森見登美彦

■ 『夜行』

投稿日:2017年5月8日 更新日:

はじめに

 「彼女はまだあの夜の中にいる」
 今回、感想を書く作品は、『夜行』(森見登美彦, 2016)です。

 第一五六回直木賞ノミネート作品で、森見さんの10年目の集大成と期待される作品です。

 僕は彼のファンなので、読むのを楽しみにしていました。

『夜行』(2016)

あらすじ

 私たち六人は、京都で学生時代を過ごした仲間でした。

 十年前、鞍馬の火祭りを訪れた私たちの前から、長谷川さんは突然姿を消しました。

 夜が更けるなか、それぞれが旅先で出会った不思議な体験を語り出します。

 私たちは全員、岸田道生という画家が描いた「夜行」という絵と出会っていました。

感想

 これは…感想が難しい作品ですね。

 ホラー小説のようでもありミステリーのようでもあり、しかも伏線ははれるだけはって、回収はおざなりというか読者まかせなところがあって。。

 解釈によって、作品の良し悪しが決まる作品だなあという印象です。

 森見さんの明るい朗らかな作品(夜は短しとか)とは異なって、全体的に暗いじめじめした作品だと思います。

 この話は大きく5つの独立した話から成り立っています。

  • 「第一夜 尾道」(中井)
  • 「第二夜 奥飛騨」(武田)
  • 「第三夜 津軽」(藤村)
  • 「第四夜 天竜峡」(田辺)
  • 「最終夜 鞍馬」(大橋)

 話の軸としては、岸田道生の「夜行」という絵画失踪した長谷川という女性を起点にして、それぞれ摩訶不思議な話を語り部たちが披露するという流れとなっています。

 概念としては、パラレルワールドがとりいれられています。

 
 
 森見さんのインタビューでは、以下のように語られています。

森見登美彦、作家10周年小説『夜行』を語る。 | P+D MAGAZINE

——『夜行』の不気味な雰囲気を決定づけているのは、なんといっても「夜」というモチーフだと思いますが、振り返ってみれば、過去の“明るい作品”の中にもクライマックスの場面が夜に設定されていることが多かったと思います。森見さんは元々「夜型」なのでしょうか?

森見:特に「夜型」の人間ではないですね。ただし、〈自分たちの日常の世界〉と〈向こう側の世界〉が接近するというか、その2つが入り混じる場面が小説のクライマックスになることは確かに多いと思います。その2つの世界の境目をあやふやにするような場面と言えば、1つは「お祭り」、2つ目に「宴会(酔っぱらっている状態)」、あとは「夜」がある。〈向こう側〉への入り口は、我々が日常生活を営んでいる場面とは少し離れたところにあると思うので、この3つが小説によく登場するのはそれが理由かなと思います。

 なるほど、という感じですね。

 今回の話で言えば、「祭り」と「宴会」と「夜」、全ての条件が揃っているので、あちら側の世界とこちら側の世界との境界が曖昧になる要素は十分にあったわけですね。

 僕の感想としては、夏の夜の怪談のようなゾワリとする読感は味わえるけど、結局、話の展開は何なのという気持ちが強く、狐につままれたような感じがするのが否めないといった感じでしょうか。

 ですので、物語の結末がはっきりわかる作品が好きだという読者さんには、ちょっと消化不良な作品になってしまうかもしれません。

 逆に、話の雰囲気だけ楽しみたいんだよという読者さんはきっとこの作品が気にいると思います。

 そういう意味で好き嫌いがはっきりする作品なんじゃないかなと思います。

あとがき

 今回は森見登美彦さんの『夜行』(2016)について、感想を書きました。僕は正直なところ森見さんの他の作品のほうが好きかなって思いましたが、好きな人にはハマる作品かもしれませんね^^

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