純文学

▲ [書評]『ぬるい毒』(本谷有希子)は過去の自分との決別の話だ

モロケン

未経験からフリーライターとして独立、起業。日給500円から始めて今では1記事5万円も珍しくない。いつまでも純粋さを大切にしたい。

『ぬるい毒』(本谷有希子)の読書感想文です。題名からして、きっとドロドロした恋愛に関する話なんだろうなあと思ったんですが、その予想はまあまあ当たっていました(笑)しかしそこは流石、芥川賞作家です。世の中に出回る恋愛小説とは一線を画しています。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。

『ぬるい毒』(本谷有希子)のあらすじ

 あの夜、同級生と思しき見知らぬ男の電話を受けた時から、私の戦いは始まった。

 魅力の塊のような彼は、説得力漲る嘘をつき、愉しげに人の感情を弄ぶ。

 自意識をずたずたにされながらも、私はやがて彼と関係を持つ。

 恋愛に夢中なただの女だと誤解させ続けるために。

 最後の最後に、私が彼を欺くその日まで—。

 一人の女の子の、十九歳から五年にわたる奇妙な闘争の物語。渾身の異色作。

『ぬるい毒』の感想と考察(ややネタバレ)

『ぬるい毒』の感想と考察を書きます。ネタバレが嫌だよって人はコチラまで、進んでください。

 主人公の熊田はサディストの向伊に対して、惹きつけられていく思いを抱かずにはいられませんが、物語が進行して、向伊がどういう人間で、どういう手口を使って、他人を貶めるのかを見ているうちに、徐々に恋愛感情ではなく、別の感情を持つようになります。

 それは、闘争心と呼ぶべきものです。

 騙してるつもりが騙されている。

 向伊に対して、そういう状況を作りたくて、彼女として、地方から、上京します。

 
 僕がこの作品を読んでいて一番気になっているのは、どうして熊田は、向伊と関係を持ちたがるのだろうということでした。

 騙し騙されのゲームは、向伊にとって、遊び感覚なのに、熊田がわざわざそのゲームの土俵に上がってまで、勝利しようとするモチベーションがわかりませんでした。

 強いていえば劣等感でしょうか。

 熊田はいわゆる大学(短大?)デビューで、綺麗になったのですが、自分に自信を持てない様子。

 向伊とその取り巻きはそれを知ってか知らずか、熊田が綺麗になったことを繰り返し述べます。

 熊田にとって、向伊とのゲームは、過去の自分、自分の劣等感との戦いなのかもしれませんね。

 僕は向伊のような純粋なサディストと遭遇したことはないので、なんとも言えませんが、熊田のように、相手の土俵に立つことは避けることが懸命かと思います。

 自分と合わない人がいたら、関わらなければいいわけで⋯⋯とかいうと、僕の内向性が発揮されちゃってる感ですね。

 うん、とにかくそんなに頑張れません。

評価:『ぬるい毒』はこんな人におすすめ!

評価

モロケン
どうしてサディストと闘おうとするんだ?

いろいろなことに劣等感がある⋯。
文学青年

サブカル
一風変わった恋愛小説を読みたい。

あとがき:『ぬるい毒』(本谷有希子)

今回は、本谷有希子さんの作品である『ぬるい毒』について、感想を書きました。
ストーリーは良く出来ていて、作者の想像力の豊かさが感じられました。
今かなりアツい作家さんだと思うので、読んでおいて、損はないと思いますよ^^

本谷 有希子(もとや ゆきこ)
1979年石川県生まれ。
石川県立金沢錦丘高等学校卒業。ENBUゼミナール演劇科に入学。
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モロケン

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