西加奈子

▲ 『あおい』

投稿日:2017年4月18日 更新日:

はじめに

 今日は、西加奈子さんのデビュー作である『あおい』(小学館、2004年)について感想を書きたいと思います。

 最近、西さんの作品をとりあえず全部読もうと思って、ネットで一気に注文しました。

 今回の作品は、特に、その中でもデビュー作ということで、西さんの原点を見ることができるかな?と思い、期待して読み上げました。

『あおい』

あらすじ

 27歳スナック勤務のあたし(さっちゃん)は、3歳年下の学生であるカザマと同棲している。

 そして、ある日、あたしは、妊娠していることに気づくが、その思いを伝えることができず、悩み、スナックを辞め、長野のペンションで泊まり込みバイトをしようと思うが、初日で無理だと感じ、無謀にも、深夜に森の中を彷徨いつつ帰宅を試みる。

 案の定、どうしようもなくなったあたしは、漆黒の闇の中で、素敵な光景を目にする—。

感想

 この作品は、西さんの作品の多くでもそうですが、シンプルなストーリーの中にありながらも、登場人物の魅力を伝える言葉、会話の中にそっと潜まれている機微、それから描写の力強さ、によって、物語に厚みが持たされ、全体のクオリティが底上げされているといった印象を持ちました。

 例えば、友人となる「みいちゃん」について、説明されている言葉では、

 みいちゃんのことを覚えていたのは、みいちゃんが、すごく太いからだ。

 それはちょっと、尋常じゃない太さだった。

 みいちゃんが歩くと、フロアが少し揺れる感じがした。

 ジーンズを穿いているのだけど、歩くたび「ぎゅ、ぎゅ」と股がすれる音がする。

 みいちゃんは本棚の角でばったり会うと、「きゃ。」と飛びのいてしまうような、迫力を持っていた

のように、とても女の子に対する描写ではないだろうという言葉も用いながら、キャラクターの個性を読者に伝えようとしています。

 『あおい』は、一応、恋愛小説だと思うので、あたしと彼氏であるカザマとの恋愛も描写されているのですが、巷に溢れる恋愛小説のように、「甘い言葉で愛を囁く」といったロマンティックなことは、全くなく、ただ、普通の女性と男性が普通に暮らしていて思うであろう平凡なこと、些細なこと、例えば、「カザマが牛乳を飲んでもしまわないことにあたしがイラつく」、みたいなものや、「あたしが、カザマの携帯電話のメールをチェックして、嫉妬する」といったような、ありきたりなこと、が多くを占めています。

 それでも、物語を読み終えれば、「人を誰かが本気で好きになる」ということについて、圧倒的な説得力を持って、読者に伝えられていることに気づきます。

 本の構成は、時系列や横の展開がちょっとわかりにくかったりして、デビュー作ならではの不完全さはあるのかなあと思いましたが、読者に対するメッセージの力強さは、他の作品と比べても、全く劣ることはなく思いました。素直にいい話だと思います。

まとめ

  • シンプルなストーリーと魅力的なキャラクター
  • 本当の「恋心」にそっと触れることができる

あとがき

 今回は、西加奈子さんのデビュー作である『あおい』について記事を書きました。

 西さんの原点を見れた気がして、少し嬉しく思います。

 やっぱり、彼女の作品に溢れる力強さは、素晴らしいです。

 ぜひぜひ読んでみてくださいね^^

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