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■ 【感想文】不朽の名作『西の魔女が死んだ』(梨木香歩)から学べること

モロケン

未経験からフリーライターとして独立、起業。日給500円から始めて今では1記事5万円も珍しくない。いつまでも純粋さを大切にしたい。

『西の魔女が死んだ』(梨木香歩)の読書感想文です。言わずと知れた名作ですね。どうやら学生の読書感想文の課題にもなっているようです。きっと本記事が参考になるでしょう。物語性に富んだお話は、小説のお手本のような印象を受けます。

『西の魔女が死んだ』のあらすじ

あらすじ

中学生の少女・まいは、いじめが原因で学校に通えなくなる。 そのため、しばらく学校を休んで、おばあちゃん(英国人)の家に1ヶ月ほど住むことに。 そこでは、自然豊かなミニマム・ライフが待っていた。 おばあちゃんは、自身が魔女の家系であると仄めかし、まいは「魔女修行」をはじめる。 魔女になるためには、強靭な精神力が必要。 まいは、自分で物事を決める、最後までやり遂げる、と一念発起する。 そんな、魔女見習い・まいにある日、衝撃的な事件が起こる。

『西の魔女が死んだ』の感想文

『西の魔女が死んだ』は、物語として面白いだけではなく、さまざまな教訓を読者に提供してくれる、まさに教科書のような本です。 読書感想文の課題になっていることにもうなずけます。

昔、筆者が宿題の読書感想文を書くときは、本から教訓を得ようという意識がありませんでしたが、大人になって振り返ると、『西の魔女が死んだ』のように示唆に富んだ作品が、しっかり課題図書として、挙げられているんだなと、納得しました。 あまりにも説教臭い文章は、読者を白けさせますが、『西の魔女が死んだ』は、そのバランスが非常に良いと思います。

日本人は無宗教で、人生における哲学を持ちにくいですが、『西の魔女が死んだ』のように健全な思考を育む本を読むことで、少しずつ、それらが血となり肉となり、大人になったときの人生観を形成していくんでしょうね。

 ここからは、5つのトピックに分けて作品の感想を述べたいと思います。

まいの「おばあちゃん」の人間力

『西の魔女が死んだ』を読んだ人なら、すぐにわかると思いますが、このおばあちゃん、人間としての魅力が半端じゃないです。

自分の世界をしっかり持っているだけではなく、世の中の理、善悪についてなど、をきちんと心得ているうえで、他者を、押し付けがましくないように、正しい道へと導いていく。 そういったことが自然とできる人です。 そんなおばあちゃんをまいは尊敬しています。

ところが、まいのママはおばあちゃんに対して反発しています。おばあちゃんはまいのママに「自分の考えを押し付けないで」と言われた後、弱気な一面も見せています。

 「確かにもうオールド・ファッションなのかもしれませんね」
 ・・・
 「どうしたの。今のはおばあちゃんらしくないわ」
 「どういうのが私らしいのですか?」
 「いつも自信に満ちているのよ」

p180より

まいはおばあちゃんのことが大好きです。

 「おばあちゃん、大好き」
 「アイ・ノウ」

 このやり取りは幾度となく二人の間でかわされるものです。 読んでいるだけで微笑ましくなりますね。

筆者がまいのおばあちゃんのことをいいなと思う点は、自給自足のオーガニックな生活をしているのに、煙草を吸うところです。 そこが、少しニヒルなところもある、おばあちゃんの人間像をよく表していると思います。

筆者は、イギリスにホームステイに行ったことがあります。ホームステイをしたのですが、ホストマザーは、煙草を1日40本吸うヘビースモーカーでした。 ですので、僕は頭の中で、彼女とおばあちゃんを結びつけながら、作品を読んでいました。

こうやって、小説の登場人物と実在の人物を結びつけることは、よくありますよね? そうすると、ぐっと小説の登場人物に対するイメージがはっきりする気がします。

規則正しい生活をすることの大切さ

 

 「この世には、悪魔がうようよしています。 瞑想などで意識が朦朧となった、しかも精神力の弱い人間を乗っ取ろうと、いつでも目を光らせているのですよ」

p68より

 まいは、このおばあちゃんの言葉に、ゾッとします。 そんなまいを見たおばあちゃんは言います。

 「でも、精神させ鍛えれば大丈夫」
 「どうやって鍛えるの?」
 まいは畳みかけるように熱心に訊いた。
 「そうね。まず、早寝早起き。食事をしっかりとり、よく運動し、規則正しい生活をする」

p69より

 もちろん、悪魔がいるというのは比喩表現です。具体的には、七つの大罪ふうに言うと、「暴食」、「色欲」、「強欲」、「憤怒」、「怠惰」、「傲慢」、「嫉妬」、といったところでしょう。 これらの悪魔に乗っ取られないようにするために、規則正しい生活をすることは、とても理にかなっていると思います。

筆者は、まいと同じように、不規則な生活をしてしまいがちです。だからわかるのですが、規則正しく生活しないと本当に精神的に不安定になるんですよね。 筆者の場合は、「怠惰」という悪魔に乗っ取られそうになります。 だから、この魔女になるための精神力の鍛錬は、筆者にも必要だなと、とても実感しました。 別に、魔女になりたいわけではありませんが(笑)

悪役・ゲンジさんとまいの闘い

小説は、いい人の良さを際出させるために、わざと悪い登場人物を登場させることが、よくあります。 『西の魔女が死んだ』にも悪役が出てきます。それが、ゲンジさんです。

まいとゲンジさんの出会いは、以下のとおりです。

 「こんにちは」
 「おまえはどこのもんじゃ」
 「ここは、わたしの祖母のうちです」
 「遊びに来たんか」
 「しばらくここにいるんです」
 「ええ身分じゃな」

p26-27より一部省略

なかなかひどいですよね(笑) しかも、おばあちゃんの敷地の中の一幕です。 これは、まいが怒るのもしょうがない。 筆者もこういうタイプの人は苦手です。

 まいとゲンジさんの対立が大きな意味を持つのは、2つの事件がきっかけでした。

ニワトリ、殺される事件

 おばあちゃんが飼っていたニワトリが金網を壊され、何者かによって無残にも殺されました。 まいは、ショックを受けますが、この時は、どんな生物がやったんだろうと思うだけでした。

事件後、まいはおばあちゃんにゲンジさんのもとへ、金網の修理代を渡すように言われます。 当然、嫌な仕事ですが、おばあちゃんに言われたならしょうがありません。まいは決心して、ゲンジさんのところへ向かいます。

すると、ゲンジさんがおばあちゃんのことを「外人」と呼んでいることを知り衝撃を受け、さらに、ゲンジさんの飼い犬の毛がニワトリの金網についていた毛と非常に似ていたことから、それが犯人だと推測して、おばあちゃんに訴えかけますが、彼女は、まいをなだめるだけでした。 まいのイライラはつのります。

まい、おばあちゃんにぶたれる事件

ある日の早朝にまいは、ゲンジさんがおばあちゃんの敷地の境目のところをくわで切り崩しているのを見かけます。 彼女は、彼がおばあちゃんの敷地を侵略して、自分の土地を広げていると思い、憎悪を感じます。 そして、おばあちゃんに、こう言います。

 「・・・あんな汚らしいやつ、もう、もう、死んでしまったらいいのに」
 「まいっ」
 おばあちゃんは短く叫んでまいの頬を打った。

p170より

 あの温厚なおばあちゃんにまいはぶたれました。 この事件を境に、まいは、おばあちゃんの家を出て自宅に戻るまで、「おばあちゃん、大好き」というセリフが言えませんでした。 そして、おばあちゃんが亡くなるまで二度と、その言葉がまいの口から出ることはありませんでした。

 最後、おばあちゃんが亡くなってから、ゲンジさんはちょっといい奴ふうになっていて(笑)、まいはもう彼のことをなんとも思っていない様子が描かれています。 これは、おばあちゃんの家にいた頃のまいではできなかった、感情の抑制が、年を経て、できるようになったことを示しています。 まいは、おばあちゃんの言うとおり、魔女修行を続けていたのです。 まいの成長した姿をおばあちゃんに見せてあげたかったですね。

人間は死んだらどうなるの?

 まいは、自分が死んだらどうなるのか、漠然とした恐怖を抱えていました。 ある夜、その質問をおばあちゃんに聞いてみると、彼女はこう言いました。

 「おばあちゃんは、人には魂ってものがあると思っています。 人は身体と魂が合わさってできています。・・・身体は生まれてから死ぬまでのお付き合いですけれど、魂のほうはもっと長い旅を続けなければなりません。・・・死ぬ、ということはずっと身体に縛られていた魂が、身体から離れて自由になることだと、おばあちゃんは思っています。・・・」

p116-117より一部省略

 半信半疑のまいに対して、おばあちゃんは、じゃあ、私が死んだら、まいに魂が離れたことを知らせてあげますよ、と言いました。 作品を読んだ人ならわかりますね。 最後のおばあちゃんのメッセージ。

ニシノマジョ カラ ヒガシノマジョ ヘ オバアチャン ノ タマシイ、タッシュツ、ダイセイコウ

p190より

 そしてまいは言うのです。「おばあちゃん、大好き」。その時、確かにまいは聞きました「アイ・ノウ」という言葉を。

魔女になるためには「自分で決める力」が大切

 魔女になるために、規則正しい生活をすること、というのは前述しました。 もうひとつ、そのために、重要なことがあります。 それは「自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力」です。

まいは、おばあちゃんの家から自宅に帰って、新しい学校に通いはじめてからも、そのことを意識して実践しました。 それが、おばあちゃんとの間の糸を切らせないようにすることだと。 その甲斐あってか、まいは、新しい生活にすぐに順応し、新しい友達を作ることもできました。 やっぱり、おばあちゃんの言うことは偉大でした…。

 「自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力」のうち、筆者は前者のほうは得意です。 重要なことでも、すぐに決断して行動に移せます。 これは、先天的なものなのか、後天的なものなのかはわかりませんが、役に立つときもあれば、逆効果な時もあります。 なぜ逆効果になるかというと、後者のほう「自分で決めたことをやり遂げる力」が筆者には、致命的に欠けているのです。 だから、決断して行動に移したものの、すぐに飽きてやめる、みたいな、けっこう気まぐれなのです。 そうなってしまうのは、やはり、規則正しい生活ができていないからのような気がします。 ですので、この本を読んで、強く思いました。

規則正しい生活をしようと。

『西の魔女が死んだ』はこんな人におすすめ

  • 読書感想文の課題になり書き方に困っている人
  • 精神がよく不安定になってしまう人
  • 生き方に悩んでいて人生の指南書を探している人

『西の魔女が死んだ』を読んで⋯。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

この本は、薄っぺらいですが、本当に学ぶところが多い本です。

読書感想文には、ぴったりですね。

ちなみに『西の魔女が死んだ』は、映画化もされています!

こちらも素晴らしい作品ですので、ご覧になってくださいね。

映画『西の魔女が死んだ(2008)』を見るなら

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