ミステリー

王国/中村文則_運命を照らす月の光をナイフで切り裂く

モロケン
『王国』(中村文則)の読書感想文です〜!

『王国』は、中村文則の作品には珍しく女性が主人公なんだよね。
サブカル

モロケン
そうそう。あと、ストーリーが面白くって読みやすい作品だよ!

『王国』のあらすじ

あらすじ

「⋯⋯大丈夫。毒じゃないから」美しき娼婦・鹿島ユリカの仕事は、社会的要人にハニー・トラップをしかけ、弱みを人工的に作り上げること。彼女は、親友の子供である翔太の難病の治療費を稼ぐために闇の世界に立ち入った。美貌を持つ彼女は、正体不明の組織に属する矢田から請負った仕事を完璧にこなしていた。しかしある日、彼女の運命を大きく左右する男と出会う。彼の名は、木崎。闇の世界を牛耳る木崎と矢田の利害の衝突により、命を狙われるユリカのスリリングな逃亡劇を描いた作品。中村文則のベストセラー『掏摸』の兄妹篇。
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『王国』の感想文

モロケン
『王国』の感想文を書きます。ネタバレが嫌だよって人はコチラまで、進んでね!

『掏摸』と『王国』の構造は似ている

掏摸』は、中村文則の作品で、世界中で翻訳されるベストセラー小説です。『王国』は、掏摸の兄妹篇であり、構造がよく似ています。

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掏摸/中村文則_人間は運命に抗うことができるか?

主人公の男・西村は、東京でスリを生業とする。彼のスリの技術は超一級で、孤独だが不思議な平穏の元、日々を暮らしていた。ところがある日、「木崎」という闇世界の住人と出会ってしまう。木崎に存在を知られたものは皆、掌で踊らされ悲痛な結末が待っている。西村は、自身の「運命」に光を見出すことができるのかーー?

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掏摸 王国
主人公 掏摸・西村 娼婦・ユリカ
シンボル 塔(男性的) 月(女性的)
敵対者 木崎
木崎との接点 万引きをする子供(母親に強要) 親友の難病を抱える子供
出身 児童養護施設

共通の敵が、絶対悪である木崎となっているのはいいとして、注目すべきは木崎との関係性を生み出すのが「子供」である点です。

また、掏摸の主人公も王国の主人公も、児童養護施設出身です。

中村文則の作品は、過去にトラウマを抱えている施設出身者が多く、自分の内面と向き合い、もがき苦しむ姿がたびたびテーマとなります。

なぜ、彼がそういった作品を描くことが多いのか、気になりますね⋯⋯。

関連作品: 土の中の子供

化物・木崎の思想に迫る

「神に誘導され、裏切られ、無残に死ぬことで人々の中に名を残す。こういうことが、この世界で度々起こると仮定するといい。その時の神は最高に愉快な気持ちだと思わないか。⋯⋯私は、それをやろうと思った」

引用p99より

ユリカが木崎に追い詰められるシーン。

木崎は、十字架に磔られた「キリスト」と裁判で死刑になった「ソクラテス」を例に、上のようなセリフをいいます。

つまり自分が、人間の運命を翻弄する神の役割をする、といったのです。

よって、ユリカに接近したときも、彼女がどのように死んで名を残すか、すでに台本を用意していました

しかし、ある誤差によってシナリオは少し変わります。

「あの男に関わらない方がいい…何というか、化物なんだ」

引用p23より

『掏摸』の主人公である西村とユリカが『王国』で唯一、接点を持ったシーンです。

この言葉によりユリカは、木崎に警戒心を持ち、彼の台本を少し書きかえることになりました。

自分の人生を切り拓いていく

そのナイフの描いた線は、彼女達のつまらない醜さや、運動場の砂や、わたしの惨めさや、わたしの古いランドセルなどから完全に独立し、圧倒的な存在感で切り立つ、真っ直ぐ黒い線だった。その黒は、あまりにも美しく、あまりにも真っ直ぐだった。皆が黙り込む中で、わたしはその激しい線の美しさに見惚れた。この切り立った線が、これからのわたしの人生の障害を、次々と裂きながら弾いていくように思えた。

引用P112より

ユリカは、お守りとして小さい頃から「ナイフ」を常に持っていました。

『王国』の結末は、作品を読めばわかりますが、未来への希望を含ませています。

これからは、運命を象徴するシンボル「月」の代わりに、未来を象徴するナイフが、彼女の人生をあらわすものになるでしょう。

『王国』はこんな人におすすめ!

パリピ
手に汗握るユリカの逃亡劇にヒヤヒヤしたい⋯。

『掏摸』の主人公が、あの後どうなったのか気になる⋯。
文学青年

サブカル
化物・木崎のイカれた思想について深く考えてみたい⋯。


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あとがき:王国

モロケン
『王国』(中村文則)の読書感想文でした!どうだったかな?

ちょっと頭の中が整理できた気がする。にしても木崎怖い。
文学青年

モロケン
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