ミステリー

去年の冬、きみと別れ/中村文則_芸術に狂う者が一線を越える瞬間

モロケン

未経験からフリーライターとして独立、起業。日給500円から始めて今では1記事5万円も珍しくない。いつまでも純粋さを大切にしたい。

『去年の冬、きみと別れ』(中村文則/幻冬舎文庫)の読書感想文です。複雑怪奇なストーリーは、読む人の好奇心を擽ります。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。

『去年の冬、きみと別れ』のあらすじ

あらすじ

「去年の冬、きみと別れ」は、ライターの”僕”が、死刑囚である木原坂雄大(カメラマン)の起こした猟奇殺人事件(女性2名を焼き殺す)を、本にするために、関係者に取材をおこなうという設定で進行します。雄大の姉・朱里、”K2″のメンバー、人形師の男…。本人が気づいていない真の欲望と、人がその「一線」を越えてしまう「瞬間」と、その「領域」にまつわる物語です。

『去年の冬、きみと別れ』の感想と考察(ややネタバレ)

読みどころ

  • ストーリーもいいが登場人物の内面に注目
  • 芥川の地獄変
  • “M・M”と”J・I”の答え合わせ
モロケン
『去年の冬、きみと別れ』の感想文を書きます。ネタバレが嫌だよって人はコチラまで、進んでね!

ストーリーもいいが登場人物の内面に注目

『去年の冬、きみと別れ』は、ミステリーの要素が強いので、ストーリーの面白さだけでも、楽しめる作品となっています。その仕掛けは複雑怪奇、初読で見破るのは、至難の業です。ただ、ご都合主義なところもある点がややマイナスです。

しかし注目すべき点は、ストーリーよりも、登場人物の内面を掘り下げている描写でしょう。

特に、朱里(正確には⋯⋯わかりますね?)は、いい味を出していたと思います。

「あなたでは無理ね」
「え?」
「私達の領域にまで、来ることはできない」

彼女の抱える闇は、本作の登場人物の誰よりも、深かったのではないでしょうか。

芥川の地獄変

本作では度々、芥川の「地獄変」が引き合いに出されています。

絵に狂った絵師が、自分の娘が実際に焼け死んでく様子を見、それを絵に描く。その後絵師は自殺しますが、残ったその地獄変の描かれた屏風は凄まじい芸術性を放つ・・・。

「地獄変」が今回の事件に近しい状況であったためです。

  • 絵師→雄大
  • 娘→モデルの女性
  • 屏風→写真

唯一、異なった点は作品に芸術性が宿らなかったことです。
そう、雄大は凡庸だったのです。

本当に才能を感じさせる登場人物は、人形師だけでした。

彼の作る人形は、本物よりも美しい。
個人的には、彼の話をもっと、ふくらませても良かったのではないかと思います。

“M・M”と”J・I”の答え合わせ

最後に、”M・M“と”J・I“が誰であったか答え合わせをします。

前者は、木原坂雄大(白字)。

後者は、吉本亜希子(白字)。

ということで、よろしいでしょうか?

『去年の冬、きみと別れ』はこんな人におすすめ!

モロケン
芸術について考えることが好き!

人間の狂気に関心がある⋯。
文学青年

サブカル
不気味なストーリーを一気読みしたい。


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あとがき:去年の冬、きみと別れ

『去年の冬、きみと別れ』(中村文則/幻冬舎文庫)の読書感想文でした。

ミステリーな展開も楽しめつつ、人間の暗部に迫った、いい作品です。

映画化もされているので、そちらもぜひ。

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モロケン
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