『その街の今は』(柴崎友香/新潮文庫)の読書感想文です。「芸術選奨文部科学大臣新人賞」および「織田作之助賞大賞」のW受賞作品。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。
『その街の今は』のあらすじ
あらすじ
『その街の今は』の感想と考察(ややネタバレ)
歌ちゃんは大阪の過去に何を見るか⋯⋯?
歌ちゃんは、自分が住んでいる街・大阪の過去の姿をみることに、執着しています。
その一方で、
わたしは、シュガーキューブスで聞いたおっちゃんの話を、おっちゃんのしゃべりかたで反芻した。
あの話をしているとき、あのおっちゃんには、泳いだ川もバレエ学校も自分や友だちの家も鮮やかに見えていた。
だけど、すぐそばで聞いていてもそこは見えなかったし、実際にこの場所に来ても見えない。
わたしは、どうしてもそこが見たかった。
だけど、どうすればその場所を見ることができるのかわからなかった。
と述べているように、過去の姿を実際に”見る”ことの難しさを実感しています。
大阪の過去を見ることに歌ちゃんが、どうして惹かれるのか、本人も理由がわかりません。ただ、古い写真などを見ていると、無性にドキドキして、その姿を見たいと思ってしまう。上述したような、過去の大阪を”見る”ことが、非常に大きなテーマとなっているので、大阪の街並みに関する描写がとても多いです。
歌ちゃんの思考を探る楽しさ
「みなさんは、自分の住んでいる街の過去の姿を知りたいと思いますか?」
僕は、「あまり、興味がない」です。
だって、「知ってどうするの?」と思ってしまうからです。
それよりは、「未来に、どういう街になってほしいか」を考えるほうが、いいような気がします。
ですので、歌ちゃんには、あまり共感できなかったのですが、自分とは違う感性の持ち主だなとは思ったので、彼女の思考を読み解いていくことは、とても楽しかったです。
『その街の今は』はこんな人におすすめ
- 自分の住む街の過去に興味がある人
- ちょっとした空き時間に読む本を探している人
- 情緒あふれる作品の雰囲気を楽しみたい人
あとがき:その街の今は
『その街の今は』(柴崎友香/新潮文庫)の読書感想文でした。これといった、物語性はありませんでしたが、とてもノスタルジックで味わい深い作品だったと思います。これからも柴崎友香の作品に注目していきます。
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