


最果タヒ 詩集三部作
- 死んでしまう系のぼくらに
- 夜空はいつでも最高密度の青色だ
- 愛の縫い目はここ
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『死んでしまう系のぼくらに』心に残った5つの詩
ここでは、『死んでしまう系のぼくらに』の44篇の中から、心に残った5つの詩の一部を抜粋して、感想を書きます。
夢やうつつ
引用p8より一部抜粋
世界は広いです。
学校や会社にいると、僕たちは世界の広さをたびたび忘れます。
紛争や飢餓、賄賂や差別。
世界中にいる人たちのことを一日何回、想像するでしょうか?
でも、ラッパの音やするどい風が世界を吹き抜けたとき、遠くの人に思いを馳せる瞬間があります。
そして、優しい気持ちになるかもしれませんね。
ライブハウスの詩
ぼくなどいなくても変わらない、そのことが好きです。
きみが好きです。
引用p15より一部抜粋
好きな人がいます。
僕が好きな人は、僕が好きではありません。
でも、僕がいなくても変わらずにいてくれるなら。
きみがきみでいてくれるなら。
僕は、満足です。
そんな思いをこの詩から受け取りました。
線香の詩
悲しいことを泣き叫ぶ以外の方法を
もっている生き物に生まれたかった
引用p23より一部抜粋
生まれた時から世界に馴染めず、発狂しそうになりながら学校や会社に通って、死にかけてきました。
最果タヒは、きっと個性的な子供で、苦しんできたのでしょう。
誰かを理解できるというほど、もう若くはないけれど、共感しました。
少なくとも僕も、そっち側です。
わたしのこと
引用p66より一部抜粋
説教する人は嫌いです。
正しいことなんてないです。
とくに、恋に関しては、なおさらです。
異常だねって、いう人がまわりにいるなら、その刹那をどこかに閉じ込めるのは、野暮ですね。
凡庸の恋人
引用p80より一部抜粋
TVは、犯罪や戦争の話ばかりしています。
人々にとって、それはエンターテインメント。
当たり前に受け止めているけれど、怖いです。
凡庸なことをいう僕をどこかに連れ出してください。
『死んでしまう系のぼくらに』の解釈

あとがきにすごく大切なことが書いてありました。
引用p95より一部抜粋
踊ることも、歌うことも、絵を描くことも、自分の内面を表現する手段として、一般的に確立しています。
しかし表現手段としては、一部の人に限られた方法です(必ずしもではないけれど)。
これは、みなさんもなんとなくわかると思います。
これらに対して、「言葉」はどうでしょう?
言葉は、もっと身近な存在ですよね。
ただし言葉は、最果タヒもいうように、情報を伝える方法としての側面が強調されすぎていて、ツール化しています。
しかし言葉は、自分の思っていることや表現したいこと、訴えかけたいことを、世の中に表現できます。
まさに、言葉は想像以上に自由で、不自由な人のためにある、のです。
最果タヒは、『死んでしまう系のぼくらに』を通じて、牢屋に閉じ込められている言葉を外へ連れ出そうとしたのではないでしょうか?
これが作品の評価につながっている気がしてなりません。
『死んでしまう系のぼくらに』はこんな人におすすめ!



あとがき:死んでしまう系のぼくらに



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