『インストール』(綿矢りさ)の読書感想文です。『インストール』は、芥川賞作家・綿矢りさのデビュー作で、第38回「文藝賞」を受賞しています。綿矢りさの言語に関するセンスや緻密な作品構成は相変わらず素晴らしいです。芥川賞受賞作の『蹴りたい背中』から綿矢りさを読む人が多いと思うので、綿矢りさのルーツを辿る意味でも本作は重要な役目を持ちます。
※ほぼネタバレ無し
『インストール』(綿矢りさ)のあらすじ
『インストール』(綿矢りさ)の書評/感想
この作品のテーマは「成長」です。
朝子はかずよしと出会い、仕事をすることによって、再び高校生活を始めようと前向きになれました。
逆もまたしかり、かずよしも義理の母である青木さんに対して感じていた違和感・遠慮などを捨てて、自分の母親として、彼女をみることができるようになる予兆が記されています。
この「成長」で重要なことは、他者との出会いです。
これは僕の意見ですが、人間は他者との出会いがない限り、成長することができません。
これは、僕が学生時代に強く意識していたことであり、実践していたことです。
理由は、正論と正解は違うからです。
つまり、成否は他者依存なのです。
そのことを知らなかった僕は一時期かなり独りよがりで、くすぶっていました。
しかし、このことに気づいてからは、あらゆることに積極的になり、新しい「出会い」を求めて奔走しました。
朝子とかずよしのゴミ捨て場での「出会い」は全くの偶然ですが、前提として、朝子が家具を捨てようとしなければ、かずよしが朝子に声をかけることをしなければ、その出会いはそもそも起こり得なかったことなのです。
つまり、双方の能動的な態度によって、この「出会い」が成立したとも言えます。
こういう、小さなアクションでいいから、何かに対して、能動的な態度をとっていく、そのことが作者が最も伝えたかったことなのではないでしょうか。
評価:『インストール』はこんな人におすすめ!
評価



あとがき:『インストール』(綿矢りさ)
綿矢りささんのデビュー作である『インストール』について、感想を書きました。
この本が出版した当時、綿矢りささんは17歳だったんですよね⋯⋯。
それから、芥川賞をとった時のことは鮮明に覚えているのですが、14年前だとは⋯⋯。
『蹴りたい背中』で綿矢りささんを好きになった方も、読んだことないよって方も、気軽にさくっと読める作品なので、おすすめです!ぜひぜひチェックしてみてください!