SF

★【書評】『恋する寄生虫』(三秋縋)から自由意志とは何かを読み解く

2017年6月21日

『恋する寄生虫』(三秋縋/メディアワークス文庫)の読書感想文です。タイトルが不思議で気になっていた本。 装画も綺麗で思わず手にとりました。 一風変わった恋愛小説です。 あらすじと感想・考察(ネタバレなし)を書きます。

『恋する寄生虫』のあらすじ

潔癖症の青年・高坂賢吾と視線恐怖症の少女・佐薙ひじりは、社会不適合同士ゆえに、惹かれあい、やがて恋に落ちる。 しかし、二人の恋は<虫>によってもたらされた「操り人形の恋」に過ぎなかった。 二人に待っている衝撃の結末とはーー?

『恋する寄生虫』の感想と考察(ネタバレなし)

佐藤はなぜ寄生虫に詳しいのか?

 
この話は、最近読んだ本の中だとかなり面白かったです。 最初にタイトルを見た時は「どうして寄生虫?」と思ったのですが、物語を読んでいくにつれて、得心しました。 「寄生虫」は物語の中でひじょーーに重要な役割を担っています。 佐薙の寄生虫に関する知識の豊富さに高坂は驚きますが、後半にいくにつれて、彼女がなぜそれほど寄生虫に執着しているのか、理由が明らかになってきます。

「・・・フタゴムシはパートナーを選り好みしない。 まるで一目惚れが宿命づけられているかのように、生まれて初めて出会った相手となんの疑いもなく結合する。 それに、フタゴムシはパートナーを最後まで見捨てない。 一度繋がったフタゴムシは、二度と互いを話さないの。 無理に引き剥がすと、死んじゃうんだ」

 寄生虫のことを話している時は、寡黙な佐薙も饒舌になります。 潔癖症の高坂は初めこそ寄生虫に対する嫌悪感を隠しきれていませんでしたが、お互い一緒にいる時は症状が緩和することもあって、二人で目黒寄生虫館に遊びにいったりもしました。 この建物、実はデートスポットらしいですよ(笑) 僕も行ったことがあります。

社会不適合者の七つ道具

 僕がこの話を気に入った理由の一つは、僕自身も彼らと同じように、社会不適合であることです。 僕の場合は、周りの人の声がすべて自分の悪口を言っているように思えてしまう強迫観念です。 ですので、彼らに対してすごく共感しながら話を読んでいました。 高坂の時は、マスクや手袋。 佐薙の時は、ヘッドホン。 それぞれ、症状を緩和する何らかの道具を持っていますが、僕の症状に対して効果的な道具はないように思えて、少し悲しかったです。 何かいいアイディアありませんかね?

自由意志とは何か?

この物語でもっとも重要なテーマを述べます。 それは「操り糸の存在を知りながら、あえてそれに逆らわず操られている人形は、自由意志で選択しているのか、ということ」です。 これは、非常に難しい問題だと思います。 ちなみに、高坂はNO、佐薙はYESという姿勢を持っています。 個人的には、佐薙の意見に同調します。 なぜなら、操られようとする意志は、選択によって生じるものだからです。 みなさんは、どのように考えますか?

『恋する寄生虫』はこんな人におすすめ

  • 一風変わった恋愛小説を読みたい人
  • 寄生虫に興味がある人
  • 自由意志について考えてみたい人

あとがき:恋する寄生虫

『恋する寄生虫』(三秋縋/メディアワークス文庫)の読書感想文でした。まとめると、恋愛小説としても面白い作品である上に、ちょっとSFチックな要素もあって、読んでいて全く飽きることがなく、次の展開をどんどん知りたくなる、という魅力がこの作品にはあります。 正直、有名な作品でもないし、あまり期待していなかったのですが(ごめんなさい)、それを良い意味で裏切ってくれました。 ちょくちょく出てくる寄生虫に関する豆知識も、筆者の方が一生懸命勉強したんだろうなあと思うと、頭が上がりません。 巷に溢れるちょっと薄っぺらく思える恋愛小説とは異なり、作品に一本きちんと芯が通っている印象を受けました。 ですので、安心して作品を楽しむことができますよ。

♦︎三秋 縋(みあき すがる)
1990年岩手県生まれ。

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