『タイムカプセル浪漫紀行』 (松山剛/メディアワークス文庫)の読書感想文です。読後感がとてもスッキリしている作品。 肋兵器さんによるイラストも素敵ですね。 あらすじと感想・考察(ややネタバレ)を書きます。
『タイムカプセル浪漫紀行』のあらすじ
『タイムカプセル浪漫紀行』の感想と考察(ややネタバレあり)
はじめは、明日香が幽霊か幻影じゃないかと彼女の存在が信じられない英一ですが、他の人からも見えることや物理的に接触することも可能なことから、明日香が蘇ったという結論に達します。そんな明日香が英一に言います。
「探しに行こうよ、タイムカプセル!」
旅の途中の旧友・恩師との再会
明日香の言うタイムカプセルとは、彼らが7歳の時にどこかで埋めて、大人になったら掘り出そうと約束していたものでした。 父の事件のこともあり、あまり地元に帰りたくない英一を明日香は連れ出します。 そして、秘密基地にしていた「研究所」から「たからのちず」と書かれた紙を発見します。
「たからのちず」には、大まかな場所しか記されていなかったため、なかなかタイムカプセルまでたどり着けません。 そんな時、かつての親友である「猿やん」と「熊ゴン」と再会します。 英一は、事件によって、街全体のイメージが悪くなったことに責任を感じていて、その地で働いている二人に気まずさを感じていました。 しかし、会ってみると、二人とも昔と同じようにフランクに接してくれ、タイムカプセル探しにも協力してもらえることになりました。
「たからのちず」に示された「×印」が、明日香の絵でいうところの「星」だと気づいた英一は、恩師である星野先生宅を訪れます。 彼は、父と共同で研究をしていたことから、多大な迷惑をかけたと想像していた英一は、ここでもやはり負い目を感じていましたが、いざ会ってみると、そんなことはつゆほども思っておらず、むしろ大歓迎されました。 これは、英一にとって予想外の反応であり、親友たちの時と同様、心に暖かいものを感じました。
星野先生から新たな紙片を受け取った英一と明日香は、そこに記されている「探検ルート」のゴール地である鍾乳洞を目指します。 しかし、これで、やっと、タイムカプセルを見つけることができると思った英一に、予想外の出来事が起こります。 これは、ぜひ作品を読んで知ってほしいと思います。
叶えたかった幼少期からの夢
明日香との再会は、英一にとって、大切なことを再認識させました。 それは、旧友や恩師との「絆」の深さであり、一度は諦めかけた幼少からの「夢」です。 そういった意味で、なぜ彼女が英一の前に姿を現したのかは、わかるような気がしますね。 ずっと父を尊敬して真摯に夢に向かって努力していた英一だからこそ、明日香は沈み込んでいる英一の姿をみたくなかったのでしょう。 励まそうと思ってくれたんだと思います。
僕も昔やらかしちゃって、それが気まずくて、顔を合わせることができないという友人がたくさんいます。 彼らに会うことができないのは、自責の念があるからですが、結局、勇気がでないからなんだと思います。 この作品を読んでいて、自分のほうは、気まずく思っていても、相手のほうは、必ずしも、そう感じてはいないこともあるんだなと、強く思いました。 むしろ、相手がずっと責めていると感じることは、彼らの度量に対して敬意をはらっていない、過小評価しているようにも思えます。 ちょっと勇気を出して、自分から連絡をとってみようかなと思いました。
夢を追いかけることの大切さも、この話を読んでいて、感銘を受けました。 僕の幼少からの夢というと、天文学者、獣医、公認会計士などなど…いっぱいありましたが、どれも今からやるには遅過ぎますし、やろうとも思えません。 今の僕の夢は、好きなことで生活することと世界一周です。 これらを叶えるために、日々努力していきたいと思っています。 この作品は、そんな僕の背中を優しく後押ししてくれるものでした。 もっと、頑張ろうと思います!
『タイムカプセル浪漫紀行』はこんな人におすすめ
- 考古学に興味がある人
- 絆や夢について考えてみたい人
- 不思議な縁を大切にする人
あとがき:タイムカプセル浪漫紀行
『タイムカプセル浪漫紀行』 (松山剛/メディアワークス文庫)の読書感想文でした。テーマがはっきりしている本は好きです。 今回は「絆」や「夢」がテーマでした。 それを表現するための構成も良かったと思うので評価は高いです。未読の方はぜひ!