純文学

●【書評】『しろいろの街の、その骨の体温の』(村田沙耶香)_自分を獲得しようともがく

2017年3月27日

『しろいろの街の、その骨の体温の』(村田沙耶香)の読書感想文です。

 村田沙耶香さんの名前は知っているものの、作品は読んだことがなかったのですが、この作品の評価がすごく高かったことから、読んでみたいと思いました。

 村田沙耶香さんの作品は(あとで、詳しく書きますが)、すごい力を持った作品ですね。

 それだけに、テーマをしっかり理解することはなかなかハードルが高そうです。

あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。

『しろいろの街の、その骨の体温の』(村田沙耶香)のあらすじ

 クラスでは見立たない存在の結佳。

 書道教室が一緒の伊吹陽太と仲良くなるが、次第に彼を「おもちゃ」にしたいという気持ちが高まり、結佳は伊吹にキスをするのだが。

 女の子が少女へと変化する時間を丹念に描く、静かな衝撃作。

 第26回三島由紀夫賞受賞。

『しろいろの街の、その骨の体温の』(村田沙耶香)の書評/感想

『しろいろの街の、その骨の体温の』の感想と考察を書きます。ネタバレが嫌だよって人はコチラまで、進んでください。

 僕がこの本を読もうと思ったのは、上述したように、この作品に対する高評価を目にしたことと、
「しろいろの街の、その骨の体温の」という面白いタイトルに惹かれたこと、です。

 この作品では女の子が少女になるにつれ生じる自意識の変化やスクールカースト、性についてとても、生々しい描写をしています。

 小学生の時に仲良し3人組であった結佳、若葉、信子ですが、中学校では、それぞれクラス内の5段階ヒエラルキーにおいて、結佳(主人公)は下から2番目、若葉は、一番上(だけど必死)、信子は、一番下、という位置に収まりました。

 習字教室で仲の良かった結佳と伊吹の仲は小学生から変わりません。

 しかし、ヒエラルキーの上位にいる人気者の伊吹と自分を比較して、学校では話しかけないように、壁を作ります。

 ただ、伊吹を「おもちゃ」として扱うことはやめませんでした
 

 主人公は、小学生から中学生に変わっても、周りから一歩、達観した態度、観察者の態度で他人と接することで、決して恵まれているとは言えない境遇(スクールカースト下位)において、自尊心をギリギリ確保しようとしたのでした。

 その行動は、か弱い少女が残酷な現実と立ち向かうための手段の1つとして正当化されるべき行為だったと思います。

 主人公のクラスにおけるスクールカーストは、とてもわかりやすく、5グループに分かれていました。

 その境界線は絶対で、少しでも身の程を知らない行動をとってしまうと、すぐに笑い者の対象になるのでした。

 僕の経験では、ここまでヒエラルキーがはっきりしていることは珍しく思え、嘲笑やいじめも、もっと非道いところは非道いだろうなあと思いました。

 
 伊吹との性描写は、明らかに歪んでいると思いました。

 少女の身体の中に閉じ込められた激情

 それは、この作品を他の作品と異なるものにするために十分だったと思います。

 これは、浅野いにおさん(漫画家)の作品である「海辺の女の子」の中学生男女における性的主従関係を彷彿とさせました。

 
 僕も、小学生・中学生時代、うんざりしていました。

 そして、クラスでは目立たないように、客観的でいるようにしていました。

 その点は主人公と全く同じだったと思います。

 しかし、主人公は物語の後半では、そんな自分のことを嫌いになり、主体者であろうともがいていました。

 その努力は当時の僕には欠けていたと思います。
 
 変わろうとした、主人公の勇気。

 惨めだろうと、自分の尊厳を勝ち取ろうとふんばる根気の良さはこれからの自分にとっても必要なんじゃないかと考えさせられました。

評価:『しろいろの街の、その骨の体温の』はこんな人におすすめ!

評価

自分の尊厳は自分で勝ち取る!
思春期の歪んだ性に知的好奇心がある⋯。
スクールカーストってめんどくさいな。
村田 沙耶香(むらた さやか)
1979年千葉県印西市生まれ。
玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。

あとがき:『しろいろの街の、その骨の体温の』(村田沙耶香)

 
 この物語における伊吹への歪んだ感情は、僕は感じたことはありませんが、それらの描写は、実際に自分が経験したかのように切迫感があり、その力強さに圧倒されました。

主人公の最後、自分を変えようとした勇気、もがいたこと、はきっと美しいんだろうなあと思います。

この本の持つパワーはすごいです。一瞬で惹きつけられて、一気に読み終えてしまいました。
読んだことがない方はぜひぜひ、読んでみてくださいね。

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