西加奈子

こうふく みどりの(西加奈子)_普通の女の子の普通の日常をみずみずしく描く

大阪のとある町。14歳の緑はまだ初恋を知らない女の子。しかし転校してきたコジマケンが気になる。緑の実家・辰巳家は、女性家庭。夫が失踪中のおばあちゃん。家庭のある男性を愛して緑を産んだお母さん。バツイチ(離婚予定)子持ちの藍ちゃん。藍ちゃんの娘の桃ちゃん。ペットの猫も犬もメスである。不思議な魅力のある辰巳家には、さまざまな事情を抱えた人たちが集まる。

うつくしい人/西加奈子_眩しすぎて目を背けたくなる光がある

主人公・蒔田百合は、純真さ故に苛められ引きこもりになった姉のようになるまいと、他人にどう思われるかを常に考えそつなく振る舞う生き方を選んだ。しかしある日、会社でのちょっとしたミスで人の前で泣かないと誓ったはずの涙が溢れ、会社を退職する。自分のアイデンティティを見失った百合は、茫然自失なまま、とある離島に一人旅に出ることに。旅先でも精神不安定な自分に嫌気がさしていた百合だが、ドイツ人の美しい青年・マティアスとホテルの冴えないバーテンダー・坂崎と出会い、徐々に自分の輪郭を取り戻していく。暗いトンネルから見えた一筋の光明を巧みな描写で表現した傑作。

『窓の魚』(西加奈子)_幻想に翻弄され「死神」の声は聞こえない

「カップル2組が温泉旅行に行きある事件が起きる」というよくある設定だが、登場人物4人が曲者。作品は4人それぞれを主観にして順番に進行する。彼らが抱える心の暗部がパズルのピースを合わせるように徐々に組み合わさっていく展開は秀逸。

■【書評】『さくら』(西加奈子)の崩壊した家族が再生へと向かう物語

 主人公・長谷川薫は、家出していた父親から家に帰るという手紙を受け取り、帰省します。 薫が帰省する長谷川家はかつて「幸せ」な家族でした。 物静かでやさしい父親、太陽のように陽気な母親、人気者の兄・一、超美形の妹・ミキ、3人の孫をこよなく愛するおばあちゃん、それから飼い犬の「サクラ」。「サクラ」という名前は、見つけてきた時に尻尾にピンクの花びらをつけていたから。 そんな無敵の家族だった6人と一匹が「ある出来事」によって、一転、崩壊し始めます。

★【書評】『i(アイ)』(西加奈子)を読むと世界に少し優しくなれる

ワイルド曽田アイ、この物語の主人公。シリアから養子として、裕福な、米国人と日本人の夫婦の元へやってきました。ある日、ニューヨークから、日本に住むことになります。中学・高校で、同級生と風貌の違うアイは、孤立していましたが、ミナと出会い友達になります。アイは、どうして、自分は恵まれているのか、どうして、悲しい出来事の当事者は、自分ではないのか、常に自問し、苦しみます。繊細な少女から強い女性へ成長しようともがくアイ。自身の存在の肯定をとことん問い詰めた名作です。

▲ 【書評】デビュー作『あおい』で西加奈子の原点に迫ろう

27歳スナック勤務のあたし(さっちゃん)は、3歳年下の学生であるカザマと同棲している。そして、ある日、あたしは、妊娠していることに気づくが、その思いを伝えることができず、悩み、スナックを辞め、長野のペンションで泊まり込みバイトをしようと思うが、初日で無理だと感じ、無謀にも、深夜に森の中を彷徨いつつ帰宅を試みる。案の定、どうしようもなくなったあたしは、漆黒の闇の中で、素敵な光景を目にするーー。

●【書評】『ふくわらい』(西加奈子)で描かれる感情の萌芽

幼い頃から病的に「ふくわらい」に執着している主人公、鳴木戸定。編集者。他人の顔のパーツを、取り外したりつけたりすることは、日常の楽しみ。彼女からは、あらゆる感情が欠如していました。ですが、プロレスラーの守口廃尊や盲目のハーフ武智次郎との出会いをきっかけに、彼女は大きく変わっていくことになります。

● [書評]面白おかしい『きりこについて』(西加奈子)は内面を鍛える大切さを教えてくれる

黒猫の「ラムセス二世」は、小学生の「きりこ」に拾われました。「きりこ」は両親の愛を全身に浴びながら育ったため、初恋の相手に”ブス”と言われるまで、自分の顔が”ブス”であることに気が付きませんでした。現実を知った「きりこ」は、部屋に引きこもり、ラムセス2世をはじめとする猫達とだけ関わる生活をおくっていましたが⋯⋯。

● [書評]狂おしい恋愛を描く『白いしるし』(西加奈子)の魅力に迫る

女32歳、独身。誰かにのめりこんで傷つくことを恐れ、恋を遠ざけていた夏目。間島の絵を一目見た瞬間、心は波立ち、持っていかれてしまう。走り出した恋に夢中の夏目と裏腹に、けして彼女だけのものにならない間島。触れるたび、募る想いに痛みは増して、夏目は笑えなくなった—。恋の終わりを知ることは、人を強くしてくれるだろうか?ひりつく記憶が身体を貫く、超全身恋愛小説。

■ 【書評】『舞台』(西加奈子)_誰もが皆、人生という舞台で演技をしている

太宰治『人間失格』を愛する29歳の葉太。初めての海外、ガイドブックを丸暗記してニューヨーク旅行に臨むが、初日の盗難で無一文になる。間抜けと哀れまれることに耐えられずあくまで平然と振る舞おうとしたことで、旅は1日4ドルの極限生活に。命がけで「自分」を獲得してゆく青年の格闘が胸を打つ傑作長編

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