日常・青春・恋愛

■ 【書評】『舞台』(西加奈子)_誰もが皆、人生という舞台で演技をしている

『舞台』(西加奈子)の読書感想文です。

自意識過剰な男をコミカルに描いた作品になっています。

海外在住経験のある西加奈子だからこそ書けるユニークな視点は、とても興味深いです。

※ほぼネタバレなし

『舞台』(西加奈子)のあらすじ

 太宰治『人間失格』を愛する29歳の葉太。

 初めての海外、ガイドブックを丸暗記してニューヨーク旅行に臨むが、初日の盗難で無一文になる。

 間抜けと哀れまれることに耐えられずあくまで平然と振る舞おうとしたことで、旅は1日4ドルの極限生活に。

 命がけで「自分」を獲得してゆく青年の格闘が胸を打つ傑作長編

『舞台』(西加奈子)の感想文

葉太のエピソードは自意識を考える土台となる

『舞台』は、「自意識」について、青年が苦悩しながら向き合っていく話です。

誰だって、無意識に他人の目を気にして行動してしまう、つまり演技をしています。

ただ、この本の主人公である葉太はその程度が極端です。つまり、自意識過剰です。

彼のエピソードを通じて、「自意識とは何か?」について、考えるきっかけになるでしょう。

実は、筆者も自意識過剰です⋯⋯

 筆者は、「自意識過剰」の自覚があります。

他人のリアクションが怖くて、「演技」をいつもしています

ここでは、恥ずかしくて言えないくらい、些細なことで思い悩む性格です。

葉太の父のように死がおとずれるまで演技を続けることは、強い人しかできないと思います。

だから、僕はわかってくれそうな人には正直に言います。自分の自意識を。

それが筆者の弱さです。

葉太が自分を獲得していく様から目を離せない

 

 この本では、葉太が狂うのと比例するように自分を獲得していきます。

 ここでいう「自分を獲得する」とは何か。

 筆者の考える答えは、今までに自分が成していたことを客観視して、それを肯定してあげることです。

『舞台』では、荷物を盗まれることが、自分を客観視するきっかけになっています。

 何か、きっかけ、トリガー、がないと、人間は自分のことを客観視しないと思うのです。

 いろいろ書きましたが、西加奈子さんの文章にはいつもユニークなユーモアがあります。

 それがあるので、テーマが重くても、どんどん読み進めることができます。

 そういう力を持った作家さんだと思います。他の作品もこれから取り上げていきたいと思います。

評価:『舞台』はこんな人におすすめ

評価

モロケン
僕って自意識過剰かな?

人前で演技し続けることに疲れた⋯。
文学青年

サブカル
自分変えたいけど、どうすればいいんだろう?

あとがき:『舞台』(西加奈子)

『舞台』(西加奈子)の読書感想文でした。

西加奈子の文章にはいつもユーモアがあります

だから、テーマが重い内容でも、どんどん読み進めることができます。

西加奈子は、そういう力を持つ作家だと思います。

他の作品もこれから取り上げていきます。

♦︎西 加奈子(にし かなこ)
1977年イラン、テヘラン生まれ。エジプト、大阪府堺市育ち。
関西大学法学部卒業。
\この記事はいかがでしたか?/