『僕は何度でも、きみに初めての恋をする』(沖田円)の読書感想文です。スターツ出版文庫は、ゆるふわイラストでジャケットが描かれているので、つい手を伸ばしたくなります。少し悲しい青春小説でした。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。
『僕は何度でも、きみに初めての恋をする』のあらすじ
『僕は何度でも、きみに初めての恋をする』の感想と考察(ややネタバレ)
『僕は何度でも、きみに初めての恋をする』の感想と考察を書きます。ネタバレが嫌だよって人はコチラまで、進んでください。
「ハナの記憶は一日しか持たない」。
そのような設定を取り上げたのは、この作品が最初ではないし、それ自体に目新しさがあるとは言えません。
それでは、何が、この作品を魅力的にしているのでしょう。僕はそれは優しさが作品に溢れていることであると思います。
セイの両親は不仲です。
昔はそうではなかったようですが、今は顔を合わすたびに大きな声を出して口論をします。
セイは一人で布団に入り、耳を閉ざします。
「わたしは二人にとって必要ではないんだ」。
そんな気持ちをもったセイは絶望し、ここではないどこかに行きたいと願います。
そんな時、手を差し出してくれたのがハナでした。
ハナが見ている世界はとても綺麗です。
記憶が一日しか持たないからこそ、今、その瞬間を、全力で味わい、それをカメラで保存します。
そんなハナにセイはどんどん惹かれていき、現状を打開しようともがきます。
そこまで、セイを導いてくれたのはハナの優しさでした。
「引き上げた先の景色が綺麗かどうかは僕にはわからないけれど、きみのいる世界だもん、きっとどんな場所より綺麗に決まってるはずなんだ。
ねえ、セイちゃん」
思い悩んでいたのは、セイだけではありませんでした。
ハナもセイに出会ったことで、大切なものを病気のせいで失いたくない。
そんな恐怖を持ってしまいます。
そして、それを救ったのはセイの優しさです。
「きみがくれたものすべてが、わたしにとっての宝物だよ。
ハナ、きみのことも」
「だから怖がらなくていいよ。
ハナの世界からわたしがいなくなっても、また、何度でも、わたしがハナを見つける。
これからもずっと、わたしはきみといる」
正直、僕はけっこう泣き虫です。
映画とか観るとよく泣いています。
でも、本を読んでいて泣くっていうことはないだろうと思っていました。
しかし、この本からにじみ出る優しさが僕の手から頭へとのぼっていき、気づいたら涙目になっていました(笑)
それくらい、この本の優しさは、力を持っています。
テーマやストーリーはありきたりかもしれないけど、それを構成している細部、その積み重ねとしての集積が、この作品を固有のものにしているのではないでしょうか。
評価:『僕は何度でも、きみに初めての恋をする』はこんな人におすすめ!
評価



あとがき:僕は何度でも、きみに初めての恋をする
今回は、沖田円さんの作品『僕は何度でも、きみに初めての恋をする』について感想を書きました。
これまでの文章を読んで、この本のあたたかい優しさが少しでもあなたに伝わっていれば、幸いです。
ストーリーはとても読みやすいので、一瞬で読めちゃうと思います。
ぜひご一読を。
愛知県安城市生まれ。