純文学

●【書評】『コンビニ人間』(村田沙耶香)にみる社会の均質性と想像力の欠如

モロケン

未経験からフリーライターとして独立、起業。日給500円から始めて今では1記事5万円も珍しくない。いつまでも純粋さを大切にしたい。

モロケン
第155回芥川賞受賞作『コンビニ人間』(村田沙耶香)の読書感想文です!

『コンビニ人間』ってすごいタイトルだね。内容が予測できない。
サブカル

モロケン
ね!この記事ではあらすじと感想・考察を書くけど、ネタバレはほぼないから安心して!

『コンビニ人間』(村田沙耶香)のあらすじ

コンビニアルバイト古倉恵子。36歳、未婚、彼氏歴なし。感情を持たない彼女は、マニュアル通りに指示されたことをこなし、まわりと齟齬がないように振る舞う。しかし、就職も結婚もしない彼女を、家族や友人たちは異常だと考えていた。そんな彼女の元に現れるのが、婚活目的でバイトに入った新人・白羽であった。彼は、現代社会や古倉恵子の生き方を稚拙な論理で詰るがーー。

『コンビニ人間』(村田沙耶香)の感想と考察(ややネタバレ)

モロケン
『コンビニ人間』の感想と考察を書きます。ネタバレが嫌だよって人はコチラまで、進んでね!

幼い頃から「異物」として生きてきた恵子の悟り

コンビニ人間の世界観

  • 普通の人間 → 「就職」/「結婚」
  • 異常な人間(異物) → 「アルバイト」(無職) /「未婚」
  • コンビニ人間 → 「超人間

この作品の主題は「社会における正常と異常、その排除の話」であると思います。

この物語の主人公・古倉恵子(以下、恵子)は、幼いころから異常でした。

感情が希薄だったのです。

コンビニ店員として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思い出せない。郊外の住宅地で育った私は、普通の家に生まれ、普通に愛されて育った。けれど、私は少し奇妙がられる子供だった。

恵子が、合理的な手段を持って、問題を解決しようとすると、周りに気味悪がられた。

そのため、恵子は自分で主体的に動くことを放棄しました。

恵子は超人間的進化を遂げコンビニ人間になる

コンビニにアルバイトとして働き始めた時、恵子はコンビニの仕事が自分の居場所だと感じました。

そのとき、私は、初めて、世界の部品になることができたのだった。私は、今、自分が生まれたと思った。世界の正常な部品としての私が、この日、確かに誕生したのだった。

18年間コンビニでアルバイトを続けて結婚もしない恵子を家族や友人は「問題」扱いしました。

恵子は自分が「異物」にならないように振る舞います。

自分が異物にならないために、マニュアル通りに振る舞うこと、これが最も大事なことだと悟ります。

「コンビニに居続けるには『店員』になるしかないですよね。それは簡単なことです。制服を着てマニュアル通りに振る舞うこと。世界が縄文だというなら、縄文の中でもそうです。普通の人間という皮をかぶって、そのマニュアル通りに振る舞えばムラ追い出されることも、邪魔者扱いされることもない」

恵子は気がつきました。

人間ではない「コンビニ人間」な自分は、「異物の排除」の論理から外れると。

「気が付いたんです。私は人間である以上にコンビニ店員なんです。人間としていびつでも、たとえ食べて行けなくてのたれ死んでも、そのことから逃れられないんです。私の細胞全部がコンビニのために存在しているんです」

いわば、それは超人間的進化だといえます。

日本社会における多様性の欠如

僕がこの物語から感じたのは、異物と決めつけられるルールにちっとも「多様性」という考え方がないなということでした。

だって、現代は「多様性」の時代です。

「多様性」の相互作用が新たな革新を生み出し、社会の原動力になる、そんな時代なんじゃないんですか?
 
ですので、この物語の論じている「結婚」しているだとか「働いている」だとかというモノサシで人間をはかるのは、あまりにも前時代的な考え方だな、と思いました。

勿論、そうなってくるとこの話の「正常」と「異常」の論理が崩れてしまうので、作者にもっと深い意図があるか、僕が子供なのか、どちらかなのだと思いますが。

考えすぎるのもよくないですが、考えないのも、それと同じくらい軽薄な気がします。

最後の恵子の開き直りというか、悟りに、唯一、恵子の意志が感じられ、嬉しくなりました。

僕も自分の意志を尊重した生き方ができれば、と前向きな気持ちになれました。

評価:『コンビニ人間』はこんな人におすすめ!

評価

モロケン
コンビニ人間になるって、どういうことだろう?

日本社会はもっと多様性に関して寛容になるべきじゃないかな⋯。
文学青年

サブカル
自分も周りの人から問題扱いされていて、恵子の立場にすごく共感できる

あとがき:『コンビニ人間』(村田沙耶香)

モロケン
今回は、村上沙耶香の『コンビニ人間』を取り上げました!どうだったかな?

さすが、芥川賞受賞作って感じだよね。発想がいい意味でぶっ飛んでる。
文学青年

モロケン
うん!すごく個性がある作品だと思った。村上沙耶香の作品はこれからも注目だね!

村田 沙耶香(むらた さやか)
1979年千葉県印西市生まれ。
玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。
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