『去年の冬、きみと別れ』(中村文則/幻冬舎文庫)の読書感想文です。複雑怪奇なストーリーは、読む人の好奇心を擽ります。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。
『去年の冬、きみと別れ』のあらすじ
あらすじ
『去年の冬、きみと別れ』の感想と考察(ややネタバレ)
読みどころ
- ストーリーもいいが登場人物の内面に注目
- 芥川の地獄変
- “M・M”と”J・I”の答え合わせ

ストーリーもいいが登場人物の内面に注目
『去年の冬、きみと別れ』は、ミステリーの要素が強いので、ストーリーの面白さだけでも、楽しめる作品となっています。その仕掛けは複雑怪奇、初読で見破るのは、至難の業です。ただ、ご都合主義なところもある点がややマイナスです。
しかし注目すべき点は、ストーリーよりも、登場人物の内面を掘り下げている描写でしょう。
特に、朱里(正確には⋯⋯わかりますね?)は、いい味を出していたと思います。
「あなたでは無理ね」
「え?」
「私達の領域にまで、来ることはできない」
彼女の抱える闇は、本作の登場人物の誰よりも、深かったのではないでしょうか。
芥川の地獄変
本作では度々、芥川の「地獄変」が引き合いに出されています。
絵に狂った絵師が、自分の娘が実際に焼け死んでく様子を見、それを絵に描く。その後絵師は自殺しますが、残ったその地獄変の描かれた屏風は凄まじい芸術性を放つ・・・。
「地獄変」が今回の事件に近しい状況であったためです。
- 絵師→雄大
- 娘→モデルの女性
- 屏風→写真
唯一、異なった点は作品に芸術性が宿らなかったことです。
そう、雄大は凡庸だったのです。
本当に才能を感じさせる登場人物は、人形師だけでした。
彼の作る人形は、本物よりも美しい。
個人的には、彼の話をもっと、ふくらませても良かったのではないかと思います。
“M・M”と”J・I”の答え合わせ
最後に、”M・M“と”J・I“が誰であったか答え合わせをします。
前者は、木原坂雄大(白字)。
後者は、吉本亜希子(白字)。
ということで、よろしいでしょうか?
『去年の冬、きみと別れ』はこんな人におすすめ!



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あとがき:去年の冬、きみと別れ
『去年の冬、きみと別れ』(中村文則/幻冬舎文庫)の読書感想文でした。
ミステリーな展開も楽しめつつ、人間の暗部に迫った、いい作品です。
映画化もされているので、そちらもぜひ。

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