乙一

● 『死にぞこないの青』

投稿日:2017年6月5日 更新日:

はじめに

死にぞこないの青 乙一 感想. 著者曰く、「好きなものを自由に書いた話」。 内容は、ホラーに近いのかな? あんまり怖くはないです。 あらすじと感想をネタバレありでまとめます。 なかなか面白い話だったので、ぜひ参考にしてみてください。

死にぞこないの青

読書時間の目安

2時間20分(212ページ)

あらすじ

 小学生のマサオは些細な誤解により、大好きだった羽田先生から嫌われてしまう。 その日から、羽田先生はマサオに対してある種のいじめを始め、クラスもそれに同調する。 そんな境遇も、身から出た錆だと受け入れていたマサオだったが、次第にそれが不条理だと感じはじめる。 その頃と、時を同じくして、真っ青な肌に拘束服を来た少年「アオ」が見えるようになる。 アオの正体とは一体?

感想

 なかなか面白い作品でした。 中盤まではかなり一方的にマサオが羽田先生とクラスから迫害を受けていて、 しかも、そのことで自分を責めるという構図だったため、読んでるほうもストレスがたまりましたが、「アオ」が見えるようになったころから、話が面白くなりはじめました。アオの容貌に関する描写はなかなか衝撃的です。

  • 肌が真っ青である
  • 顔は縦横に傷跡が走り、それはナイフで切られたようだった
  • 片耳と頭髪がなかった。 誰かに殺ぎ落とされたようである
  • 右目は塞がっていた。どうやら瞼を接着剤でくっつけられてるにちがいなかった
  • 唇に紐が通されていた。上の唇と下の唇に穴を開けて縫われている
  • 拘束服を着ていた。 両腕はすっかり動かせない格好である
  • 下はブリーフだけ。 干からびた細い足でよろよろと立っていた

 かなり狂気じみている描写ですね。 この時点で「アオ」の正体について、仮説を立てられます。 恐らく、マサオが周囲からの迫害に対して、潜在的に感じている、惨めさ、残忍さ、恐怖、怒り、といったものが、仮想の人物を作り出して、それが幻覚として見えているというものです。 この仮説は概ね当たっているように思えます。 マサオはその奇天烈な風貌のアオに対して、不思議な親しみを覚えると描写されていました。 そのことが、アオがマサオの一部であるということを裏付けしています。

 アオと言葉を交わすようになったマサオは大元の元凶である羽田先生を殺しにいきます。 この殺しにいくという手段は、少し短絡的というか、復讐をするにしても、もう少しうまいやり方があるだろうと思いましたが、きっとそのほうが話としてわかりやすいからなんでしょう。 逆に殺されかけるマサオでしたが、なんとか納得がいくくらいの復讐を遂行したマサオのそばにはもうアオは消えていました。 もうその存在が必要とされることはないからでしょう。 非常に残忍なアオでしたが、それはマサオの一部であり、共に生きていくべき存在なのです。

 この話は「恐怖」がテーマだったように思えます。 羽田先生は周りの期待に応えなければという恐怖から、マサオを生贄にしましたし、クラスメイトは自分が迫害されたらどうしようという恐怖から、マサオのいじめに同調しました。 マサオも、また、先生からいつも見られているという恐怖からマイナス思考に陥りました。 「恐怖」という感情は、人を残酷にさせ、人間性を奪う、ということが、作品からメッセージとして伝わってきました。

 最後に、羽田先生の代わりにやってきた新任教師は不器用だけど一生懸命、狡猾で臆病だった羽田先生とは正反対の人物です。その先生の言葉、

「まわりの人が自分のことをどう評価しているか、恐くないんですか?」
「がんばってる結果がこれなんだから、しょうがないでしょ」

この言葉を読んで、ずーっと暗かったこのお話に最後に光が灯るような、そんな感慨を覚えたのでした。

おわりに

 今回は「死にぞこないの青」について、感想を書きました。 いじめの話なのに、直接的な描写がないのが、作品の不気味さを強調していたように思いました。 ぜひ、ご興味ある方は読んでみてくださいー!

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