ホラー

■【書評/感想】『夜行』(森見登美彦)は摩訶不思議なパラレルワールド

2017年5月8日

『夜行』(森見登美彦)の読書感想文です。

第一五六回直木賞ノミネート作品で、森見登美彦の10年目の集大成と期待される作品。

独特の不気味な世界観が読者の興味をそそります。

※ほぼネタバレ無し

『夜行』(森見登美彦)のあらすじ

 私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間でした。

 十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消しました。

 夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出します。

 私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていました。

『夜行』(森見登美彦)の書評/感想

森見登美彦らしからぬ暗い作風

『夜行』は、ホラー小説のようですが、ミステリーでもあり、伏線回収がとても難しいです。

 読者の解釈によって、作品の良し悪しが決まる作品だ、という印象です。

 森見登美彦の朗らかな作品(『夜は短し歩けよ乙女』など)とは異なり、全体的に暗いじめじめした作品です。

 この話は大きく5つの独立した話から成り立っています。

  • 「第一夜 尾道」(中井)
  • 「第二夜 奥飛騨」(武田)
  • 「第三夜 津軽」(藤村)
  • 「第四夜 天竜峡」(田辺)
  • 「最終夜 鞍馬」(大橋)

 話の軸としては、岸田道生の「夜行」という絵画失踪した長谷川という女性を起点にして、それぞれ摩訶不思議な話を語り部たちが披露するという流れとなっています。

概念としては、パラレルワールド(並行世界)がとりいれられています。

森見登美彦のインタビューからわかること

森見登美彦のインタビューでは、以下のように語られています。

森見登美彦、作家10周年小説『夜行』を語る。 | P+D MAGAZINE
森見登美彦、作家10周年小説『夜行』を語る。 | P+D MAGAZINE

森見登美彦の新作『夜行』は、不気味に謎めいた雰囲気が魅力の連作怪談! 「小説を書くのは楽しいけれども、しんどい作業」と語る森見氏に、その小説執筆術についてお伺いしました。

——『夜行』の不気味な雰囲気を決定づけているのは、なんといっても「夜」というモチーフだと思いますが、振り返ってみれば、過去の“明るい作品”の中にもクライマックスの場面が夜に設定されていることが多かったと思います。森見さんは元々「夜型」なのでしょうか?

森見:特に「夜型」の人間ではないですね。ただし、〈自分たちの日常の世界〉と〈向こう側の世界〉が接近するというか、その2つが入り混じる場面が小説のクライマックスになることは確かに多いと思います。その2つの世界の境目をあやふやにするような場面と言えば、1つは「お祭り」、2つ目に「宴会(酔っぱらっている状態)」、あとは「夜」がある。〈向こう側〉への入り口は、我々が日常生活を営んでいる場面とは少し離れたところにあると思うので、この3つが小説によく登場するのはそれが理由かなと思います。

 なるほど、という感じですね。

 今回の話で言えば、「祭り」と「宴会」と「夜」、全ての条件が揃っているので、あちら側の世界とこちら側の世界との境界が曖昧になる要素は十分にあったわけですね。

好き嫌いが分かれる作品⋯⋯?

 僕の感想としては、夏の夜の怪談のようなゾワリとする読感は味わえるけど、結局、話の展開は何なのという気持ちが強く、狐につままれたような感じがするのが否めないといった感じでしょうか。

 ですので、物語の結末がはっきりわかる作品が好きだという読者さんには、ちょっと消化不良な作品になってしまうかもしれません。

 逆に、話の雰囲気だけ楽しみたいんだよという読者さんはきっとこの作品が気にいると思います。

 そういう意味で好き嫌いがはっきりする作品なんじゃないかなと思います。

あとがき:『夜行』(森見登美彦)

 今回は、森見登美彦さんの『夜行』について、書評/感想を書きました。僕は正直なところ森見登美彦の他の作品のほうが好きかなって思いましたが、好きな人にはハマる作品かもしれませんね。

♦︎森見 登美彦(もりみ とみひこ)
1979年、奈良県生まれ。
京都大学農学部大学院修士課程修了。

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