純文学

●【書評】『その街の今は』(柴崎友香)_大阪の街と現代の若者

2017年7月2日

『その街の今は』(柴崎友香/新潮文庫)の読書感想文です。「芸術選奨文部科学大臣新人賞」および「織田作之助賞大賞」のW受賞作品。あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。

『その街の今は』のあらすじ

28歳の歌ちゃんは、勤めていた会社が倒産して、カフェでバイトをしている。ある日、合コンの帰り道に、年下の良太郎に出会う。二人はぎこちないながらも、次第に距離を縮め、大阪の古い写真を一緒に見たりするようになる。変化していく大阪の街と現代の若者を描く、心あたたまる物語。

『その街の今は』の感想と考察(ややネタバレ)

歌ちゃんは大阪の過去に何を見るか⋯⋯?

歌ちゃんは、自分が住んでいる街・大阪の過去の姿をみることに、執着しています。

その一方で、

 わたしは、シュガーキューブスで聞いたおっちゃんの話を、おっちゃんのしゃべりかたで反芻した。

 あの話をしているとき、あのおっちゃんには、泳いだ川もバレエ学校も自分や友だちの家も鮮やかに見えていた。

 だけど、すぐそばで聞いていてもそこは見えなかったし、実際にこの場所に来ても見えない。

 わたしは、どうしてもそこが見たかった。

 だけど、どうすればその場所を見ることができるのかわからなかった。

と述べているように、過去の姿を実際に”見る”ことの難しさを実感しています。

大阪の過去を見ることに歌ちゃんが、どうして惹かれるのか、本人も理由がわかりません。ただ、古い写真などを見ていると、無性にドキドキして、その姿を見たいと思ってしまう。上述したような、過去の大阪を”見る”ことが、非常に大きなテーマとなっているので、大阪の街並みに関する描写がとても多いです。

歌ちゃんの思考を探る楽しさ

みなさんは、自分の住んでいる街の過去の姿を知りたいと思いますか?

 僕は、「あまり、興味がない」です。

 だって、「知ってどうするの?」と思ってしまうからです。

それよりは、「未来に、どういう街になってほしいか」を考えるほうが、いいような気がします。

ですので、歌ちゃんには、あまり共感できなかったのですが、自分とは違う感性の持ち主だなとは思ったので、彼女の思考を読み解いていくことは、とても楽しかったです。

『その街の今は』はこんな人におすすめ

  • 自分の住む街の過去に興味がある人
  • ちょっとした空き時間に読む本を探している人
  • 情緒あふれる作品の雰囲気を楽しみたい人

あとがき:その街の今は

『その街の今は』(柴崎友香/新潮文庫)の読書感想文でした。これといった、物語性はありませんでしたが、とてもノスタルジックで味わい深い作品だったと思います。これからも柴崎友香の作品に注目していきます。

柴崎 友香(しばさき ともか)
1973年大阪府大阪市大正区生まれ。
大阪府立大学総合科学部国際文化コース人文地理学専攻卒業。

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