


『王国』のあらすじ
あらすじ
『王国』の感想文

『掏摸』と『王国』の構造は似ている
『掏摸』は、中村文則の作品で、世界中で翻訳されるベストセラー小説です。『王国』は、掏摸の兄妹篇であり、構造がよく似ています。
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掏摸/中村文則_人間は運命に抗うことができるか?
主人公の男・西村は、東京でスリを生業とする。彼のスリの技術は超一級で、孤独だが不思議な平穏の元、日々を暮らしていた。ところがある日、「木崎」という闇世界の住人と出会ってしまう。木崎に存在を知られたものは皆、掌で踊らされ悲痛な結末が待っている。西村は、自身の「運命」に光を見出すことができるのかーー?
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掏摸 | 王国 | |
主人公 | 掏摸・西村 | 娼婦・ユリカ |
シンボル | 塔(男性的) | 月(女性的) |
敵対者 | 木崎 | |
木崎との接点 | 万引きをする子供(母親に強要) | 親友の難病を抱える子供 |
出身 | 児童養護施設 |
共通の敵が、絶対悪である木崎となっているのはいいとして、注目すべきは木崎との関係性を生み出すのが「子供」である点です。
また、掏摸の主人公も王国の主人公も、児童養護施設出身です。
中村文則の作品は、過去にトラウマを抱えている施設出身者が多く、自分の内面と向き合い、もがき苦しむ姿がたびたびテーマとなります。
なぜ、彼がそういった作品を描くことが多いのか、気になりますね⋯⋯。
関連作品: 土の中の子供
化物・木崎の思想に迫る
引用p99より
ユリカが木崎に追い詰められるシーン。
木崎は、十字架に磔られた「キリスト」と裁判で死刑になった「ソクラテス」を例に、上のようなセリフをいいます。
つまり自分が、人間の運命を翻弄する神の役割をする、といったのです。
よって、ユリカに接近したときも、彼女がどのように死んで名を残すか、すでに台本を用意していました。
しかし、ある誤差によってシナリオは少し変わります。
引用p23より
『掏摸』の主人公である西村とユリカが『王国』で唯一、接点を持ったシーンです。
この言葉によりユリカは、木崎に警戒心を持ち、彼の台本を少し書きかえることになりました。
自分の人生を切り拓いていく
引用P112より
ユリカは、お守りとして小さい頃から「ナイフ」を常に持っていました。
『王国』の結末は、作品を読めばわかりますが、未来への希望を含ませています。
これからは、運命を象徴するシンボル「月」の代わりに、未来を象徴するナイフが、彼女の人生をあらわすものになるでしょう。
『王国』はこんな人におすすめ!



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あとがき:王国



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