

最果タヒ 詩集三部作
- 死んでしまう系のぼくらに
- 夜空はいつでも最高密度の青色だ
- 愛の縫い目はここ
※リンクを押すとレビュー記事にとびます
映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』予告

『夜空はいつでも最高密度の青色だ』で心に残った10編の感想
ここでは、『夜空はいつでも最高密度の青色だ』でいいなと思った詩の一部を引用して、感想を述べます。
①青色の詩
引用p7より
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』を開いて、最初に目に飛び込む一文。
これをみる読者は、『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は、すごい詩集かもしれないとドキッとします。
作品の特徴を端的に表現するような、天才的な言葉の置き方だと思います。
②朝
引用p8より
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』は最果タヒの第四詩集ですが、デビュー作のグッドモーニングや空が分裂するのように、言葉のセンスに身を委ねている印象が強いです。
したがって、詩の解釈を一筋にすることは難しいです。
ただ、読者の想像力によって、解釈はさまざまであり、最果タヒもそれでいいと認めています。
③ゆめかわいいは死後の色
引用p10より
ゆめかわいいって一時期よく耳にしましたね。
調べてみると、「パステルカラー、セーラー服、魔法少女、いちごみるく等のモチーフが使われた夢のようにかわいいもの」を指すようです。
それを、「死後の色」と表現する背景には、最果タヒ独自の見方があるんだろうなと思います。
④月面の歌
引用p15より
本当にやさしい人は、自分が恨まれても相手のためになることをします。
みんなにいい顔をしてれば、みんなに愛されるかもしれません。
でも、誰かが相談してきても無難な回答をしたり、親身に相談にのってる自分に満足したり⋯。
やさしい人になりたいですね。
⑤水野しずの詩
引用p16より
「潔癖なひとたち」という表現が、いかにも自分たちとは違うというニュアンスを含んでいますね。
でも、それを「えぐい」といいつつも、否定的に捉えてはいません。
「街」を最果タヒが鳥瞰的にみていて、それでも「悪くないな」という余韻を感じます。
⑥やぶれかぶれ
引用p23より
恋をすること、憎むこと、どちらも誰かに対する強い感情です。
両者は、対比しているので、切っては切れない関係にあります
よって、どちらかだけポエジーじゃないということは、許されないのです。
ロマンチックだけ強調するのは、不自然ですよね。
⑦かわいい平凡
引用p30より
孤独なふりをしている人は、きっと寂しい気持ちを抱えています。
そして、寂しさを表現しようとすると虚しさに襲われることもあります。
そんな人を丸ごとつつんで友達でいるといってくれるのは、とても優しいことだと思いました。
「かわいい平凡」というタイトルがぴったりです。
⑧渋谷の詩
引用p49より
「渋谷の詩」をみて、渋谷に来たことがない人は、きっと渋谷に恐怖しますね(笑)
でも男の子の渋谷と女の子の渋谷は、意味合いが随分と異なると思います。
渋谷の面白いところは、性別だけではなく地位や年齢、人種など、さまざまな異なる人が集まっていることです。
少なくとも女の子にとっては、物騒な街のようです。
⑨春の匂い
引用p60より
これすっごいよくわかります。
あくまで想像ですけど、最果タヒもきっと学生の頃は、陰キャよりだったと思うんです。
でも陰キャがリア充っぽいことをしないわけではなくて、たまに機会があったりします。
それらを端的に述べたのが、「春の匂い」という詩のように感じます。
絶妙ですね。
⑩4月の詩
引用p70より
研ぎ澄まされた言葉で社会を削り取る勢いだった『夜空はいつでも最高密度の青色だ』。
そんな中に見つけた素朴で幸せな詩が「4月の詩」でした。
これだけみると、普通のことをいってるだけじゃないかと思うかもしれません。
しかし、表現の力を高めるためには、緩急が必要です。
イントロは静かなのにサビで爆発するロックみたいなものです。
最果タヒの詩人としての力量を感じます。
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』の解釈

最果タヒの詩集は、解釈がとても難しいです。
ただ全作品のあとがきにおいて、いつも考えるヒントを教えてくれます。
引用あとがきより
上の文章を読んで、最果タヒの詩に対するスタンスを少し理解しました。
外発的刺激ではなく、内発的共鳴によって、読者の感情に変化を与えることが、最果タヒの作品の意図なのではないでしょうか。
わかりやすくいうと、僕たちの中にある小さな種に水(詩)を与えてくれることによって、種が芽となり花となるということ。
表現者は、考えをどうしても人々に押しつけてしまいがちです。
これに対して、最果タヒは、一人一人に寄り添って、話を聞いてくれる。
これはある意味、詩集を通じて著者と読者が対話をする、ことかもしれません。
『夜空はいつでも最高密度の青色だ』はこんな人におすすめ!



あとがき:夜空はいつでも最高密度の青色だ

-
【おすすめ詩集】詩人「最果タヒ」とは何者か?【ランキング】
詩人「最果タヒ」。近頃、この名前を耳にする機会も増えたのではないでしょうか?「サブカル界隈で有名らしい」とは知りつつも、彼女の正体・作風については、未だ謎⋯。本記事では、最果タヒの詩の作風に迫るとともに、「全詩集おすすめランキング」を紹介します。
続きを見る