ファンタジー

よるのばけもの/住野よる_現実と空想が紙一重で交錯する

モロケン

未経験からフリーライターとして独立、起業。日給500円から始めて今では1記事5万円も珍しくない。いつまでも純粋さを大切にしたい。

『よるのばけもの』(住野よる)の読書感想文です。前半は、「あらすじ」「テーマ」「評価(ネタバレなし)」です。後半は、「感想・考察(ネタバレあり)」です。まだ読んだことがない方は、本選びの参考に。すでに読んだことがある方は、頭の整理に。住野よるさんの描く世界は、現実と空想が紙一重ですね。

ここで、住野よるさんのツイートを紹介。

正直、何を言っているのかよくわからないです(笑) ごめんなさい。。。 でもきっと、前の二作とは、心構えが違うってことなのかな?

『よるのばけもの』のあらすじ

夜になると、僕は化け物になる

そう、主人公の中学生・安達は、夜になると、黒い体、六つの足、八つの目玉を持つ「化け物」になるのです。 体のカタチを思う通りに変化させることもできます。 普段は深夜の街を散歩したりしているのですが、ある日、学校に宿題を忘れたことに気づき、それを取りに行きます。 当然、他に誰もいないだろうと、教室に忍び込んだのですが。 なんと、

「びびびびびびびび、びっくりし、たぁ」

先客がいました。 クラスメイトの矢野さつきです。 姿を見られただけで激しく狼狽した安達ですが、彼女が放った言葉により、さらに驚愕することになります。

「あっちー、くんだよ、ね」

奇妙なイントネーションを持つ彼女に、いきなり正体を見破られました。 どうして? そんな言葉が安達の頭に浮かびますが、認めないと正体バラすよ、と言われた僕は、彼女にとっての秘密の時間「夜休み」に付き合うことになります。

矢野さつきについて、重要なことを述べます。 彼女はクラスでいじめられています

「おはよ、うっ」

律儀に毎朝挨拶をしても、誰も彼女に返事をする人はいません。 彼女は、教室で完全に浮いた存在なのです。 安達も勿論、矢野を無視していましたが、「夜休み」に付き合うようになってから、彼女の行動を意識するようになりました。

これが、よるのばけもの・安達と、いじめられっ子・矢野との間の不思議な物語の幕開けでした。

『よるのばけもの』のテーマ

作品のテーマは大きく分けて2つあると思います。

[テーマ①]いじめ

前述したように、矢野さつきはクラスでいじめられています。 そして、クラスメイトはその原因が矢野自身にあると考えています。 その根拠となるのは、ある1つのエピソードです。 それは、クラスでも大人しい生徒の緑川双葉の読んでいた本を、雨が降っている中庭に投げ捨てたというものです。 緑川は泣きました。 彼女にとって、それはとても大切な本だったのです。 そして、クラス中が矢野を責めるようになった理由は、泣いている緑川のそばで矢野が、「にんまりと」笑っていたからです。

[テーマ②]主人公の心情の変化

化け物の姿で「夜休み」を矢野と一緒に過ごすようになった安達の心は揺れています。 それは、矢野のことを知れば知るほど、彼女がいじめられていることに対して、疑問を感じ始めていたからです。 しかし、昼の学校では、矢野に対する態度を変えるわけにはいきません。 その葛藤が、安達の一人称が昼と夜では違うということに現れています。 そして、主人公の心情は変化していきます。 それがどのようなものかは、ぜひ本書を手にとって、読んで見てくださいね!

みんなの感想

ここからは、ネタバレを含みますので、ご注意ください

『よるのばけもの』の解説と考察(ネタバレあり)

モロケン
『よるのばけもの』の感想文を書きます。ネタバレが嫌だよって人はコチラまで、進んでね!

『よるのばけもの』を読んで見てどうでしたか? けっこう回収されない伏線があって、モヤモヤしたんじゃないでしょうか? 僕はそうでした。簡単に並べて見ますね。

「よるのばけもの」の謎

  • 矢野の「彼は本、当にうまいよ、ね」発言は何を意味しているのか?
  • 緑川双葉の立ち位置が不明
  • なぜ校舎の鍵が開いているのか・修復された蛍光灯
  • なぜ警備員は誰もこないのか
  • なぜ安達は化け物になったのか

それでは、順番に仮説を立てて行きましょう。

[伏線①]笠井に対する矢野の「彼は本、当にうまいよ、ね」(p144より)発言は何を意味しているのか?

矢野の発言は、何を意味しているのでしょう。もう少しヒントが必要ですね。さらに後半にいくと、矢野が笠井(おそらく)について言及している箇所があります。

「頭がよ、くて自分がどうす、れば周りがどう動、くか分かって遊んでる男、の子?」

あの寡黙な緑川も笠井について好ましくない印象を持っているようです。

「笠井くんは悪い子だよ」

そして更に気になることは、笠井が安達に対して怪獣の話題をふる回数が多いことです。数えてみたら5回ありました。

矢野と緑川の意見をまとめると、笠井は「何でもお見通しで遊んでいる男」ということになります。 そして、怪獣の話を安達に対して、何度も持ちかけるということは、怪獣の正体について笠井はすでに知っていて、安達に怪獣の話をすることで、リアクションを楽しんでいるのではないか、という仮説が立ちます。 あくまで推測にすぎませんが、あり得なくはないと思います。

[伏線②]緑川双葉の立ち位置が不明

緑川の件ですが、これは笠井の場合よりもわかりやすいと思います。 以下、矢野の発言です。

「喧嘩しちゃっ、た元友達が、ひどいことされてて仲直りも出来な、くて、誰に対しても頷くだけしか出来、ない癖に責任を勝手に感、じて本人の代わりに仕返、しをして、る馬鹿なクラスメイ、ト?」

これで、矢野と緑川が昔友達であったこと、矢野がいじめられていることに責任を感じて仕返しをしていることがわかります。 つまり、高尾の自転車、野球部の部室、中川の上履きは、すべて緑川がやったものだと僕は思います。

[伏線③]なぜ校舎の鍵が開いているのか・修復された蛍光灯

これは完全に推測ですが、能登先生が絡んでいるんじゃないかと思います。 矢野がいじめられていると知っている彼女が、「夜休み」という特別な時間を味わわせてあげたいと思ったのではないでしょうか。 そう考えると、矢野と能登先生が非常に仲が良いことの説明にもなると思います。

[伏線④]なぜ警備員は誰もこないのか

これは、わかりません。どなたか教えてください。

[伏線⑤]なぜ安達は化け物になったのか

一番難しいところです。 僕の考えを述べます。まず、安達はとても優しくて繊細な人間なのだと思います。それゆえに、いじめに加担していること、自分のキャラクターを場の空気に合わせること、に対して、潜在的に大きなストレスを抱えたのではないかと思います。 そして、そのストレスのはけ口として「よるのばけもの」という存在が生まれたのではないでしょうか。 昼は裏の顔、夜は表の顔を使うようになった安達は、最後に、昼も表の顔でいることを選択しました。このことによって、生じていたストレスが消滅して、それと共に化け物の存在は、いなくなるのではないかというのが僕の意見です。

『よるのばけもの』はこんな人におすすめ!

サブカル
非日常的な世界観を味わいたい⋯!

緻密に設計された伏線を読み解きたい。
文学青年

パリピ
よるのばけものが何を象徴しているのか興味がある



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あとがき:よるのばけもの

『よるのばけもの』の読書感想文でした。とにかく作品の中に謎が多くて読み解くのに苦労しました。結局、わからない謎もあったので、もし仮説をお持ちの方がいたらコメント蘭で教えていただけますと嬉しいです。

モロケン
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