日常・青春・恋愛

●【書評】『緋紗子さんには、9つの秘密がある』(清水晴木)が描く勝気な少女の繊細な心

2017年5月26日

『緋紗子さんには、9つの秘密がある』(清水晴木)の読書感想文です。著者のTwitter(@hare141414)で、この本が紹介されていて、その舞台が僕が住んでいる千葉県の北西部あたりだったことから親近感を感じて、購入しました。 あらすじと感想をまとめます。

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『緋紗子さんには、9つの秘密がある』のあらすじ

佐治緋紗子です、私と誰も仲良くしないでください。 宜しくお願いします。

高校2年生6月、転校初日の挨拶でこのように告げた緋紗子さんに驚きを隠せないクラスメイト・三橋由宇。 その端正な容姿とミステリアスな雰囲気に、自分にはない魅力を感じて、憧れてしまう。そして、緋紗子さんには、誰にも言えない9つの秘密があった。 儚くも愛おしい、「友情」の物語。

『緋紗子さんには、9つの秘密がある』の感想と考察(ネタバレあり)

 緋紗子さんの9つの秘密とは? その秘密をまず最初にネタバレしちゃいます(白文字で書くのでネタバレ嫌な人はスルーしてください)。

  1. 実は、中学から数えて七回も転校している
  2. 実は、嬉しい事や幸せな事があると石のように固まってしまう
  3. 実は、憧れの人がいる
  4. 実は、携帯を持っていない
  5. 実は、猫と海が好き。それに花火も好き
  6. 実は、昔友達を裏切ったことがある
  7. 実は、本音を隠す時、目を合わせない癖がある
  8. 実は、自分の事よりも、周りの人を幸せにしてくれる
  9. 実は、私は由宇と桜の季節に出会っていた、そして私も由宇に憧れていた

 9つの秘密の中で、もっとも緋紗子さんに影響を与えているのは秘密②だと思います。 このことによって、緋紗子さんは生活の中で楽しいと思えること、幸せに思えることを徹底的に排除しなくてはなりませんでした。 例えば、秘密⑤のようなことを。 そうなった理由については、秘密⑥と大きく関わっていると本人は感じています。 しかし、僕は物語を読んでいて、緋紗子さんがそれほどの罪を背負わなければならない理由があるのかな? と最初は思いました。 その事について緋紗子さんはこのように述べています。

「・・・私だって最初は思った。 なんで私だけって。 自分一人だけが酷い業と責任を背負わされている気がした。 ・・・だから、無責任にへらへら過ごしている連中が心底腹立たしかった。 そういうやつらを口汚く否定する事でした自分を保てなくなった・・・」

 真っ当な意見だと思います。 ただ、その業と責任が緋紗子さんだけに背負わされたのは、ある理由があるのではないかと思いました。 それは、秘密⑧とも関わってくるんですが、緋紗子さんは、本当は傲慢で自分勝手なのではなくて、とても他人の気持ちに対して繊細で優しさを持っているからなのではないかと。 そのことによって、より罪悪感を感じてしまったのではないでしょうか。 僕はそう思います。

 由宇は緋紗子さんの毅然とした態度に憧れています。 それは、自分にはないものだからです。 学級委員長を押し付けられ、両親は離婚の危機、幼なじみへの恋心も胸に留めるだけ。 いつでも「自分」ではなく他の「誰か」優先して物事を考えてしまう損な性格。 その性格も緋紗子さんと関わるにつれて変化が生まれてきます。 両親の離婚を相談した時の会話。

「あなたの話って、いつも主語が自分じゃなくて、相手なのよ」
 「主語が相手?」
 「あなたの問題なのに、お父さんがお母さんが、って言ってる。 私が、私は、って気持ちはないの? あなたはどうしたいの?」
 「私は・・・」

 結論としては、秘密⑨でわかるように、2人ともないものねだりの相思相愛で、関係は発展していくんですが、一時はどん底のように2人の間の溝は深まっていて、その関係が復活していくさまは、まさに「青春小説」という具合にセンチメンタルで、少女の「友情」の力をひしひしと感じ、ちょっと涙してしまいました(笑)

 自分も、由宇の優しさと緋紗子さんの強さを見習って、前を向いて歩いて行こうかな、とそんな気持ちになる物語でした。

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『緋紗子さんには、9つの秘密がある』はこんな人におすすめ

  • 千葉県北西部出身が舞台であることに親近感を覚える人
  • 少女の繊細な「友情」について思いを馳せたい人
  • 読後感がすっきりした前向きなストーリーを読みたい人

あとがき

『緋紗子さんには、9つの秘密がある』(清水晴木)のあらすじと感想について記事にしました。 舞台に、船橋のららぽーととか出てきて懐かしかったなー! 面白かったので、おすすめですよ。

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【Pick Up】

1

大学の図書館で働く天然系女子「麦本三歩」。職場の3人の先輩を「優しい先輩」「怖い先輩」「おかしい先輩」と脳内で呼んでいて、和気藹々と働いている。ぼけーっとしている三歩は、何も考えずに生きているようにみえる。しかし実際には、人並み以上に気持ちに対して繊細だったりする。そんな愛らしく憎めない三歩の、のほほんとした日常を大切に紡いだ作品。

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