 自分の家族も女性一族で、作品に共感できそう

あとがき


