


『窓の魚』-あらすじ
あらすじ
※ここからややネタバレします
『窓の魚』-感想・書評

窓の魚は「謎解き」ではなく「余韻」を楽しむ作品
窓の魚を読んだ人のほとんどは「え、これで終わり?」ってなると思います。
なぜなら与えられたヒントだけでは女性が池で死んだ事件の真相が一切解決できないからです。
ミステリーやサスペンスを読むことが多い人は、きっともやもやしたことでしょう。
しかし僕は「窓の魚」は謎解きではなく余韻を楽しむ作品だと考えています。
だから謎は謎のままでいいんです。
もちろんいろいろ推測することはできますので、自分なりの結論があればそれでいいと思います。
ただ、作品を立体的にしている物語の構成や巧みな心理描写は本当に見事です。
僕の好きな作家である中村文則さんの作品に雰囲気が似ているなと思ったら、解説が本人でした(笑)
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姿が見えない猫は死神の象徴
登場人物全員が猫の鳴き声を聞きますが誰も姿を見つけることはできません。
この「見えない」ところがポイントだと思いました。
登場人物はそれぞれ幻想に翻弄されているからです。
具体的には、
- ナツ⇒のっぺらぼうの男
- トウヤマ⇒電話ごしの(年配の)女性
- ハルナ⇒昔の自分自身
- アキオ⇒生まれてすぐに死んだ弟
です。
作中の姿がない猫は「幻想」と「死相」をもたらす死神だと思いました。
このあたりニュアンスがきめ細かく、情緒的でセンチメンタルな気分になりました。
他人の心情を推しはかることは難しい
しばしば僕たちは「ああ、アイツはこういう人だから」と、簡単に誰かの内面をカテゴライズしてしまいます。
しかし『窓の魚』を読めばわかるように、他人の心情を推しはかることは難しいです。
お互いが恋人同士であっても認識のズレがあるのですから。
だから他人を何かに当てはめてしまうことはとても危険なのです。
どんなに親しい間柄でもお互いを100%理解することはできません。
これは寂しくもあり、だからこそ楽しいともいえます。
理解できないことを知りつつも理解しようと努めること。
それはとても大切なことだと思います。
『窓の魚』はこんな人におすすめ!



あとがき


