坂上秋成

● 『モノクロの君に恋をする』

投稿日:2017年6月30日 更新日:

はじめに

『モノクロの君に恋をする』 坂上秋成 新潮文庫nexより 2017年6月.
 
 漫画がテーマの作品。

 尖っているけど味わいのある登場人物はとても微笑ましいです。

 あらすじと感想を書きます。

モノクロの君に恋をする

読書時間の目安

3時間42分

あらすじ

以下、多少のネタバレ含みます。 未読の方はご注意ください。

 浪人覚悟で受験した大学に合格した小川卓巳は、超がつくほど漫画が好き

 流されるまま、漫画サークル「パラディーゾ」に入った卓巳を待っていたのは、グラサンと元ヤンと極道女とナルシストの先輩 + 同期の美少女・天原陽美(あまはらみなみ)と漫画について熱く語り合う日々でした。

 それは、卓巳が思い描いていた薔薇色のキャンパスライフとは違っていましたが、漫画に対する情熱をはじめて共有できる仲間ができたことに、喜びを感じる卓巳。

 ある日、先輩が「プリズン」と呼ばれる部屋への扉を開けた時、目の前に広がっていた光景とはー。

感想

 「モノクロの君に恋をする」は、とにかく”漫画に対する愛“が人と人を繋ぎあわせることを感じた作品でした。
 
 バラディーゾには入部試験があったのですが、この問題がとってもガチ

 ちょっと見てみましょうか。

1. 貴様の魂を震えさせた漫画を三つ挙げ、それぞれについて理由を述べよ。
2. 貴様は漫画家にとって最も大切なものを何だと考えているか、述べよ。
3. 百合とBLに対する貴様のスタンスについて、語れ
…以下省略

 ね、ガチだったでしょう?笑

 でも、漫画に対する愛がある人が、この問題を前にしたら、わくわくしてしまうという気持ちは理解することができます。

 こういうわけで、バラディーゾには、本当に漫画を愛している人しか入ることができなくなっています。

 
 卓巳は、ある日、陽美が描いている漫画を見ました。 そこで、クオリティーの高さに驚きます

 彼自身、何度か漫画を描いた経験はあったのですが、周囲から酷評を受けると、モチベーションが上がらず、創作する意欲がなくなっていました。

 そんな時に、陽美の原稿とその裏で行われた努力を見せつけられた卓巳は、奮起して、漫画をきちんと描ききることを決意します。

 
 卓巳は「プリズン」に入って、先輩たちも漫画を描いていて、それぞれ完成度が非常に高い、ということを知ります。

 しかし、彼らも完璧ではありません。

 それぞれ、プロの漫画家になるための「あともう一歩」が足りないという感じだったのです。

 彼らは、漫画について熱く語り合うだけではなく、プロの漫画家を目指す仲間として、一致団結していました。

 卓巳は普段のおちゃらけた態度とは違う、先輩の一面を知り、彼らに憧れを抱き、より精力的に漫画に没頭します。

 
 そんなバラディーゾの信頼関係に水をさしたのは、意外なことに、陽美でした。

 彼女は、天真爛漫な性格の裏に黒くドロドロした感情を宿していたのです。

 退部届けを提出した陽美に卓巳は思いのたけをぶちまけます。

 その瞬間に、卓巳は、正直な自身の感情と向き合い、成長したのです。

 
 「モノクロの君に恋をする」は、”本音“がいっぱい詰まっている本だと思いました。

 それは、彼らの中に信頼関係があって初めて、顕在化します。

 その信頼関係の土台となっているのが、”漫画愛“です。

 漫画が好きで、読んだり、描いたり、してきた”時間”は、処世術にはならないけれども、決して無駄ではないのです。

 
 僕は小説が好きです。

 小説を読むことで、感情を大きく動かされたり、視野が広がったり、する瞬間が好きです。

 小説は一見役に立たなそうだけれど、この作品を読んで、小説に対する愛は、誰かと繋がるための、土台となりうるかもしれない、そんなことを考えました。

 やはり、好きなことに対しては、自分に正直になってもいいのではないかと思いました。

 
 ちなみに漫画は「おやすみプンプン」という作品が大好きです^^

こんな方におすすめ

  • 漫画が大好きという人
  • 良質なエンターテイメント小説を読みたい人
  • いまいち目の前のことにやる気が起きない人

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あとがき

 最後まで読むのが勿体無いという感覚を久しぶりに味わいました。

 もっと、彼らの世界に浸っていたかったのですが、物事には終わりがあります。

 エピローグもとても良かったと思います。

 おすすめです^^

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